15 レナトスの町(9)
授業は数学や環境、現代の社会等、自分達が生活する上で必要な教育科目がほとんどで、歴史や音楽、芸術などこれから独り立ちする上で、日常生活に関係ないと判断されている科目はほとんどなかった。
中には、そのことに不満の声を上げる生徒があったが、今のテオ町長の方針と一喝されていた。
オルフェは「なぜ、俺の演奏技術を披露する時間がないんだ!!」と時々ふてくされていた。
シュウも歴史という自分達人類の歩んで生きた道のりを知りたいと思っていたが、その機会がほとんどないことに不満があった。
3時になり、今日の授業が終わった。オルフェは羽根付帽子を深く被り、夢の中であった。
ヴィダルやサニーはこのクラスでは優等生の部類に入る。シュウは時々二人の教科書やメモの書き込みを見るのだが「うわぁ」と声に出るくらいびっしりと書き込みがされていた。
授業が終わったあとは各々、自分達の生活が待っている。
ほとんどの生徒は自分の家の仕事を手伝いにいく。サニーとヴィダルは各々実家へと手伝いにいった。
オルフェはいつもふらっとどこかに消えていく。噂によると町の各所でソロ演奏を開いているらしい。
シュウは一週間の謹慎を言われているのでふとどうしようか考えた。
いつもならば学校を出た後、待ち構えたかのようにフラムが出迎えてくれており、フラムに乗って北壁に行くことがルーティンになっていたのだが、急に自由な時間ができたということで何をするか全く考えていなかった。
フラムはいつものように学校も前で待っていた。
フラムは頭を摺り寄せてきたのでシュウは頭を撫でてやった。フラムに跨り、どうしようかと考えていたら、昨日の戦いでだろう、疲労感に苛まれてしまった。
「飯食って早く寝るか」
そう呟き、大衆食堂の「渚亭」へとフラムを駆けさせた。