表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

婚約破棄された令嬢は気ままに生きている

ちょっと息抜き代わりに書いてみた、あっさり風味のざまぁもの。

少々緩いですが、どうぞ。

「おじさーん!この串焼き3本くださーい!」

「あいよ!銅貨9枚な!」



 ある街にて、とある少女の言葉にその屋台の店主は代金を受け取り、少女に焼き立ての串焼きを渡した。


「あっちっちだから、気を付けるんだぞ!」

「うん、ありがとうね!」


 優しい気づかいの言葉を貰い、少女は笑顔でそう答えた。








 はふはふと息を吐いて冷ましつつ、串焼きをほおばる少女。


 元気いっぱいで、身軽な服装をしている彼女は冒険者として働き、この街の宿屋に身を寄せていた。


 今日は依頼を受けて、そこそこ儲けが出たので、たまにはちょっとした贅沢にと思い、この街でも人気のある串焼き屋で買い食いをしたのである。



「あら、ミジョンちゃん。今日は何か美味しそうなものを食べているわね」

「ええ!あの串焼き屋のものよ!」

「良いわねぇ、アレっておいしいものね」

「うん!」


 宿に戻り、そこに務めている女将さんに話しかけられ、気軽におしゃべり楽しむ少女。



 彼女の名はミジョンと言うのだが‥‥‥‥実は、つい1年前までは冒険者とかをやっておらず、ある国の公爵令嬢だったとは、その姿から想像することができる者はいなかった。




「ふぅ、おいしかったわね。今日はこれで良いし、部屋に戻って武器の手入れでもしましょ」


 少女…‥‥ミジョンはそう言いながら宿の自室に入り、腰に差していたナイフや。その他持っていた道具の手入れをし始める。


 冒険者といて活動していると、日常的に自分の使っている物の手入れが必須であり、欠かさないようにしているのだ。


 そして今日も己の愛武器を磨いている…‥‥その時であった。







「おい!!ミジョン・フォン・ルゼーナ令嬢はここにいないのか!」

「ん?」


 なにやら宿の入り口の方で、前までミジョンが持って居たフルネームを叫ぶ者がでたようだった。


「あらあら、あんたたちは何だい?」


 見に行くつもりはないが、女将さんの声が聞こえてきたのでミジョンは聞き耳を立てた。



「わたしたちは彼女の捜索を受けもたされた、バカナーン王国の者だ!彼女を探しに探し、ここにたどり着いたが、ここにミジョンという者はいないのか!」

「はい?名前だけならいることはいるけれども…‥‥あの子に何の用だい?その喋り方からして、ろくでもないような気がするんだけどねぇ?」


 聞き耳を立てていると、女将の声が威圧感を増した。


「わ、わたしたちは特にろくでもない者ではない!!彼女をわが国に連れ戻しに来ただけだ!!」



 若干ひるんだ声を出しつつも、声の主は堂々とそう言い切った。


 と、ここまで聞いて、ミジョンはふとその声をどこかで聞いたことを思い出した。


「‥‥あれ?あの声って確か‥‥‥‥」



―――――――――――

 1年前、バカナーン王国にて、ミジョンはある卒業式会場にいた。


 その時はまだルゼーナ公爵令嬢として参加しており、国立で建てられたマゾッド学園の主席として卒業できたのである。


 


 そして、それから数カ月後には、当時いた婚約者との結婚式を控えていたのだが…‥‥その場でその婚約者が馬鹿をやらかした。



「ミジョン・フォン・ルゼーナ公爵令嬢!!貴様のような悪逆非道の史上最低最悪の下種女と婚約を破棄し、このわたしは愛しき女神でもあるレバーズ・フォン・アッチ男爵令嬢との婚約を宣言する!!」


 そう堂々と述べたのは、彼女の婚約者であったはずの、王国の第1王子であったサクレ・フォン・バカナーンであった。



 見てみれば、彼の隣には件の男爵令嬢と思わしきゆるふわと言ってい良いような容姿をした少女と、その周囲には将来的に王子の臣下となる取りまきたちが勢揃いしており、全員がミジョンに厳しい目を向けていた。



 そして、その場で告げられたことには、どうもミジョンの身に覚えがない悪行であり、周囲を見て見れば王子とその愉快な馬鹿仲間たち以外は信じていない表情をしていた。


 男爵令嬢を見れば、ニヤニヤとゲスい笑みを浮かべており、明らかに冤罪と分かるようなものであったのだが‥‥‥反論しようとして、ミジョンはふとある事を思いついて辞めた。



