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天地無窮を、君たちと  作者: 天城幸
第六章
250/630

6.それぞれが出来ることを1 ~近づいちゃ、ダメ!~

 

 一角獣がジャガイモが好きだと聞いて、シアンはジャガイモ料理をと思った。考えてみれば、ジャガイモは様々な料理に用いられる。

 そこで、おやつにならないかと思考は流れる。


「ええと、こんなことを頼むは気が引けるというか、なんというか」

 綿のような巻き毛に白い肌、理知的な翡翠の眼差しの風の精霊に依頼をためらう。

『とりあえず、言ってみたら?』

 促されてシアンは皮を剥いたジャガイモを手にした。

「これを薄くスライスしてほしいんだ。それを油で揚げて塩を振って食べたいんだけど。ものすごく薄くしたいんだ。変なお願いでごめんね」

 ふ、と吐息と共に風の精霊が微笑んだ。浅紅色の頬と唇が綻ぶ様は蕾が花開くようだ。

『お安い御用だよ。何をためらっているのかと思いきや。簡単なことだから却って言いづらかったの?』

 言いつつ、シアンからジャガイモを受け取り、風によって向こう側がすけそうなほど薄くスライスした。シアンが用意した皿に乗せる。

 のちにその話を聞いたユエたちがスライサーを作ってくれた。

 ティオもリムも九尾も、ぱりぱりとした軽い食感が気に入り、その後もよく作ってほしいとせがまれるようになる。

 塩やコショウ、ガーリックやチリ味など様々な味付けのバリエーションを出した。


 風の精霊は時折、他にお願いはないのか、と聞いてきた。

 シアンはそうやって精霊たちが自分のために何かをしてくれようとするのが真実有難かった。

 シアンはプレイヤーだ。

 最悪、こちらの世界で死んでしまっても、戻ってくることができる。

 このゲームではプレイヤーとテイムモンスター、召喚獣が死んでしまっても時を置いて蘇る。ただし、プレイヤーは状況に応じたステータス低下、経験値、所持金やアイテム減少といったペナルティがある。テイムモンスター、召喚獣は経験値、ステータスの低下があり、プラスアルファあるという。なお、レベルに応じて一定回数死亡した場合、蘇らない。

 しかし、館の幻獣たちはテイムモンスターでも召喚獣でもない。

 いくら力ある幻獣だとはいえ、ティオたちは死ねばそれまでだ。

 だから、シアンを守るために盾になろうとするのは違うと思うのだ。

 精霊たちの加護が周囲の幻獣たちへの助力となってくれるのが、殊の外有難かった。

 狩りをする幻獣の他、麒麟や鸞、ユエやカランなどといった戦う力を持たない幻獣をも心配した。そして、自分や幻獣たちのために動いてくれる幻獣のしもべ団のことも懸念した。

