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天地無窮を、君たちと  作者: 天城幸
第十章
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54.誕生日会(準備編3)

 

『シアン、水の精霊王の酒のつまみになりそうなものを狩って来たよ』

「わあ、立派な鮭にタラだね。鮭は冷燻してサラダにしても良いし、そうだな、ちょっと手を加えた料理にしようか」

『……』

 ユルクとネーソスと共に料理をする。

 ユルクが尾で小房に分けたブロッコリーを塩ゆでし、冷水にとってざるに上げて水を切る。一部を細かく切り、ネーソスが潰したアボガドに加え、ホースラディッシュ、レモン汁、みじん切りしたチャービルとディル、ヨーグルト、砂糖、塩コショウと混ぜ合わせる。型に敷いたひと口大のスモークサーモンの上に詰め、へらで型に沿って滑らせ、皿にひっくり返して出す。

「ブロッコリーを飾ったら綺麗だね」

『オレンジと緑が鮮やかだね』

『……』

 ユルクとネーソスが見た目が華やかで良いと褒める。

「今度は王道の切り身を焼いたものをだよ。まずはソースだね」

 長ネギを軽く炒めて白ワインと水、ケイパーを加えて煮立ったら弱火にする。溶いた卵黄、ヨーグルト、生クリーム、砂糖を加えて混ぜ合わせる。とろみがついたら火を消して塩コショウする。

 ユルクが鮭の切り身を軽く塩コショウしてフライパンで両面を焼き、ネーソスが差し出す皿に盛る。その上にシアンが作ったソースを掛ける。

「うん。鮭とケイパーは相性が良いね」

『……』

『美味しいね』

「次はタラだよ」

 ネーソスが塩コショウを振りかけたタラの切り身をユルクがフライパンで両面を焼く。

 シアンはバターを熱して柔らかくし、みじん切りしたパセリとおろしニンニク、レモン汁、パン粉、砂糖、塩コショウと混ぜ合わせる。

 これをタラに塗ってオーブンで焼く。

『わあ、良い香り!』

『……!』

「うん、焼き色も美味しそうだよね」

 その他のつまみとして、ジョンの牧場で貰ってきたチーズで何品か作る。

 鸞とリリピピがせっせとクルミを砕く。

 チーズとヨーグルトを混ぜ合わせ、セロリに乗せて上から砕いたクルミを散らす。

 次は、潰したクリームチーズをハーブと塩コショウと混ぜ、焼いて小さく切った食パンに乗せる。

 もう一品、チーズにヨーグルト、生クリームを加えて加熱して混ぜ、砂糖、塩で味付けする。長ネギを切り、半分に切ったジャガイモをスライスし、双方を茹で、ざるに上げて水けを切る。これにチーズソースを掛け、黒コショウと砕いたクルミを散らす。

『お肉は?』

 鳥型の魔獣を狩って来たティオにシアンが頷く。

「もちろん。肉料理も作ろうね」

 捌いた塊肉に塩コショウして脂身の方を強火で焼き、油を捨ててひっくり返す。焦げ目がついたら、更にひっくり返して脂身を下にし、蓋をして弱火で焼く。

「中のピンク色が残るくらいに焼くんだよ」

 白ワイン、ローズマリー、マーマレード、醤油を混ぜて火にかけ、煮立ったらバター、コショウを加えて火を消す。

 肉をスライスして皿に盛り、ソースを掛ける。

『アイスクリームは?』

 調理を観察していた光の精霊がリクエストする。

「作ろうか?」

 嬉しそうな顔つきになる。

 リムが楽し気ににオレンジの果汁とレモンの果汁を混ぜる。

 水に砂糖を加えて熱し、カラメルを作る。レーズン、オレンジの皮、ラム酒、バニラエッセンスを加えて弱火にして煮る。バナナを斜めにスライスしてバニラアイスクリームに沿えてカラメルソースを冷やして掛ける。

 わんわん三兄弟はケルベロスの時には色々できたが、家事はしたことがない。経験がない上に不器用になった子犬の今、できないことが多い。

 元から不器用だったのではないので、できなくなった実感を味わうとその落胆が大きい。

 しかし、これは自分たちが選んで進んできた途だ。消沈しても何度でもチャレンジした。

 そして、そんな気持ちをシアンが汲み、善しとしているものだから、セバスチャンが迷惑に思うはずもない。

 つまり、誰憚ることなく、わんわん三兄弟は失敗を重ねることになる。その上で、徐々に色んなことができるようになっている。

 心を籠めて、精霊の誕生を祝う準備に参加した。闇の君の誕生を寿ぐことができるなど、想像だにしなかった。まず、当の精霊が拒否しただろう。それを喜ばしいものだとシアンが教えた。

 夢の様な機会を与えてくれた新しい主に心から感謝した。



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