「…‥‥では、婚約解消でよろしいと?」

「そうだ!!見るのも汚らわしいし、死刑しても処理が面倒だから国外追放を言い渡すから、この場から出ていけ!!」


 ミジョンの問いかけに対して、堂々と述べたサクレ。


 その言葉を聞いて、ミジョンはさっさとその場を後にしつつ、言ったん公爵家に戻り、当主の父に話した。



「…‥‥というわけで、婚約破棄されましたわ」

「はぁぁぁぁっ!?何を考えているんだあの腐れ坊主は!!よくも我輩の可愛らしい愛しき究極の美を持ったマイエンジェルにそんな馬鹿な事をやらかしているんだ!!」


 なんというか、ミジョンを溺愛しているらしい公爵の当主は激怒し、隣で話を聞いていた母や、侍女たちが全員こめかみに血管が浮き出たり、圧倒的な威圧感を解き放った。



「今すぐにあの馬鹿を抹殺してやる!!」

「待ってくださいお父様、ここは少々いい案があるのですわ」


 剣を持ち、瞬時に殴り込みに向かおうとした父へ向かって、ミジョンはある案を話した。




 すると、その案を聞き父親はにっこりと笑った。


「ああ、それはそれは、確かに素晴らしい計画だな‥‥‥‥とは言え、ミジョン、お前を一人にするようなことになるし、そんな生活をさせたくないのだが…‥‥」

「あなた、ミジョンももう立派な一人の少女よ。せっかくだから可愛い子には旅をさせろと言う言葉があるようだし、しばらくはやりたいことをさせてあげなさい」

「ううむ……よし、分かった」



 母の言葉に、父はミジョンに許可を出した。


 公爵家を出て、その案から練りに練られた計画が成熟するその時まで、冒険者として世間の荒波にもまれてみるという事を。


 

―――――――――――


…‥‥そして現在、ミジョン自身にとって思いのほか冒険者生活を満喫しているところで、どうやら捜索の手が来たようであった。



「…‥‥あの声って確か、あのサクレの声よね。ああ、どうやらお父様たちの目論見が成功したようですわ」


 声の主が誰なのか理解し、ニヤリと笑みを浮かべるミジョン。



 と、どうやら女将と話し合っていたらしい者たちの声が荒くなってきたことに気が付いた。



「いい加減にしろ!!いるのであれば、彼女を差し出せ!!そうすればやっと国に帰ることができるはずなんだ!!」

「はぁ‥‥‥何度言ったら分かるのかね?そんな様子じゃ、どう考えてもあの子にとってろくでもないことしかやらかさないとしか思えないじゃないか」

「くそう!!いい加減にしろこのくそババァ!!」


「…‥‥あ」



 その言葉は、ここの女将に取って禁句である。


 ミジョンはその言葉を聞き、次に何が起きるのか悟った。




「誰がババァだいこの馬鹿者どもめがぁぁぁぁ!!」


 宿中、いや、街中がびりびりと震えるような怒声が響き渡る。



「いっぺんで直してこい、このろくでなしどもがぁぁぁぁ!!」


ばっぎぃぃぃぃぃぃぃぃ!!

「「「「ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」


 何かが折れるというか、砕け散るような音が聞こえ、飛んでいったような音へと変わって聞こえなくなった。



…‥‥この宿の女将、実は元冒険者。


 今はこの宿の料理人となっている旦那との結婚で引退しているのだが、冒険者時代には「鮮血の熊狩り」という二つ名が付くほどのすごい人だったらしい。


 そして、そんな彼女にとって年に関するような言葉はNGらしく、ひとたびキレてしまえば、その相手は再起不能になると言われるほどの重傷を負わせてしまうようなのであった。


 やり過ぎなのではと言いたくなるのだが、相手が悪い場合の方が多いので特に問題はないらしい。




「‥‥‥まぁ、どうでもいいわね」


 声からしてあの馬鹿王子たちだと分かったが、どうも見事にミジョンの思惑通りに事は進んでいたらしい。





…‥‥それからしばらくして、宿屋にミジョンを迎える者たちが来て、宿を引き払って彼女は家に帰った。


 そして、冒険者を引退し、再び公爵令嬢として返り咲いたのだが…‥‥思った以上に冒険者生活が楽しかったので、時たま変装して再び活動をしていたそうな。


 その後、ある時ピンチになった時にその場を助けてくれた冒険者に一目惚れし、数年後には結婚しようとしたが、父親の手によってありとあらゆる困難が発生して、苦労したのは言うまでもない…‥‥。






