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天地無窮を、君たちと  作者: 天城幸
第五章
203/630

9.麒麟と鸞 ~家令の審査/危険が危ない!/ちびっこコロコロ/水は怖いの巻~

 

 いびつな楕円形が海の狭間に鎮座する。

 山も谷も森も野もある、豊かな島だ。

『な、何だあれは』

 途中休憩を挟み、数日飛び続けた。飛行しながらもついつい、疲労からうつらうつらしていた鸞が霞む意識の最中、妙なものを感じ取り、はっと覚醒する。

『とんでもない霊力を感じるねえ』

 鸞は律儀に麒麟の落下を防ぐために九尾の斜め後方を飛んでいた。海原の点として見えてきた島へ向かって前へ飛び出す。麒麟も長い首を差し伸べてよく見ようとする。

『あれがシアンちゃんの島ですよ。どこの国にも所属しない、シアンちゃんのものです』

『領土持ちになったのか』

 飛行速度を落とし、九尾の顔の横に並んだ鸞が驚く。

『魔族を救った礼として、闇の上位神たちから献上されたのです』

『なっ⁈』

 先ほどの比ではなく驚愕する。

『そこへ精霊王たちが集ったものだから、霊力の宝庫、豊かな島が更にとんでもないことになりそうです』

『うん、確かに離れていても心地良いよ』

 麒麟がうっとりと目を細める。

 その様子に、やはり連れて来て正解だったと鸞が安堵する。

『シアンちゃんは異界人であちらの生活がありますから、長時間こちらの世界には滞在しません。今もいると良いのですがねえ』

『家主に許可なく招待したのか?』

『麒麟が笛を吹くなど未だかつてなかったこと。相当な緊急事態だと思ったので、飛び出してきたのです』

 だから危機一髪、助かったのだ。

『いや、そのお陰で助かったのだな。改めて、礼を言う』

 九尾は真面目な鸞を嫌いでなかった。揶揄うと殊の外楽しい。


『きゅうちゃーん』

『おや、シアンちゃんはこちらに来ていたようですね』

 下から呼ばれてそちらを向けば、庭にいたらしきリムが見上げて前脚を左右に振っている。その傍らにはシアンとティオ、わんわん三兄弟の姿があり、やや離れた所にセバスチャンが控えている。

『ちょうど良い、全員集合しています。紹介する手間が一度で済みますね』

 九尾が巨大な鹿を背負っていることにシアンが驚いている様子で、麒麟が慌てて降りようとする。鸞が落ち着かせてようやく慎重に九尾の背から離れ、自分の力で飛行する。

 島が内包する力によって、自力飛行が可能になったことを、当の本人よりも鸞が喜んだ。

『そうそう、あちらの家令は元魔神で島の一切を取り仕切っています。彼に認められなければ、魔神といえどもこちらに来ることは許されないので、頑張ってくださいね』

『『えぇっ⁈』』


 爆弾を落とした九尾は単独でさっさとシアンたちの元へ降りて行った。

「お帰り、きゅうちゃん。危険が危ない、というのは大丈夫だったの?」

 危険が危ない、という意味の分からない一言を発して、九尾がおやつの皿を抱えたまま飛んで行った、とシアンはログインして早々に聞いた。風の精霊に九尾の様子を尋ね、近づいてきていると教わり、庭先に出て待っていたのだ。

『はい、何とか間に合いました』

 急を要すると考え、天帝宮を経由して急行した。麒麟と鸞を拾ってからこの島へやって来るまでが時間を要したのだ。

「英知がじきに島にやって来ると教えてくれたんだよ」

『ぼくも後を追って手伝った方が良いかなと思ったんだけれど』

『どうせ、狐の言うことだから大したことはないよ』

 リムの言葉をティオが素っ気なく封じる。

 セバスチャンもまた、シアンとリムが危険な目や厄介事に巻き込まれようものなら何としてでも阻止するだろう。

 あの家令ならば、やる。

 九尾はそう確信していた。


「ティオ、そんな風に言わないの。それより、きゅうちゃん、あちらの方は?」

『角がある方が麒麟で、鳥が鸞です。天帝宮から広い世界を見て来いと放り出されたのですが、彼らは瑞獣。覇権を握らんとした人の王らに追い回されて捕らえられようとしていたのです』

