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黄昏にて  作者: にわせたか
第1章 再出発の町
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11 レナトスの町(5)


「いやー、二人の熱々ぶりにはこちらも見てられないなぁ」

「いや、オルフェ君、目が血走るように見てたよね?」

「ノンノン、これは僕が目が悪いからよく見ようとね」

「え、確かオルフェ君って・・・ってしかも見てられないなぁといいつつ見ようとしてるんじゃ・・・」

「まあまあ、ヴィダルもそんなことはいちいち気にしない」


 シュウとサニーの二人が学校に歩く傍ら、木陰に身を潜め、やりとりをのぞき見をしていた二人。


 大きな羽根つき帽子を深く被り、ひょうひょうと喋る人物はオルフェ。

 オルフェより少し背が小さく、おどおどとした引込み思案な性格をしているのはヴィダル。

 共にシュウやサニーと同じ学校の同級生である。


 オルフェは昨日の起こったウェアウルフとシュウの交戦の様子を「実は聴いて」おり、一番の目撃者だともいえる。

 そして、今日になり家が近くであり、同級生であり友人でもあるヴィダルと一緒に学校まで行く途中であった。

 道すがらオルフェはヴィダルに昨日のシュウとウェアウルフの命のやり取りを事細かに鼻歌交じりに話していた。

 話が終わる最中、遠目に居たシュウとサニーを見つけ、二人の只ならぬ会話からこれは修羅場になっているぞと察し、ヴィダルを無理やり連れて近くの木陰まで匍匐前進で隠れていたというわけだ。


 オルフェはシュウとサニーの修羅場が円満に終わってくれたことを内心、ホッとしていた。なにせ、昨日シュウを駆り立てたのは直接的には彼の言葉からだったのだから。


「オルフェ君、あの二人って・・・その・・・付き合ってるかな・・・?」

 木陰で隠れている中、ぼそっとヴィダルが呟く。


「・・・いやーそれはないんじゃないかなぁ」

 羽根付帽子をより深く被りオルフェは返答をする。

「・・・まあ、なんにせよ、面白いものが見れてよかったよ。いつまでも隠れてないで合流しましょうかね」

「あ、二人の話していたことを俺たちが聞いてたって事は内緒な」

 さっと立ち上がると木陰から出てシュウとサニーを追いかけるオルフェ、そして待ってよぉと後を追うヴィダルであった。



 シュウとサニーが学校に向け歩いていると、後ろから駆け足で走ってくる音に二人は振り向いた。


 やあやあと手を振りながら走ってくるオルフェとその後ろから息を荒げながら追走してくるヴィダルの姿にシュウとサニーも手を振りながら合流した。


 その後、4人は歩きを揃えながら、オルフェの昨日のシュウは活躍したらしいなぁから始まった。

おまえのおかげで大変だったんだぞとふざけあいながらもサニーとヴィダルの二人が諫める様子があった。


 4人は幼いころ、シュウの父親が開いていた剣道道場に通っていた。それもあってこの4人はとても仲が良かった。


 4人集まるとなんとなく昔の話も話題に出てくる。


「あの剣道道場はきびしかったねぇ。」

 そうヴィダルは声に出しながら思い出していた。

「ん? そうかい? 僕にとってはまったく問題ない試練だったね」

 オルフェがさわやかな笑顔で口ずさむ。

「おい、嘘こけ。 おまえはよくずる休みしてたから直ぐに親父から破門されてたろ。」

 シュウは呆れた表情でオルフェに言うとええー? そうだったかなぁ?とさらりと返された。

「ふふ、まあいい思い出よね。」

とサニーが微笑みながらフォローした。


 シュウ達が7歳の少年時代。 夏の蒸し返す暑さの中で流した汗。冬の寒さの中、痺れるような感覚の素足で床を歩いていた道場。

 約3年間(オルフェは半年)、シュウの父親である月野瀬つきのせ かいの指導を受け、ここにいる4人やその他、周辺の子供たちは剣道を習っていた。


 カイ自身、自己流剣道として触れ回っていたが、剣道として肉体的な習練だけではなく、心の習練、相手を敬う気持ちを子供たちに教えていった。


 元々、思いついたら即行動主義だったカイは自分自身で家の隣に数か月を懸けて木造の道場を一人で建てたとシュウ達は当時、耳を疑う事を聞いていた。(自宅もそれ以前に自分で建てていたそうだが)


 なんにせよ、4人の人格形成の一部はこの道場で培われたとも言えるだろう。


 朝の陽ざしが眩しい、見晴らしがいい一面草原が広がっている。この地域では2月は短い秋口でもあり、朝のこの時間帯は非常に清々しい。心地の良い風が吹く中、4人は草が生えていないだけの、舗装されていない、人が幾度も通ったことにより草が減っているだけの踏み分け道をふざけあいながらも親し気に歩いて行った。





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