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黄昏にて  作者: にわせたか
第1章 再出発の町
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30 エクローグ (1)

 オタリアの襲来から数週間が経過した。そのころになるとシュウの北壁警備の謹慎も明けていた。


 ある日、シュウはゴーリキ隊長から呼び出され、手伝いを依頼された。依頼日はちょうど学校の授業も休みで、早朝から北壁大門集合と言い渡された。手伝いの内容は当日依頼人から聞いてくれと言われ、若干シュウは不安になっていた。

 

北壁大門は、北壁で一番大きい通用門で、人の出入りが激しい、道も整備されており、主にここレナトスから北にあるアスンシオンへの主経路になっていた。


 ◇ ◇ ◇


 依頼の日 早朝集合ということで、シュウは寝坊しそうになった。だが、事前にサニーに根回ししていたので、やれやれとシュウを起こしにきてくれた。


 シュウは一通り身支度を揃え外に出るとまだ夜は明けていない。まだ寝起きでぼんやりとした意識だったがひんやりとした空気を吸うと気持ちよく感じていた。


 フラムがいたのでシュウはフラムに乗って北壁へと向かった。


 北壁に近づくにつれ、石畳の道を移動するシュウの視界に白いもこもことした物体がうごめいてるのを発見した。


 シュウはそれを近づくまでもなく、無数の羊であることを認識した。


 何匹いるんだ。


 ほとんど道を塞いでおり、その列は永遠に北へと続いていた。その群れの近くまでくると、まじかよ、と心で呟きながらも歩みを進めた。羊が賢いのか、フラムが賢いのか分からないが、若干の隙間をぬって、フラムは羊達の間をぬるぬるとすり抜けながらゆっくり歩いて行った。シュウは初めて聞いたであろう、辺り一面からの一斉の鳴き声には流石に面を食らっていた。


 ◇ ◇ ◇


 北壁に到着するころにはすっかり夜が明けていた。やはり、そこでも無数の羊達で溢れていた。シュウはフラムから降り手綱を持って共に集合場所である大門前までくると、そこだけ羊の群れはおらず、そこには一人の少女と一匹の小型犬がいた。


 少女はシュウに気が付くと元気よく近づいてきた。


 「おはようございます。シュウ先輩ですよね? 私の名前はベルタっていいます。7歳になります。学校で小等部に所属しております。本日はよろしくお願いします。あ、あと、この子は牧羊犬のポーラって言います。」


 はきはきとした返事にシュウは若干うろたえていた。


 「ベ、ベルタちゃん、よろしく。ごめん、こちらから聞いて悪いんだけど、今日、俺は何を手伝えばいいんだ? 詳しく聞いてなくて・・・周りを見る限り、この羊に関係することなんだろうけど・・・」

 シュウは自分より年下の子供に対し、バツが悪そうに答えた。


 「はい、簡単に説明しますと。シュウ先輩には私たちを守ってほしいのです。これから私たちは羊さん達と北門の外へ出ます。外には羊さん達のごはんである牧草が生えていますので、食事と運動を兼ねて、遊んでもらいます。それを夕方ごろまで続けて、それまで、先輩にはなにかあったときに私を守ってほしいのです。まあ、私が聞く限りでは、大門の近辺ですし、いままで亜人等の被害はほとんどないと聞いてます。


 私の家族は羊飼いで、この町の中で、羊さんと移動しながら暮らしています。移動するのは同じ場所にずっと居ると、羊さん達のごはんである草がなくなってしまうからです。

移動はしてはいるのですが、それでも時々、こうして壁外に出て内地以外からも羊さん達に食事をしてもらわないと、牧草の成長サイクルが間に合わないのです。

私は学校の寮で暮らしてるので、普段、家族の手伝いができないのです、今回タイミングよく、羊さん達が北壁にくるのと私の休み合ったので、本日は羊さん達のお世話をすることになったのです」


 7歳の子供がここまでしっかりしているのに驚きながらシュウはその話を聞いていた。

 シュウが話を聞いている間、ポーラが構ってほしそうにずっとしっぽを振りながらはっはっはとベロを出しながら、シュウの下半身に抱き着きついていた。周囲の羊達もシュウの周りに寄ってきてシュウを嘗め回していた。

 

一通りベルタの話を聞くと、シュウとベルタは大門の警備隊と打ち合わせをしたのち、門を開いてもらった。


 先頭を歩く羊がリーダーなのか、リーダーに引き連れられるようにぞろぞろと北門から続々と出ていった。


 ベルタがポーラに合図をすると、ポーラは集団の間を縫って勢いよく抜けて、先頭のリーダーの元に行ってうまく誘導した。今回、危険は少ないと言われているが、なるべく壁から離れないように壁沿いに羊達の誘導をした。


 ベルタがすごいのか、ポーラがすごいのか、どういう意思疎通で誘導しているのかシュウはあっけに取られた見事な誘導であった。約1時間で、壁内を埋め尽くしていた羊は移動が終わった。


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