 自分たちのことに話が及び、麒麟と鸞がゆっくりと降りてくる。

『この世間知らずたちを、まずは下界に慣れるまで置いてやってください。こちらの島は人が殆ど住まず、彼らがのんびりするには打ってつけなのです』

「うん、もちろんだよ。リムの薬を煎じてくれたお礼もしたかったし、歓迎するよ。いつまでもいてくれていいからね。実は僕たちも住み始めたばかりなんだよ」

 穏やかに微笑むシアンに、麒麟はおっとりとした笑みを返し、鸞が礼儀正しく頭を下げる。

「僕はシアン、小さい子がリム、こちらがティオで、彼らはアインス、ウノ、エーク。みんな、幻獣だよ。あちらの彼がセバスチャンで館の管理をして貰っているんだ」

 セバスチャンが恭しく一礼する。

 麒麟と鸞だけでなく、九尾も胸をなでおろした。

 どうやら、滞在は叶うらしい。勝手に麒麟と鸞を連れてきた九尾もお咎めなしだ。


『我は麒麟だよ。きゅうちゃんからみんなの話はよく聞いていたんだ。宜しくね』

『世話になり申す。吾らはそこな九尾が言った通り、宮から殆ど出たことがなくてな。見るもの全てが目新しい。それ故に与しやすかろう』

『どんな所を見てきたの?』

 鸞の言葉を受けてリムが尋ねる。

 鸞が理路整然と、麒麟が感慨を籠めて、林立する岩でできた石柱や、三角錐の美しい山々の景色を語ると、リムがどんぐり眼を輝かせ、シアンと見てみたいね、と顔を見合わせる。

