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黄昏にて  作者: にわせたか
第1章 再出発の町
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10 レナトスの町(4)

 食堂を後にし、シュウとサニーは学校へと足を向けた。


 二人で並んで歩いている途中、サニーが口を開いた。

「ねぇ、シュウ、昨日の事って何?」

 シュウはオーランドまで噂になっている事を隠すことはできないと考え、サニーに正直に話した。

(正式にはウェインと二人だが)単独で防壁の外へ出たこと。そして大勢のウェアウルフと命が掛かった交戦になったこと。


 事のあらましをシュウが話すと、歩きながら黙って聞いていたサニーはシュウの前に立ち歩みを止めた。


 暗がりな表情を浮かべ、サニーはシュウの顔を見上げた。


「私はシュウに危ない事をしてほしくない。 でも将来警備隊に入りたいって思ってることも知ってる。そこではさっき話してくれたような事も起きるかもしれない。」


 いつもは大人しいサニーは声を震えさせながら続けて話しかける。


「シュウの性格は昔から知ってる。家族の様に昔から一緒に暮らしてきたから。みんなを守っていきたいって思いは変えられないと思うから。」


「私はシュウが・・・・・・心配だから」


 サニーは目にうっすら涙を浮かべていた。しかしまっすぐシュウを見ていた。

 サニーの両親はサニーの物心がつくくらいに亡くなっていた。正確には亜人・・・ウェアウルフに殺されていた。

 両親を失うという思いを家族同然に暮らしてきたシュウを重ねてしまうのだろう。人一番シュウの心配をするのはいつもサニーだ。

 シュウはサニーの自分に対する気遣いを本当に分かっていたつもりであった。しかし、今日この場でサニーの言葉を聞き、自分は本当に支えてもらっている気持ちに初めて気が付いた。


 本当に気付いていたのならば、あの時、あのような行動はしなかったのかもしれない。サニーのように、自分の身を、誰かがいつも案じてくれていると考えたのならばだ。

 シュウはウェイン先輩も、ゴーリキ隊長にも改めて、申し訳ない気持ちとなった。


「・・・ありがとうサニー。 俺はやっぱり、誰よりもみんなを守っていきたいって思ってる。でも、サニーのように自分を思っていることを蔑ろにしていたみたいだ。 ・・・約束する。自分の命を捨てるような真似は絶対にしない。」


 うんうん、とサニーは涙ながらに頷いた。

 シュウの約束を聞き、気持ちの区切りがついたのか数分もするとサニーはいつもの落ち着きを取り戻し、

「よし、ちょっと遅れちゃったわ、シュウ。 早く学校にいこう」

 と元気に歩みを進めるのであった。


 二人がそんなやり取りをしながら歩いていく姿を、木陰から見守る2人の影があった。



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