プロローグ
初の長編です。更新かなり遅いです。悪しからず。
その日、私は、会社から帰宅するとゲーム機を起動する。本当はもう少し仕事が残っていたのだが今日だけはと無理を言って早引きさせてもらった。
【Magical Knights on-line】通称MKOと呼ばれてるこのゲームは未だ世間からの風当たりは強いが多くのゲーマーの支持を集めている所謂VRMMOといわれるゲームのひとつである。
シナリオとしては、「人種と魔族の戦争が繰り返し繰り広げられている世界。人種は技術と魔法で対抗し、魔族側は圧倒的な物量で人種を押しつぶさんとする。プレイヤーは「迷うモノ」として世界に降り立ち、この世界規模の戦争に終止符を打て」というありふれた文句のゲームだ。
【Magical Knight (魔法騎士団)】を謳うこのゲームは他のVRゲームともまた違う方向性の自由度の高さで人気となったゲームだ。
理由は主に三つ。
一つは種族の豊富さ。人間やエルフ、ドワーフ、魔人などの基本的な種族やデーモンやサキュバス等の悪魔族、果てはゴブリンやオーク、ドラゴン等の魔物まで自由に選択できる。もちろん人型から離れるほど動かす際の癖がきつくなってくる。
二つ目は職業制の廃止。このゲームは所謂「剣士」や「魔導士」という職業の縛りがない。全ては種族の初期ステータスとスキルによる補正によって最終ステータスが決まる。だから物理防御の高い魔導士型や防御を捨てて、高機動で敵を粉砕する大剣使いなどのスキル構成が可能だった。
三つ目は人模兵器「魔装甲冑」の存在だ。原則人種側しか使用できないせいげんがあるが、武装を自由に変更可能。しかも搭乗者のステータスを反映、増幅するという世界観的にそんなのあっていいのかという代物である。もちろんこちらもかなりの自由度の高さで、巨大な騎士甲冑然としたものもあれば、アニメで見るようなスタイリッシュなものまで相当なバリエーションの豊富さだった。
これだけの個性をガン積みしたゲームは、普通人気の出ないものだがこのゲームは他に例を見ない驚異的な大ヒットとなっている。
キャラメイクの高い自由度と、ロボゲームマニアだけでなく初心者でも操作のしやすく火力も出せる「魔装甲冑」の能力、そしてその「魔装甲冑」もスキル構成や条件次第では素のアバター状態でも撃破可能なゲームバランスの絶妙さのためであろう。
しかし、世の中は諸行無常、衰えないものなどこの世にあるはずもなく本日サービス終了となる。実に15年続いたタイトルが終了するにあたって運営が粋な贈り物をしてくれた。このゲームにおいて最初で最後の人種と魔族が共闘する一大レイドイベント「星墜龍襲来」を実装したのだ。
サーバー開設時からプレイしてきた私にとってこのイベントだけは逃すことは出来ない。
時計を見ると16:25だった。イベント開始は18:00だし気の早い人はもうログインしているだろう。
ログインすると森の中でリポップした。森の中なのは、私が選択した種族によるものなのだが、それはさておき、早く魔導甲冑に乗ってイベントエリアに行かなければ。