『探勝が好きなのか?』

「うん。僕は歩いて移動するしかないんだけれど、ティオの背に乗せて貰って、みんなであちこち行っているんだよ」

『地面からお湯の噴水が出て来たり、大きな滝やその裏側にある洞窟とかにも行ったんだよ!』

『あは、楽しそうだねえ』

 リムが目を輝かせて話すのを、麒麟がおっとりと笑いながら聞く。


『狐が連れてきたにしては上質な客だ』

 ほのぼのとした雰囲気を醸す麒麟に、ティオが重々しく頷く。

 リムが今まで見てきた景色をキュアキュアと一生懸命話し、シアンがそれを補足し、麒麟が楽しそうに相槌を打つ。

『九尾は何も言わずに連れてきたとか。急な来訪にも拘らず、受け入れて下さり、礼を申し上げる』

 力のある幻獣のティオに、鸞が真面目に言う。

『君たちのような幻獣ならば、大歓迎だよ』

 ティオが言うと、子犬姿の三匹の幻獣が鳴き始める。

『ご主人はお優しいゆえ!』

『殿は可愛い幻獣がお好きなのだ!』

『美味しいものを作って、美しい音楽を奏でられる!』

 わんわんわわわんわんわわん

 鸞が戸惑ってティオを見上げる。

『彼らはケルベロスが分裂した姿だよ』

『ケルベロス? 地獄の番犬と称される、あの?』

『ねえ、ティオ、麒麟と鸞に島の案内をしたいの! 綺麗な所がいっぱいあるから、みんなで見に行こう!』

 リムの弾んだ声に、鸞の困惑は一旦棚上げとなった。



 青い湖のほとりには目に鮮やかな夏野が広がり、向こう岸はなだらかに丘が横たわり、こんもりした緑陰の木々が点在し、時折群れを成す。

 横長の景色を、どこまでも続く空と長く伸びる雲が助長する。

 のんびりと歩きながら、天帝宮での暮らしや麒麟と鸞が興味を抱くことを聞き、逆にシアンたちの冒険を語った。

 穏やかでおっとりした麒麟の雰囲気は心地よく、真面目で律儀な鸞は好奇心旺盛なリムにあれこれと説明してくれる。

 シアンやリムだけでなく、ティオも麒麟と鸞が気に入った様子だ。わんわん三兄弟も丁寧に応対してくれることに嬉し気だ。

 青い湖にやってくると、銘々が横寝したり、座ったり、水に足をつけたりと楽しんだ。むせかえるような草の生気に満ちた青い香りがする。

 リムは早速向こう側の緑の斜面に行き、横ざまにころころと転がっていく。細長い体がどこまでも回転していく。

「はは」

 シアンははしゃぐリムを見ながらその場に座り込み、足を延ばす。

 美しい色彩と滑らかな輪郭の景色を眺める。ティオが傍らに横寝したので、彼にもたれてぼんやりする。

 わんわん三兄弟がリムに誘われて一緒に野を転がりまわる。

 黒、白、茶の幻獣が緑野を縦横無尽に転がりながら歓声を上げている。


『綺麗な場所だねえ』

『うむ、静かで良い所だ』

「うん。あまりにも美しすぎてぼうっと見入っちゃうね」

 麒麟と鸞も近寄って来る。

 麒麟は地面から少し浮いた状態だ。

『生きとし生けるものを踏みつけることのないよう、常に霊力を用いている』

 シアンの視線を読み取り、麒麟は慈悲の生き物なのだと鸞が答える。

「霊力?」

『魔力のことです。天帝宮ではそう呼ぶのですよ』

 九尾がやって来て説明してくれる。


 湖の向こう岸に移ったリムたちの姿が緑の絨毯の中に、目立つ白色として見える。

 なだらかな丘の斜面から、リムが転がり落ちる。その後をわんわん三兄弟も追う。

 転がっているうち、出っ張りがあったのか、リムの体がぽーんと投げ出される。

 ひやっとした。

「キュアー!」

 結構な勢いがついているのに心配したものの、実に楽しそうである。

 二度三度地面にバウンドして再び転がり出す。

