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黄昏にて  作者: にわせたか
第1章 再出発の町
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20 オタリア(2)


300人が二手に分かれて岸の両端に集合する。サニーが木製のホイッスルを用意していたので音の合図で網を引っ張り上げる算段だ。


サニーは思いっきりホイッスルを鳴らすと力自慢で選出された300人が叫び声をあげながら網を引っ張っていく。


シュウ、オルフェ、ヴィダルは近場で網を引っ張った。


オルフェは片手にアコギ、片手で網を引っ張っている。

「おい、オルフェ、その片手に持っているのはどっかに置くか首に下げておけばいいんじゃないのか?力入らねえだろ!?」

シュウは網に力を入れながら声を上げた。

「いやぁ、俺はこいつが片手にないと逆に力が出せないんだよ」

「いや、おまえトイレとかでそいつ離してるだろ?」

「それとこれとは話が別さ」

シュウが怒鳴り、オルフェが飄々と答える中、はははとヴィダルが網を引きながらあきれ笑いをしていた。


「そういえばヴィダルの実家もいつも忙しそうな感じだけどそっちの手伝いはいいのか?」

オルフェが話題を反らしてヴィダルに話を持って行った。

「うん、休日はいつも家の手伝いで終わっちゃうんだけど、忙しい時はお互い様ってことで」

「ふーん」

ヴィダルは話をしながらであるが真剣な表情で網を引いていた。


ヴィダルの実家はレナトスでは数少ない鉄工所を営んでいた。

仕事に必要な農具や漁具、調理器具、武器として槍等を作っている。

主な材料は鉄でレナトスでは材料がほぼ生産されないので他の町からの輸入で賄っていた。


作業場は高温で、そこで働く人たちは夏場では滝のように汗水を流して鉄を叩く姿から、そこの仕事の手伝いをしているヴィダルからは普段の気弱な感じが見られないことにシュウとオルフェはその落差を思い出していた。


300人が網を岸まで引っ張るにつれ、網が徐々に重くなっていく、やがて、網目が見えるにつれ、網の中で魚がびちびちと跳ねる姿が見えるようになっていく。


最終的に網全てが水面から顔を出したことで、網一杯に魚が掛かっていることが分かり、全員が歓声を上げた。


その後、300人全員が渾身の力を入れて断続的に動いた為、その大半が周囲で座り込み休憩をしていた。


それを許さないかのようにホイッスルの音が激しく鳴った。


「ほーら、みんな立って。網を引き揚げて終わりじゃないのよ、新鮮な内にこれから仕分けを作業と積み込み作業を行います」


サニーが座り込んでいる人に鞭を打つかのように指示をする。

合図したかのようにサニーの後方に数台の荷台を引いた馬が到着した。


「さあ、獲れた魚を種類、大きさを分けてこの荷台に全部運んでください、空いた人は網の回収、・・・酒を飲んでいた人がいたわよね。海岸の清掃もお願いします」


サニーの的確な指示に関心しながらも魚を選り分けていく3人がそこにはいた。


 朝早くから始まり全ての仕事が終わったのは昼が過ぎたころだった。

300人を集めただけあって収穫量は成功といえるだけのものはあった。

参加した人には支給として握り飯が用意され、各自、浜辺で遅めの昼ご飯を食べていた。


「おつかれさまっ」

3人で握り飯を齧り付きながら座っていた中にサニーが片手に握り飯を持ってやってきた。


「どう?大変だった?またお願いできる?」


3人は声には出さなかったが首を縦に振りながら答えていた。3人ともこんなに大変とは思っていなかった。サニーはその声にならない返事を見るなり笑っていた。


仕事終わりに潮の満ち引きを見ながら、浜辺での昼飯に3人は満足していた。


その後4人はご飯を食べながら世間話をしばらくしていた。


ヴィダルは話を切り出し、

「僕たちでこんなにへとへとになるのにサニーさんのおじいさん、オーランドさんはあのお歳で魚師団をまとめながらの仕事、すごいですね!」


「ええ、元気すぎて逆に心配になっちゃうわ。・・・でも最近は咳が酷かったり船上で休んでいることもあるって聞くわ・・・」

サニーは船には乗らないので他の船員から時々そういった話を聞くらしい。


今回サニーは監督役で仕事を務めていた。今回の仕事の下段取り全てがサニー任せではないだろうにしても、今回仕事を完遂できるように人数を手配したのも、現場での的確な指示をこなしたのも、サニー自身が将来、こういった仕事に就くかもしれないと考えて自主的に行ったものだった。それは案に遠く無い将来、祖父が引退した先を考えてのことであった。


「まあ、なんにせよ、無事仕事が成功できてよかったよね、今後のサニーちゃんの活躍に期待してカンパーイ」

乾杯の盃が無い代わりに手に持っていたおにぎりをオルフェがそう掛け声を上げた時であった。


海岸の南東方向から叫び声と砂煙が上がったのは


「オタリアだーーーーーー!!!」





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