21 オタリア(3)
「あれは」
オルフェは海岸の叫び声がした方向を凝視する。
砂煙をまき散らし海中から姿を現したのは大きなアシカのような生物であった。
どの個体も体長約4m、鋭い牙、やや暗めな茶色の毛で覆われている。
数は約50匹程度確認できた。
動く速さは人間並みの速さですでに海岸に上がっている個体は周囲の人を襲ったり、海岸沿いにある漁師の建屋をその巨躯の重みで破壊を始めている。
「あれはアシカのような生物であるオタリアですね。ただ、大きさが図鑑で見たことがありますが桁違いな大きさです。多分《幻獣》となっているオタリアだと思います」
その場にいた3人にヴィダルは説明する。
「1匹ならまだしも・・・あんなにいたんじゃ対処がないな、ここには戦える人はいない一般人ばかりだし」
すでに逃げ腰のオルフェが呟いた。
「よし、とりあえず俺が行って浜辺であいつらを牽制しておく・・・その間になんとか」
シュウがそう呟き群生に向かって行こうとするのをサニーが引き留めた
「ダメよ、この間言ったじゃない。一人で命がけのことをしたらダメ!」
シュウは一旦立ち止まり、振り返りサニーを見た。
「でも、あれがばらばらに町になだれ込んだら被害が甚大になる!少なくともここで注意を反らすくらいしておかないと後で大変なことになる。・・・大丈夫、あいつらの動きはそこまで早くない、危なくなったら逃げるさ。この間の約束は守る、命を捨てるような真似はしないさ。それよりサニー達のほうも安全な場所に避難してくれ!」
そういうとシュウはまだまとまっているオタリアの集団のもとに駆け出した。
オルフェはサニーを見ると
「さあ、俺たちはシュウの言われたように安全な所に逃げようぜ」
「・・・いえ、私はまだここでやれることをやるわ」
サニーはそう言うと、持っていたホイッスルで断続的に合図を行った。
海岸にホイッスルが響き渡ると、すぐさま、20人がサニーの元に集まった。
ヴィダルとオルフェはあっけにとられていた。
「今回の漁で集まった300人の内、20人は本職の漁師の人なの。あらかじめ私たちだけ集合する合図を決めておいてよかったわ」
サニーは20人に視線を合わせ
「みなさん、緊急事態です。若年の私がみなさんに指示するのも失礼ですが、みなさんの助けが必要です。現状の被害をこれ以上出さない為にも、私に力を貸してください」
おぉ!という響きで20人の漁師達は整列した。
「まず、現状ですが、目下の幻獣オタリアをどうするかです、今は同級生に一人がオタリアの注意を反らしに行っている状態です。私には現状、オタリアを倒す案がありません。この海岸沿い周辺には警備隊の詰め所もありません。北壁の警備隊のほうが近いので連絡、港のオーランド団長にも現状の報告をお願いします。近場の緊急事態用の警鐘も鳴らして周囲の人に危険を知らせてください。残りの人は周囲に取り残されている人の安全誘導をお願いします。」
てきぱきと答えると、サニーはそれぞれの役割を20人にあっという間に決め、各々が目的の場所に走った。
サニーは周囲を確認すると
「さあ、オルフェ、ヴィダル、私たちは北側の高い場所で待機よ、特にオルフェは目がいいんだから至る所に注意して私に報告しなさい!」
はいっ!と2人はサニーの先導力に若干引きつつもサニーに付いていくのであった。




