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黄昏にて  作者: にわせたか
第1章 再出発の町
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29 三英雄

 《ヘリテージ》からいつものように音色が流れる。その音色を誰かに聴かせたいのか、そうでないかも分からないが、この黒色のレガシーはいつも一時間ごとに変わりなく一曲を流す。きっと建てられてからずっと。そしてこれからもずっと響かせるのだろう。

 流れる曲は1つとして同じものは流れてはいない。熱心な聴講者でも、同じものを聴いたことはないと答えるだろう。中には、以前気に入った曲がもう一度聞きたいと願いながらヘリテージの前を通り過ぎる人もいるだろう。


 流れてくる歌や音楽・・・文化、歴史、思想等、その曲に込められた思いが、不思議と聴いている人には伝わった。歌詞についても、現在使われている言葉とは違うのだが、意味はなんとなく分かった。

 ヘリテージは継ぎ目すらない建物で今まで研究者によって調べられていた。他のレガシーと比べた結果、人類の科学技術の最終到達地点で作られたと判断された。


 もしかしたら内部構造があるかもしれない。多くの研究者が考えたが、内部に入り込めるような所は見つからなかった。とあるヘリテージを物理的衝撃で内部を開く試みがあったらしいが、何度も衝撃を加え、壁面にヒビが入り、もう少しで穴が開くと思われた途端、全体が粉状に分解して崩れてしまい、なにも残らない結果になった。


 ヘリテージの表面には文字が書かれていたが、これが何を表しているか研究者は遂ぞ分からなかった。


◇ ◇ ◇



シュウとサニーは学校の帰り道、図書館に行くことになった。

帰り道、ヘリテージからの流れる曲が流れる中、ふと、シュウは道沿いに立っているある人物の像に興味を示したからだ。それは、ほぼ毎日通る道で、毎回目にはしていたが、いつも通りすぎるだけの存在であった像であった。


像は若い男性で剣を片手にもう片手で遠くを指さしていた。


「なあ、サニー、いつもこの像見るんだけど、この像の人物って誰なんだ?」

 「えっ? シュウ、この人知らないの?」

 サニーは少しびっくりした表情で答える。


 「この人はね。シュウ・・・・えーっと、あれ?」

 すぐ様サニーは回答をしようとしたのだが言葉が詰まる。

 

 「・・・この人は・・・ほら、うちの学校って歴史の授業ほとんどないじゃない。その中でちょっとでてきてたわよ。」

サニーは少しづつ思い出しながら続ける。

「この人の名前はたしか『シラヌイ』、『イッシキ=シラヌイ』っていう人よ。斜陽歴からの人物で斜陽歴が始まって今までで人類に大変な貢献した三人の人物、《三英雄》と呼ばれる一人で、・・・たしか《この魚の切り身を開いた者》って異名があるらしいわ!」


最後の異名はさすがに違うだろと流石授業を熱心に聞いているだけのことはあるなとシュウは感心しながら、じゃあこの人は具体的になにをした人なのかと聞くと、サニーは言葉を詰まらせた。


 「くっ・・・わ、分からないわ。でも異名からしてこの町で漁業関係の人だった・・・とかじゃないの? この町って漁業盛んじゃない? でも授業で詳しく教えてもらった覚えはないわ」

 「はぁ、なんだよ。結局サニーも詳しくなんじゃないか」


 学校では歴史の授業が極端に少なく情報量が少ないと常々シュウもある程度疑問があった。学校の授業のほとんどは、大人になって生活に必要な知識を教えられることばかりであった。

 

 サニーとシュウは改めて像を見た。

 「そういえばこの像、よく見たら少し、シュウに似てない? 顔の輪郭とか・・・剣もっている所とか」

 サニーは像とシュウを交互に見ながら答えた。

 「剣は関係ないだろ・・・ 顔はあまり自分の顔見ないからどうなんだろうな。」

 

 しばらく二人は像を見ているとサニーが口を開いた。


 「じゃあ、この際、図書館に行ってみましょ! 今日はシュウもこれから暇でしょ? 図書館って一度もシュウは行ったことないでしょ。この町唯一の図書館ならなにかわかると思うわ」


 図書館と聞くと少しめんどくさく感じるようになったシュウはしぶしぶサニーに連れられ、図書館に向かった。


 ◇ ◇ ◇


 図書館は驚くほど近くにあった。像は町議会所と隣接しており、その町議会所に隣接して建っていたので徒歩で数分の距離であった。


 この町唯一の図書館ということで広大でかなりの蔵書数を誇っていた。

 サニーは何度も来たことはあるのだが、歴史上の人物は調べたことがなかった。

 手っ取り早く、サニーはカウンターにいた司書の人に尋ねた。


 「三英雄に調べているのですが詳しい本はないでしょうか?」

 司書に尋ねると、お二人は学生ですかと不思議な質問をされた。二人は「はい」と答えると対応していた司書は少々お待ちいただけないでしょうかと本棚の奥へ消えていった。


 数分後、本棚から出てきた司書から渡されたものは、学校で貸してもらっている歴史の教科書だった。


 「申し訳ありません、私の記憶では三英雄に関して一番情報量がある本はこちらしかありません」


 「えっ、本当にこれだけなんですか?」

 はい、と答えた司書は教科書を渡して、そっけない態度でカウンターへ戻っていった。


 「サニー、本当かよ、これしかないって」

 「私もびっくりしたわ、でもこれ以上聞いてもなんともならないような感じだし・・・」


 しぶしぶ、二人は読書用の机に行き、いつも学校で見ている教科書を開き、内容を見た。


 内容は予想通り、ほとんど書かれていなかった。


 三英雄 斜陽歴以降、主に旧南米で活躍した人物

『シラヌイ』・・・『イッシキ=シラヌイ』この地を切り拓いた者 男性

『ネル』・・・『フランネイル=ヴァリアンテ』 魔女 唯一存命が確認できる英雄 女性

『アッシュ』・・・『アッシュール=アルハザード』 世界を踏破した者『斜陽の記述』作者


「シラヌイって人の異名、ちょっと違ったわね」

 サニーは少し恥ずかしそうに照れていた。


・・・『アッシュ』という人物はシュウ聞き覚えがあった。昔、カイの思い出話で聞いていた人物だ。度々カイがこの人物を推していたような話をしていたのをシュウは思い出した。


 その後も二人は自分たちで広大な図書館を調べたがそれらしい本を見つけることはできなかった。

 結局、ほとんど新しい知識を得られず二人は図書館後にした。


 二人は渚停で夕飯を食べながら、話をした。サニーはサンマバーガー(和風)、シュウは定食だ。


 「いままでなんとも思っていなかったけど、歴史って大事だと思うの、私たち、私たちよりも以前の人がどうやって生きてきたのかを知ってこそ、今の私たちがどうやって生きていくか、よりよい方向が見えてくると思うの。

・・・今回三英雄のことを調べて気が付いたけど、私たち、昔のことをほとんど何も教わってないわ。それについて分かるような記録媒体を私たちに意図的に制限しているような・・・」


「でも、誰がそんなことをして得をするかな?」


「分からないけど・・・」


シュウも何度かこの町の歴史について、周りの大人たちに聞いてみたことがあった。しかし、返事は曖昧だったのを思い出した。


 結局二人はそれぞれ夕食を食べ終わるまで考えてみたがこれといって結論は出なかった。


 シュウはサニーを家まで送り届けて、自分の家に戻った。学生生活もあと数か月で卒業という時期となっていた。


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