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黄昏にて  作者: にわせたか
第1章 再出発の町
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39 問われる歴史(1)


人間は誰しも心の奥底で思っていた。自分達だけの、自分だけの幸せを。


その為なら、なにをしてもいい。


地球は全て、自分達のものなのだから。


いつでも過去の歴史を顧みない。愚かにも同じことを繰り返してしまう性質。


後も先もない、自分達の繁栄さえ望めれば、それでいいのだから。



◇ ◇ ◇


 シュウとアルバの邂逅から数か月後


 3月、シュウ達は卒業を控え、特別授業というものに参加することになっていた。講師はこの町の町長であるテオである。


 『卒業前には通例で、学校で私の講義があるんだ。その時はよろしくね』


シュウはいつかの夕食でのテオとの会話をなんとなく思い出し、あの時の話はこれだったのかと思い起こしていた。

 毎年の特別授業はテオがやることになっており、1日彼の講習を受けるだけというものだった。この授業が終えると、晴れて卒業を迎え、大人の仲間入りとなるのがこの町のシステムであった。

シュウ達の年代は多く、一度に全員を受講はできない為、何日かに分かれている。そして、今日がシュウ達のクラスの受講日になっていた。


シュウがクラスルームに入ると既にテオは教壇に鎮座していた。そのシュウ達が見慣れないスーツ姿で教鞭につく様子は、普段の職務とは違うのに、逆にその場に似合う様であった。


「やあ、シュウが最後だね。君が席に座ったら始めようか。」


その言葉にシュウは周囲を見渡し自分が最後だと気づき、慌てて席に座った。


こんな時はオルフェがいつも遅れてくるのがパターンじゃないのか・・・


シュウの考えとは裏腹に、ちゃっかりオルフェは既に席に座って余裕そうだった。


シュウが席に座ると、机の上には見慣れない本が置いてあった。表紙は黒く、かなりの厚みがあった。見渡すと、みんなに配られていたようだ。


「よし、じゃあ始めようか。これから私の授業が終わると、君たちは4月より晴れて大人たちの仲間入りだ。・・・昨今は亜人達の被害も今までにないくらい大きくなり、我々も人手がなくて困っている。・・・君たちがここから巣立ち、この町の力になってくれることを心から願っている」


シュウは一瞬、心臓が締め付けられた。以前ウェアウルフのアルバからの一方的な敗北があったことにより恐怖感が植え付けられていた。それから何度か亜人と戦うこともあったが、自分の剣に明らかに勢いがなく、鈍くなっていることを実戦でも感じていた。



「・・・みんなは気づいているだろうが今日は教科書としてみんなの手元には通称《黒本》を配っている。端的に言うと、今日の講習はこの黒本を私が要点を絞って説明するだけのものです。全てを読んでいると時間がいくらあっても足りないからね。」


黒本はかなり読み漁った跡がある。多分、この本も自分達がいままで授業に使っていた教科書同様、繰り返し使われているのだろう。


「この本に書かれていることは、歴史である。―――以前、人類が西暦と呼んでいた年代から我々が生きている今、斜陽歴までの歴史を今日はみんなに学んでもらおうと思う。この本は西暦から斜陽歴、そして今に至るまで様々な人が編纂を行い付け足していったものです。・・・もちろん、私もこの本の編纂には関わって今の私がレナトスの町で起きたことも付け加えられています。  


 ・・・君たちの中にも疑問に思っていた者もいるだろうが、意図的に今まで君たち子供達には歴史に関しては伏せていた。 ・・・それは、今回のような特別な機会を設けて、しっかりと聞いてほしいといったことと、今日話すこの内容を心に受け止めてくれる年代に達していると我々が判断した為です。実際にはこの学校の卒業は4月ですが、本講義の内容を受けて、これからの人生を考えていってほしいと思います。」


 それで図書館での本の貸し出し制限や、周り大人たちは今までそう言った話になると消極的だったのか・・・サニーとシュウはいままでの事柄を思い出していた。


 「また、この本には今まで分かっていないものも多いが、私たちが今置かれている環境についても書かれている。亜人や幻獣、我々を取り巻く不可思議な現象、・・・・・・このクラスにも珍しく2人、一般人ではありえない力を意識的に使える子がいるね」


身体的な強さを持つシュウ、異常とも呼べる五感を持つオルフェ。

二人はピクッと反応した。

 テオの目線は変わらず全体を見ていたがその言葉は明らかにこの二人に向けられたものだった。


「・・・さて、前置きが長くなってしまったが、講義を始めます。みんな居眠りなどせず、しっかりときいてくれたまえ」


くっきりとした耳によく通る声で、テオ町長は黒本を開き、講義を始めた。


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