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黄昏にて  作者: にわせたか
第1章 再出発の町
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26 オタリア(8)

 駆ける。石畳の街路を抜け、北壁へと。

 

 フラムはスピードを落とすことなく、もう1時間ほど走り続けている。目的地へ直進したかったが、建物位置関係や、フラムにとっての走りやすさ、後方から追ってきているオタリア達が自分たちを見失わないよう、拓けた道をシュウは選んだため、最短ルートよりも遠回りの迂回したルートとなった。


 ほぼ全力のスピードを、フラムはこの間継続している。フラムは警備隊が飼っている他の馬と比べ明らかに持久力があった。シュウはフラムの呼吸、発汗、心拍数から筋肉の緊張感からフラムの残りの体力を感じ取りながら速度を調節した。フラムも、手綱からシュウの意思を感じとっていた。オタリアの方も、底なしの体力なのか、全く速度を落とすことなく付いてきていた。



 ・・・・・・見えた!


 北壁東2番。その門が見えた。普段から通用口としての利用がされない門が開放されているのを手前約500mの所でシュウはそれを確認できた。


 通用門の手前には日常的に人が入れないように木製の柵で覆われている。その一部が外れていた。


 きっと隊長が意図的に外したのだろうとシュウは思った。


 最後にシュウは後方を確認し、オタリア達の距離を確認した。手綱を引っ張りフラムの速度を極端に落とした。

 見る見る内にオタリアとの一気に距離が詰まっていく――まだだ、もう少し我慢しろフラム・・・


 肉薄するぎりぎりまで距離を縮め、――今だ。

 シュウは手綱をほとんど緩め、上半身は屈んだ状態にして風の抵抗を極力抑える。体の力を抜いてフラムの走っている動きに合わせる――それが全力を出せという合図だった。


 フラムはそれを感じとった。歩幅は限界まで広がり、スピードが上がる。人馬一体となり、風を切る。等身が前に伸び、地面をきる。地面の石畳の道を砕きながら前に、前に進む。

 目にも止まらないスピードで門の手前・・・木製の柵が一部外されている所をフラムが抜ける。


 正面、目の前の景色はいままで広がっていた平面な地面はない。意図的に地面が掘られた崖とも呼んでもいいほどの落とし穴が北壁に沿って作られていた。幅は約10m。


「いけぇええええええええええええええ!!!」

シュウはフラムに向けて叫ぶ。


フラムは渾身の力で大地を後ろ足で蹴り上げ、飛んだ。地球の重力を抜け出したかのように高く。

崖を文字通り滑空し、一瞬時間が止まったような、無重力に近い感覚をシュウは感じた。


1秒にも満たない時間、10mの距離を飛び越え、フラムは対岸の門がある地面に無事着地した。


 後続していたオタリアの集団は、木製の柵を気にもせず押し倒しながら進む。そして、目の前に崖があるとは認識できず、その深い穴へと自らを投げ出していった。


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