 ひとしきり遊んで気が済んだのか、こちらへやって来る素振りを見せた。

 わんわん三兄弟は戻ってくるのに湖の水を怖がり、大回りしてくる。その様子を見るともなしに見ていると、同じく眺めていたティオがぼそりと呟く。

『水が怖いのなら、どうしてリムについていったんだ』

「楽しそうだったからかなあ」

 あのピクニックで川に流されてから、随分水を怖がるようになってしまった。

 湖を突っ切って真っ直ぐついてこないわんわん三兄弟に気づいたリムが、戻って一緒に湖を大きく回り込んでやって来る。


「ここは湖がいくつもあって、水深が深いものもあるんだって」

『ふむ、よくぞこのような恵まれた土地を見出したものだ』

「そうだよねえ。そんな場所を貰ってしまって良いのかなって思うんだけれど」

 鸞の言葉にシアンは小首を傾げる。

『いえいえ、シアンちゃんや幻獣たちのために厳選した場所と聞いていますよ。シアンちゃんたちが活用してこそ、魔神たちは喜ぶというもの』

『すごいねえ。魔族を救ったんだってねえ』

 麒麟が心から感心して言うのに、シアンは苦笑する。

「そんなことはないんだよ。魔族の皆さんには色々お世話になっているし、深遠のことも心配だったしね。……でもやっぱり、余計なことをしたかなあって思うんだ」

 ティオが長い首を寄せてくるのに、嘴の付け根付近を撫でる。大丈夫だよ、という気持ちが伝わったのか、機嫌よく喉を鳴らす。

『そんなこと……、シアンは彼らのことを思って言ったんでしょう?』

 麒麟が気づかわし気に見やる。

「うん、そうだけれど、当事者じゃない者がお願いされた訳でもないのに、口を挟むのはどうかなあって思うんだ」

『そうかもしれません』

 九尾が頷く。

 鸞が何か言いた気な様子を見せたが、結局口は開かなかった。麒麟は一層心配気におろおろと落ち着かなく首を動かす。

『でも、当事者だからこそ雁字搦めに捕らわれどうしようもなくなっていたのを、ほぐすことができたのかもしれません』

 途端に、麒麟が嬉し気に鼻を鳴らす。

『そうだよね』

『そうですよ。そして、それは、シアンちゃんにしかできないことでした』

「僕にしか? そんなことはないと思うけど」

 九尾の言葉にシアンは戸惑う。

『いいえ、闇の精霊王の加護を持ち、その心を預けられたシアンちゃんだからこそ、魔神たちに言葉が届いたのですよ。他の何ものが言っても、浸透しなかったでしょう。それこそ、無関心に捨て置かれるだけでしょう。シアンちゃんの闇の精霊王と魔族を思う気持ちが届いたのですよ』


『ぼくも、深遠大好き!』

 いつの間にか傍らに転がって戻ってきたリムが、ぱっと後ろ脚立ちし、ぴっと片前脚を上げる。

『敬愛する闇の君!』

『いとお優しい御方』

『慈悲遍き、時に冷酷な君』

 わんわん三兄弟もリムの後を追ってやって来る。こちらは随分息切れしている。

 葉の切れ端や砂にまみれているのを、柔らかく苦笑しながら、シアンは軽く払ってやる。

「汚れたからブラシをかけようか」

『ブラシ! ぼくも!』

 リムが弾んだ声を出すと、ティオが嘴でマジックバッグからブラシが入ったケースを取り出す。


「そうだ、麒麟と鸞もよければ、ブラシを頼もうか? 今度、ディーノさんという商人がまたここに来るってセバスチャンが言っていたんだ」

 貴族は自ら買い物に出かけず、商人が屋敷に商品を持ってやって来る。同じく、海に囲まれたこの島へ、ディーノは商品を携えてくる。ディーノはシアンに島を譲渡する前に転移陣登録を済ませてあったようだ。それは館が建つ前のことで、シアンに依頼されたブラシを持って来た際、館の荘厳さに驚いていた。