 そんなシアンの気持ちを慮ったのは、やはり幻獣たちだった。



 シアンは皆のために料理をする。

 鸞は調薬、そのための護衛として一角獣が付き従い、ユエは色んな道具を作り、カランはそれに助言した。ユルクも自分も何かをせねば、と思い始めていた。

 リムがある日、湖の近くの開けた場所で一人、何かをしていた。

『何をしているの?』

『あのね、大きくなる練習をしているの!』

『大きくなる練習?』

 ユルクはリムと様々に話すうち、フェルナン湖の畔にある人間の街で大きくなったことも聞いている。膨大な魔力を要し、それだけに、休養が必要になるとも言っていた。

『そうなの! ぼくの手下が強くなる特訓をしているから、ぼくも大きくなったら眠くなったり力がなくなると言っていたらダメだもの』

『そうなんだね』

『うん! 今日明日はシアンが来ることができないから、今のうちにひみつの特訓をするの!』

 小さな体で決意を露わにきゅっとへの字口を急角度にする。

 ああ、そういえば、自分が祖父に呼ばれた際、口添えするのだと言ってくれた時、ちょうどこんな表情をしていたな、と思い返す。

 今もまた、手下が頑張っているのに、自分が言い訳をしてやらない訳にはいかないと思っているのだろう。

 リムはそうやって他の者の気持ちを汲み取り、それに力を貸したり、自分を成長させようとする。

『じゃあ、私もやろうかな』

『ユルクも?』

『うん。せっかく、リムやシアンが僕が水のない場所も移動できるように精霊に頼んでくれたのだから、小さくなる練習をして、もっと人に気づかれにくいようにするよ』

『わかった! じゃあ、一緒にやろう』

 一角獣もが強くなるために努力をしているのだと聞いた。自分ももう少し頑張ってみようと思う。祖父の言う武者修行というほどではないけれど。



 一角獣はシアンの二倍ほどの体長を持つ白い馬の体に、一メートル近い角を持つ。美しい外見でも特に目を引くのは角だ。雪の結晶が風に舞い上がり、光に輝くような風情である。

 気性荒く、勇敢で勇猛だが、シアンに甘えたり、幻獣たちと笑い合って遊んでいるところは可愛らしい。

 その一角獣はぼんやりだから自分がしっかり見ていてあげなきゃと思ったシアンが、実は複数の精霊の加護を持ち、強力な力を持つ幻獣たちに守られていると知った。

 自分の出番はないのか、と消沈しているところへ、シアンが笑いながら、君は僕の一番槍だからね、と言ってくれた。

 それぞれができることをして力を合わせて行こう、というのに一も二もなく頷いた。

 そうして、周囲を見渡してみれば、戦う力に乏しい幻獣たちもいる。けれど、彼らは器用だったり知恵を出したりしてシアンの助力となっている。そして、戦うだけでなく、便利さに貢献していた。

 狭い場所で長らく閉じ込められていた一角獣は初めて見る美しく暖かな光景、美味しい料理、楽しい音楽、心安い仲間たち、全てが胸躍るもので、何一つ汚したり欠けさせたり壊したくないと思った。

 彼らを守ることがシアンのためになるし、それが自分の役割だと思う。


 シアンは異界人という種族で、この世界で暮らしているのではなく、違う世界の者なのだそうだ。

 良くわからないが、ずっとこの世界に留まり続けるのは難しいらしい。

 尾がいっぱいある狐曰く、向こうの世界に定期的に、あるいは長時間戻らないと、シアンの健康を損ねて、酷いと死んでしまうこともあるらしい。

 そんなことはあってはならないことだ。

 そんなシアンは周囲の者の方を心配した。

 自分は一番槍として真っ先に先陣を切るのだから、攻撃を受けやすいとも言える。

 それでシアンが水の精霊に一角獣の安全を願ってくれ、面はゆい気持ちになった。

 より一層、他の幻獣を守ってやらなくてはと思う。シアンが悲しむといけないからだ。


 一角獣はシアンと再会する前、必殺技を編み出すために特訓をしていた。その経緯があったから、鍛錬を積む幻獣のしもべ団にも付き合った。自分の突進は早すぎてあまり参考にならないようだったが、一緒に修行するのは楽しそうにしていたから問題ないだろう。

 時折ユルクも加わって、他の幻獣や複数の人間たちとこんなにわいわいと賑やかに過ごすことがどこか不思議な気がした。

 一角獣にとっては人間は取るに足らないものだった。自分が力を貸してやらないとろくに食べることができない脆弱なものだった。

 それが、幻獣たちでは為し得ない一面を、シアンのために支えている。

 シアンが言っていた「それぞれができること」を彼らも担っているのだ。

 同じ目標に向かって力を合わせること、それは心地よいことなのだと初めて知った。



 紙がまだ高価で書物は希少なこの世界では、薬の調合は工房で親方に直接学ぶしかなく、それだけに薬師は珍重された。

 出来栄えには、腕の良し悪しの差が大きく反映される。

 薬師となったプレイヤーはまだスキルや現実世界の知識に助けられ、作成することができた。限られたプレイ時間のためにおいそれと師事している悠長さはないという点もあった。

