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黄昏にて  作者: にわせたか
第1章 再出発の町
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35 転機(3)


 雨が止めどなく降っている。


 黄金色のリンゴを手に取りながら、なぜ殺されなかったか考えたが分からなかった。


 一旦思考を片隅に置き、シュウはリンゴを集め始めた。

 革袋を持ってきたので、地面に落ちていたリンゴを袋一杯まで詰め込めこんだ。

フラムに乗り込み、急いでこの場を後にした。あまり時間を掛けると警備隊に怪しまれると思ったからだ。


 走りながら、憔悴したシュウの心にフラムは何も語り掛けない。ただ、無心に来た道を帰っていった。


 警備隊には、ダメだと思ったのだが何も報告をしなかった。その日はあまり人と話さず、家に帰宅した。


 翌朝、シュウはサニーに起こされるだいぶ前に起き、コスターラ家を訪れた。


 まだ仕事を休んでいるが、聞いていた風邪が嘘のように元気になっていたオーランドとその妻のロマと、どうしたのこんな早くに?と驚いた様子のサニーの出迎えがあった。

 

 シュウが持ってきた袋一杯に入ったリンゴをサニーは更に驚いた。

「ごめんね、この間の約束、本当にやってくれたんだ。ただ、・・・見ての通り、完全じゃないけど、おじいちゃんあれから自力で復活しちゃって。」

 サニーは、気まずいように答えた。

 「・・・いや、いいよ。いつもオーランドさんには世話になってるしさ。見舞いの品を考えなくてすんだと思えばいいさ」

 「???」

 少し元気がなさそうない言葉にサニーは首を傾けた。


せっかくなのでシュウ達は手土産に持ってきた黄金色のリンゴを食べた。その味は、とても上品な甘さで、食感も食べやすく美味なものであった。みんな、次から次へ手が伸びていた。


 リンゴを口に入れながらシュウは昨日のことを思い出していた。その元気がなさそうな様子をサニーが大丈夫?と心配をする。

ああ、なんでもないよと、生返事を返した。


しばらく、なんでもない雑談が続いた。シュウは昔から、父親が留守の時はこの家族の世話になることが多く、今のような一緒に団らんを過ごすことが多かった。


 段々と、懐かしい安心感に包まれていく。


 シュウは視線を上げると自分を心配するサニー、元気そうなオーランドとロマがいる。


 ああ、本当に、ここにこられてよかった。


 安心したように、シュウの目頭が熱くなった。


◇ ◇ ◇

 数日前


 森の中を2人のウェアウルフが走っている。


 1人は左手に大きな切り傷を負った意識がないウェアウルフ―――クロアを背負っている。


 「・・・ん」


 クロアの意識が戻り、二人のウェアウルフがそれに気が付く。


 「クロア様! お気づきになられましたか。傷が深いです。そのまま動かずに俺達に任せてください。」

 

 「もうすぐ、俺達の住処です。もう安心してください」


 なにがあった。・・・ああ、おれはアイツにやられて・・・くそ、油断した。


 左腕は折れた上、裂傷からの出血が激しかった。クロアはそれを霞んだ目で見ながら歯痒んだ。


 3人はかなり深い森を進んでいた。ある地点までいくと3人には目視できないが、この森全体を覆う、ゆらゆらと揺れる透明な衣の中通って行った。3人はなにかを通ったという意識はなかったが、これ以上中に進むと、絶対に他の人間に見つからないという確信があった。


ゆらゆらと揺れる衣の外から見た内側は、それまで地面についていた足跡や血痕を消していた。


―――薄緑のハーミット・ヴェイル


それは、ウェアウルフの集団が無意識に作り出した不可侵の障壁であった。





 


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