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黄昏にて  作者: にわせたか
第1章 再出発の町
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33 転機(1)



夜も更けたレナトスの町、夜の明かりは貴重な中、町議館の中にある一室は時間を問わず明かりが灯っている。町長であるテオの執務室である。


 テオはろうそくのわずかな明かりの中、町政に関わる書類に目を通していた。趣味は仕事だと言われたら、この男なら誰しもが納得するだろう。


 暗がりの中、執務室の扉が開いた。ゆらりと3人の御庭番が入ってきた。


 「・・・失礼します。報告です。」

 御庭番は膝をつき、全く目を合わせない町長に向かって喋り始めた。

 「どうぞ」


 「昨日、ウェアウルフと思われる数体と、テオ様もご存じのあのシュウと交戦がありました。ウェアウルフの言動から、その内の1匹はクロアと呼ばれ、集団の中でも上位と思わしき個体であり、その個体に彼は深手を負わせたのこと。その後、報告を受け、我々が追跡を行いました。」


ぴくっと眉を顰め、興味があったのか、テオは書類から目を離し、御庭番のほうに顔を覗かせる。


 「そして?」


 「はい、多量の出血跡がありましたので、それを辿ったのですが、・・・・・・」


 御庭番は口を一度紡ぎ、適切な言葉を考える。


 「その後、追跡していたのですが、ある所で突然、血痕が途絶えました。・・・それから足跡や、周囲の痕跡等も探したのですが、全く見つからずそこで追跡は不可能と判断しました。」


 「ふむ。なるほどなるほど。これまで何度も、やつらの住処を発見しようとチャンスがあれば追跡をしていますが、今回もダメ、だったということですか?アーチさん」


 アーチと呼ばれた御庭番は深く頭を下げて返事をした。


 「申し訳ありません。今回もテオ様のご期待には添えられませんでした。今回、私を含め、計3人での追跡を行ったのですが、以前の追跡と同様、やつらの追跡経路を恥ずかしながら誰も全く覚えておりません。今回は追跡しながら経路を紙に残していたのですが、それも消えております。」


 テオは顎に手を添えながら考えた


 「分かりました、アーチさん。こう何度も不可思議な現象で追跡が失敗する・・・ということはなにかあるのでしょう。今回はまあ、シュウ君の活躍と、上位の者が分かりその者に深手を負わせたことを祝いましょう。ありがとう、アーチさん、また報告を待っていますね」


 軽く会釈をした後、御庭番は部屋から退出した。テオは暫く考え込むと、

「先輩ならこういう時、どうするでしょうね」


と呟き、元の書類仕事に戻った。


◇ ◇ ◇



昔、ある日



シュウは家の玄関でカイを送る。


少し出かけてくる。


なんてことはない、いつも通りの会話だった。その言葉の積み重ねがあり、本当にそうだったことで、愛想も確信もないその言葉は逆に絶対の安心の言葉になっていた。


そう、この日までは・・・




◇ ◇ ◇



 それはサニーの祖父であるオーランドの体調が悪い。ということから始まった。


 シュウは学校でサニーに相談をされた。シュウもオーランドが時々いやな咳をしているのを見ていたので、心配になった。


 「お医者さんの話では今回はただの風邪っていう見立てで、安静にして栄養があるものを取ってくださいとしか言われなかったの。おじいちゃんももうそれ相応の歳だけど寝るとき以外に家で寝込んでいる姿なんてこれまで見たことなかったのよ。」


 「・・・分かるよ・・・オーランドさん、ほとんど活発に動いてるってイメージだもんな」


 「安静にしとくのが一番っていうは分かってるんだけど、なにかできないかなって。シュウ」


 うーん、とシュウは悩んだ。シュウ自身も、生まれてきて風邪一つ引かない健康優良児だったからである。


 「あとは、えーっと。栄養があるもの・・・とかかぁ?」


 シュウは悩みに悩んで、答えにならない言葉を振り絞る。


 その言葉を聞いて、サニーはぱっと思いついたようにしゃべる。


 「そうよ、それよ! ・・・栄養がある噂のもの、あったわ! しかも、シュウじゃないと取ってこれないもの!」


 そうして、サニーのお願いをシュウは聞くのであった。



◇ ◇ ◇


 シュウは学校が休日の日を狙って早朝、フラムと共に北壁の外までやってきた。

 

 本来なら一般人は門から外に出るためには許可が必要で、それを犯すと、かなり重い罰が待っていた。

しかし、警備隊についてそこの許可は不問であった。そこで警備隊“見習い”のシュウは場所によればルールの曖昧さを突いて、なあなあで通してくれる場所があった。


・・・ばれたらやばいよな、と内心思いながら、シュウは北壁の外を壁沿いに西に向かっていた。


 

 「噂によると、北壁の外の西方面に今は廃れてしまった果樹園があるらしいの。そこに昔、大きなリンゴの木があって、そこには黄金のリンゴがなっていたらしいわ。それを食べた人は無病息災、意気軒高が約束されていたらしいわ。

・・・私は壁の外にはなかなか出れない、けどシュウならなんとかなるでしょ?お願い。噂だけど、おじいちゃんに少しでも元気になってほしいの。」


サニーの話を思い出しながら、シュウは自分の教えられた知識と照合する。

シュウは確かに、以前ウェイン先輩に西の方の廃れた果樹園の話は聞いていた。

 案外すんなり、その果樹園は見つかった。しかし、果樹園とは名ばかりで、雑草等が生い茂る、辛うじて人の手が加えられたような跡が残る拓けた土地だった。


 それでも、そこにあった一際大きな木にはシュウもすぐに気が付いた。

 もしかしてあの木がそうか?


 フラムから降りてシュウは遠目からでも分かる、高さは有に30mは超え、幹の太さもかなりのその木に向かった。


 ◇ ◇ ◇


 その木は間違いなくリンゴの木だった。しかも噂通り、黄金の実をつけている。


 しかし、実が付いている枝までかなり遠く、届かない。シュウは天津風を具現化し、なんとか届かせようとしていた。その時だった。木の上部からシュウに向けて声が聞こえてきた。


 「なんだぁ、珍しいな・・・客か?」


 声が聞こえた瞬間、木の上から大きな巨体が落ちてきた。地面に落ちた衝撃で地面が震え、黄金のリンゴが何個か落ちてきた。


 シュウはその巨体をなんとか躱した。そして天津風を構えた。


 落ちてきた巨体はゆうに2mを超え、容姿は中高年、少し腹が出ていたが、全身がかなりの筋肉が発達している。そして胴部には短い尻尾、頭部には耳が生えている。


 ・・・間違いない、ウェアウルフだ。





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