 その点、シアンは恵まれていた。貴重な素材を手に入れる機会を得、森羅万象の知識を授けてくれる者や、師となる者がいたのだ。

 シアンは教師役を買って出てくれた鸞に薬作成に用いる材料のレクチャーを受けていた。

 鸞は天帝宮にいるころから調薬に携わっていた。諸書に通じる博識さを誇る。

 シアンは鸞に薬作成をして貰うこともあれば、寄生虫異類の足取りを掴むための協力もして貰っていた。

 研究熱心な鸞はこの島では多彩な生態系と潤沢な器材、豊かな魔力によって好きなだけ研究に没頭することができる上、精霊に教えを乞うことができる、この上ない環境だと喜んでいた。


『これが不老長寿の妙薬と古の書に記されているキノコだ』

 鸞が差し出す木箱の中を見ようと一歩足を踏み出しかけたが、リムが肩の上で小さく鳴く。肩に乗っている時はあまり大きな声を発しない。至近距離で大きな声を出してはシアンに障ると気遣ってくれている。今回のそれは小さくとも明確な制止を示していた。

『英知、シアンが近づいても大丈夫? 悪い菌はいない?』

 リムがシアンの肩の上できゅっとへの字口を急角度にして、鸞が捧げ持つ木箱に丁寧に収められた大ぶりのキノコを睨む。

『大丈夫だよ』

『良かった! シアン、大丈夫だって』

 リムの許しが出たので、シアンは苦笑しながら鸞が天帝宮から持たされた貴重な薬の素材を近寄って見せて貰った。

 貴重なものを害になるのではないかと疑われた鸞だったが、気にする素振りは見せなかった。薬草はそれこそ薬にも毒にもなると知っており、取り扱いに細心の注意を払うことは好ましいことである。

 傍らで成り行きに目を丸くしていた麒麟も、おっとりと鼻息を漏らして笑っている。大方、リムを可愛いなとでも思っているのだろう。


 キノコは縁は黄色い茶褐色で、漆を塗ったような光沢がある硬い傘を持っていた。

『傘が大きくて厚く、色つやが良い物が上質とされている』

『滋養強壮、鎮静薬、消化器疾患にも効能がある。人工栽培が難しく、また鹿の角のような形のものが稀にでき、これは非常に珍しいと珍重された。不老不死の妙薬として血で血を洗う過去の事例もあった』