―――――――――――――――――――――――――――

・ミジョン・フォン・ルゼーナ

ルゼーナ公爵家の令嬢であり、父親にでき愛されていたが、本人としては少々うっとおしかった。

元々あのサクレ王子との婚約がなされていたのは、あの王子は余りにも出来が悪すぎたために、卒業後に公爵家にせめて軟禁状態に近い形で引き取ってもらうために国王が死ぬ覚悟で土下座して頼み込んだ者であった。

ゆえに、婚約破棄後に国王は完全に王子を見捨てた。次期国王はサクレの弟である。



・公爵家の父

ルゼーナ公爵であり、愛妻家・愛娘家。

愛情深く、あの馬鹿王子には娘を絶対に出したくなかったが、国王が必死になって頼みこんできたので、こっそり軟禁ではなくて完全密室での監禁を目論んでいた。

しかしながら、ミジョンをありもしない罪で陥れようとした王子に激怒し、血祭りにあげようとしたが、ミジョンの提案に乗ることにしたので、自らの手は汚れなった。

どのような事をしたのかと言えば、王子の悪行やその他もろもろの調査報告を国王に挙げ、ここまで最悪なものがいると領地返還して他国へ行くと脅しただけである。



・国王

出番がほとんどなかった。息子が3人いたのだが、第1王子であったサクレが余りにも出来が悪すぎて、それでも自分の息子であることには変わりないので、何とかまともに過ごせるように公爵家に頼み込んでいた。

なお、実はルゼーナ公爵家の治める地域は色々と物騒であり、彼らが治めていなければ不味いことになるので、領地返還されて他国へ渡られるのは国としても非常に不味かったので、ここで完全に自身の息子であるサクレと決別しようとしたが、最後の親としての温情で、ミジョンの捜索及び連れもどしという形でサクレを追い出した。



・サクレ・フォン・バカナーン

いわゆるテンプレな最強の屑王子。

自業自得というか、あまりにもひどすぎるとしか言いようがない。

国王によってミジョンを発見して連れ戻すまで国外追放を言い渡されたが、そのうち彼に従ってた愉快な仲間たちと盗賊団を立ち上げる。

が、数年後に冒険者活動をしていたミジョンに捕縛されるが、遠距離からの攻撃によって気絶したせいでその姿を目視できず、流石に馬鹿すぎることから死刑にしても意味がなさそうなので、永久労働の刑にされ、しかも無駄に健康だったので老衰するまでずっとそのままであった。



・レバーズ・フォン・アッチ男爵令嬢と愉快な仲間たち

王子と共に国外追放され、盗賊団結成。

案外ノリノリであったが、全員捕縛された。

王子たちと共に強制労働となるはずであったが、男爵令嬢は学園在籍時にも様々な男たちに言い寄って陥落していたことが発覚したので、せっかくだからその男を堕とす腕を買われ、ハニートラップ要因として雇われた。

公爵家の当主としては、今回の婚約破棄の原因でもある相手だが、ミジョンをあの馬鹿に継がせなくても良くなった原因でもあるので、複雑だが特に沙汰を下すことはなかった。

ついでに何やら色々と怪しげな事を話しており、鉄の猪とか、燃える水などの言葉が気になった事から協力を要請し、このあと王国は産業革命が起こり、その功績者として一役買うことになった。

後に、ミジョンと再び再開した時はきちんと心から謝罪したことから根っからの腐った悪人でもないようなので、和解して親友になったそうである。

…‥‥ただし、腐った文化の方はお持ちだったらしく、ミジョンもはまって問題となったのは、また別のお話。


…‥‥自身の書いている他の小説に出そうとしたが、没となったネタだったりする。

何処かで出したいなぁ…‥‥

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] パーティメンバー(という名の護衛)つけようよ [気になる点] >なんというか、ミジョンを溺愛しているらしい公爵の当主は激怒し、隣で話を聞いていた母や、侍女たちが全員こめかみに【欠陥】が浮き…
[一言] 最後が腐女子もとい貴腐人達の話になってる(笑)
[一言] 男爵令嬢は転生者だな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