 麒麟は長い首を下げ、浮いたままで空を蹄で掻く素振りをして、意を決してシアンを見た。

『それは、動物や植物を殺めて作ったものなの?』

「うん? どうだろうね?」

『……麒麟は生物を殺めない』

 麒麟に変わって鸞が答えた。生物を殺してその素材を用いた道具も使用しないということなのだろう。

『えっ、ごはんは何を食べるの?』

 リムが驚いてどんぐり眼になる。

『枯れ草を食べるんですよ。だからほら、常に草は踏まないのです』

 九尾が指し示して見せる。

『ずっと浮いたままなの?』

『草が生えていない所には降りるよ』

 小首を傾げるリムに、麒麟が微笑む。

『しかし、地を這う虫は踏みつぶさない』

 鸞が補足する。

『そうなんだ! 感知能力が高いんだね!』

 確かに、地面で活動する虫を感知できるほど、その能力に長けているということだ。

『すごいねえ、麒麟!』

 リムが目を輝かせて言うのに、麒麟は面食らった。

『え、そ、そう?』

「本当だね」

 シアンとリムがうふふと笑い合うのに、麒麟もつられて笑う。


『リムは大事なことを間違わない、とシアンちゃんに教わったことがありますよ』

 ほのぼのとした三人を見やって緊張を解く鸞に、九尾がそっと伝える。

『うむ、まことに。ここに連れて来てくれた九尾には礼を言わねばならんな。ここはまさしく、自然も、景色も、人も獣も良い場所だ』

『そうでしょうとも。鸞にとっては学んだり研究したりと充実した場所でもあるでしょうしね』

『鸞は勉強しているの? 何の?』

 九尾の台詞を聞きつけて、リムが尋ねる。

『リム、こちらのらんらんがりんりんの角を使って薬を作ってくれたんですよ』

『らんらんが作ってくれた薬で体が痛くなくなったよ。ありがとう!』

 鸞はふざけた呼び方で呼ばう九尾に鋭い視線を送ったものの、流石に無邪気に礼を言うリムを咎める気にはなれない。

『らんらんは諸書に通じていますからね』

『しょしょ?』

 リムが小首を傾げる。

『色々なことに詳しいということですよ』

『わあ、英知みたいだね! 英知もね、色んなことを教えてくれるんだよ』

 明るい笑顔を浮かべるリムに、鸞も釣られて笑う。

『そうか、良い師がいるのだな』

『うん! 食べられる植物とか毒をもつ植物を教えて貰っているんだよ。シアンは薬になるのを教えて貰っているの』

 なるほど、実用的なことを教わっているのかと鸞が頷く。

『毒を持つ植物は薬にもなるゆえ』

『そうなの? でも、毒の胞子を持つキノコはダメだよ!』

 きゅっとリムのへの字口が急角度になる。

『だって、ぼくの体についた時、英知がシアンの肩に乗っちゃダメって言っていたし、近寄ってもダメだって言っていたもの!』

 精霊の加護を持つリムには支障はなくとも、人の身であるシアンにとっては苦痛をもたらすものだったのだろう。

『それは、まあ、人であるシアンにしてみれば、病を得ることになりかねん』

 そうは言ったものの、しょげるリムの様子に鸞は慰める風に言う。

『その英知殿ももう少し言い様を考えて下さればよいものを』

『ううん、シアンがどこか痛くしたら大変だもの! 英知はシアンのために言っていたんだよ! それに、英知がすぐに体に付いた胞子を取ってくれたんだよ』

『そうなの? リムの毛の中に入った胞子を取り除いてくれたなんて、すごいんだねえ』

 麒麟も感心する。

 確かに、見事な手腕である。魔力操作に長け、知識豊富な相手に鸞が興味を抱く。

『その英知殿というのはどんな方なのだ? もし叶うものであれば、吾も教わりたいものだな』

 数多の書に通じその智慧並ぶ者ないと称される鸞はだが、謙虚で知識を蓄えるのに貪欲だった。

『英知はね、風の精霊王なの!』

 鳩が豆鉄砲を食うならぬ、鸞が豆を喉に詰まらせたような表情になった。

 一連の流れをわくわくと眺めていた九尾が期待違わぬ結末に、口元を両前足で抑えてきゅぷっ、と妙な音を立てている。

『英知! らんらんも色々教えてほしいって!』

 リムが中空で四肢を踏ん張って、顔を上げて訴えかけた。

『いえいえいえ、滅相もございません!』

 まさか知性を司る風の精霊の中でも万物を知ると言われる存在だとは思わなかった。実際会って話してみて、リムが嘘をつくとは思えなかったし、当の本人も精霊の加護を得ていると聞いている。

『そうなの?』

 慌てて止める鸞に、リムが不思議そうな顔つきになる。

『きゅっきゅっきゅ、らんらんは知性を司る風の属性。その最上位存在は畏れ多いのですよ』

『リム様はその、風の精霊王に師事されておられるのですね。ですが、リム様は光の精霊王と闇の精霊王の加護をお持ちなのでは?』

 鸞は言葉遣いまでも変わっている。

『うん、そうだよ。でもね、シアンが英知から加護を貰っているから、ぼくにも色々教えてくれるんだよ。ね、英知!』

 虚空を見上げて同意を求めるリムに、鸞は震え上がった。

 もしや、近くに風の精霊王が坐すのか。そして、シアンは万物を見通し、何物にも捉われないとされている風の精霊王の加護を持っているのか、と。

 そんな彼らの様子を九尾が愉悦を持って眺めていた。



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