 鸞の説明に風の精霊が補足を添える。

 食すのには適さず、抽出して茶や酒に混ぜて摂取するのだと言う。

「貴重なものなんだね」

 よく天帝宮が持ち出しを許したものである。それだけ、鸞や麒麟を案じていたのだろう。有事には、このキノコは大きな交渉材料となり得る。

 興味があるのならシアンに譲ると言う鸞に丁重に断りを入れる。鸞の研究に役立たせてくれたらそれで良い。


 鸞の研究室には多種多様な薬草が整理されて保管してあった。以前訪れた際よりも種類が増えているようだ。

 足りないものはないか尋ねると、どこでどう察するのか、セバスチャンが必要なものを必要な時に持ってきてくれるのだそうだ。

 シアンの肩から離れたリムが違う木箱の中を覗き込み、小さな鼻を蠢かす。

『わあ、匂いが強いね!』

『これは甘味が強いそうなんだよ』

 不用意に触ったり息を吹きかけたりしないリムに、麒麟が言葉を添える。鸞と長い付き合いからか、薬草にも詳しいようだ。

『こんなに変な匂いがするのに甘いの?』

 リムが驚いて麒麟とシアンを見比べる。

『前にね、シアンに淹れて貰ったお茶は甘い匂いがしたのに全然甘くなかったんだよ!』

『そうなの? この薬草とは逆だね』

『植物が甘い香りを発するのは昆虫を誘引して受粉を行うためだ。甘い実をつけるのはその果実を食した動物に種を遠くに運んで貰うためだ』

 静かに語る風の精霊の目線は珍しく麒麟に向けられていた。思いも掛けず視線を受け、麒麟は落ち着きを無くす。

『そうなんだ! じゃあ、リンゴが美味しそうな匂いがするのは実を食べて欲しいからなんだね』

 弾む声で言うリムに、風の精霊が頷く。麒麟は理知的な視線が逸れて、ほっと安堵する。ごく短い時間だったが、あの全てを見通すような眼差しに大いに気持ちを乱された。

『そうだよ。そして、リンゴが赤く色づくのは目立つためだ。その薬草はグリチルリチンやサポニンなどの甘味成分を含む。そのまま、もしくは、抽出液や粉末を甘味料として用いられる』

『薬効としては、解熱、鎮痛効果がある。大量摂取すると副作用がある』

 今度は鸞が風の精霊の説明に言葉を足す。


『これは?』

『それはこの島で採取したものだ』

 リムが違う木箱に興味を移す。

『葉を乾燥させて用いるのだ。劇薬でもあるから取り扱いに細心の注意を要する』

『シアンは近づいちゃダメ!』

 きゅっとリムの眦が吊り上がる。

「はい」

 自分のことを考えてくれての言葉に、シアンは素直に返答する。

『あは』

 思わずといった態で漏らされた短い笑い声に視線をやると、麒麟と目が合う。そのままうふふと笑い合う。


『リム、その薬草の花は狐の手袋と呼ばれているんだよ。とても可愛いよ』

『きゅうちゃんの手袋?』

 麒麟の言葉にリムが小首を傾げる。

『あは。そう言われればそうだね。あ、確か、シェンシがその花を写生をしていたよ』

『見たい!』

 わくわくと期待に輝く視線を向けてくるリムに拒否できず、鸞は写生画を見せてくれた。

 鈴なりというが、まっすぐに上に伸びた茎に、まさしくラッパ状の花が下向きに幾つも垂れ下がっていて、上の方は蕾となっているせいか、全体的に花の三角円錐の集合体となっている。鈴のようにも見え、振ると一斉に澄んだ音が鳴りそうだ。

『わあ、上手だね!』

「本当、本物が紙に生きているようだね。質感がある」

『シェンシは良く写生をするから、上手になったんだよ』

『初めは酷いものだった。生物の細やかな筋や微妙な輪郭の違い、厚さを捉えてこその写生だ』

 リムとシアンが感心し、麒麟が我がことのように誇らしげに言い、鸞は真面目に返す。


『あ、これ、庭に植えているのだ!』

 他の写生画を見たリムが声を上げる。

『うむ。それは薬草でもあり、ハーブとして料理にも用いられる。抗酸化作用があり、また、腎臓疾患の薬としても用いられる』

『長命の薬とされ、また、消毒剤や歯磨き粉としても用いられる。見目も良いため、庭に植えられることも多く、この植物が植えられた庭の所有者は病が重篤化し得ないとも言われている』

「そうなんだ。セバスチャンにお願いして、僕も少し分けて貰おうかな」

 鸞と風の精霊の言葉に、シアンはそれほどのものが庭に植えられているのか、と感心する。

『そうすると良い。いや、流石はセバスチャン。見事に調和した庭を作っている』

『庭、綺麗だよね』

 鸞に賛同するリムは庭を気に入っていてあちこち飛び回っているからこそ、描かれた薬草に気づいた。

『そうだね。我は庭を散歩するのがとても好きなんだ』

『ぼくも!』

 今度は麒麟とリムが顔を見合わせてうふふと笑い合う。

 次に庭遊びをする時は一緒にかくれんぼをしようというのに、鸞も誘っている。セバスチャンが丹精する庭の隅々に目をやる良い機会だと鸞も受け入れている。


 先ほどから、貴重な素材を目にし、詳細な説明を受けているため、経験値が上がっている。作ることができる薬の種類も増えたと脳裡にアナウンスが流れる。

 後で確かめようと、シアンは棚上げした。水の精霊の加護を得たのに気づくのが遅れたのと同じ次第である。


「シェンシ、お願いがあるんだけれど」

 シアンはそう切り出して、幻獣のしもべ団団員がブーメランという武器について知っていたら教えを乞いたいという申し出があったことを伝える。

「気が進まなかったり嫌だったら断ってくれて構わないからね」

 鸞は自分の説明を補足してくれる風の精霊のお陰で、より知識が深まることに喜びを噛み締めていた。有体に言えば、シアンやリムに説明することによって、風の精霊が知識を補完してくれ、それによって研鑽がなされていく。万物を知ると言われている風の精霊に教示して貰える貴重な機会なのだ。

 諸書を知る鸞にとって更なる知識を得るのは中々ない機会だ。

 九尾ならこう言っただろう。

 弱い敵をいくら倒しても経験値が上がらないのと一緒です。知っていることを何度繰り返しても、スキル経験値は上がらない。そんな仕組みの中、話を聞くだけでうなぎ登りに上げてくれる。伏し拝みたいくらいでしょうよ、と。

 それに、シアンやリムの思考に触れるのは心地よい発見がある。


『ふむ。知っておるぞ。手で投げて飛ばし、狩猟に用いるこん棒のことだな』

「あれ、こん棒なの?」

 蓄えた知識を手繰り寄せながらする鸞の説明に、意外な想いが声音に出る。

『そうだ。狩りに用いる投げつける道具だ。くの字型や十字の四本のもの、三本に伸びるものなどがある。削り方や投げる角度を調整することによって飛行が変化する』

『投射した者に戻って来るものは軽量で運動エネルギーも大きくない』

「そうなの?」

 風の精霊の言葉に、思わず声が出る。

『言われてみればそうだな。獲物をしとめることができる威力があるものが戻って来たとしても、手で受け止めるのは困難だ』

 それこそ、狩ろうとする威力を素手で受け止めるのと同じことだ。

『軽量型は鳥の群れの上空をかすめて、自分の方に追い立て誘導する役割を果たす』

「あ、じゃあ、亜竜の素材で作って魔力を通して使ってみたらどうかな」

『それならば用途が広がるだろう』

 その後、風の精霊と鸞によってブーメランの原理が説明された。

 自転しながら弧の軌道を描いて戻って来る。自転すると回転面に垂直の揚力を発生させる。この揚力はブーメランの断面の上面側が膨らみ、下面側が平らであることによって、上面側に発生するように作ってやると良いと言う。

『翼上面に少し凹凸をつけてやると良い』


 理解はできたが、それを何も知らない他人にうまく説明してやることができるかどうか不安なシアンはやはり、鸞に教示を頼むことにした。既にアーウェルの相談に乗り、様々な知識を授けていた鸞は快く引き受けてくれた。

 ただ、やはり少人数に教える方が良いと言った。

 そこで、双子とオージアスの三人がそれぞれの都合の合う日に教わることになった。


「そうだ、シェンシ。植物の採取に島に出かける時はベヘルツトが声を掛けてって言っていたよ」

 護衛を買って出てくれたのだと言うと、鸞はもちろんのこと、麒麟も喜んだ。

『それは有難いな。その生態環境をじかに見ることができる。吾は高い戦闘能力を有さないから、あまり強力な魔獣が生息する所へは行けなかったのだ』

『ベヘルツトは強いからねえ』

 麒麟は一角獣と性格は正反対と言えるが、同じ一角を持つ者として親しみを抱いているようだ。

「それに、とても仲間思いだね。ユエにもどんな素材が必要なのか聞いて、魔獣を狩ってくれているんだよ。そうだ。シェンシ、ユエが必要とする素材がどんな魔獣が持っているか、教えてあげてくれる?」

 快く頷いた鸞もまた、この館の幻獣への仲間意識が芽生えているようだった。



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