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天地無窮を、君たちと  作者: 天城幸
第四章
161/630

16.飢えは人を獣闇に落とす ~顔おしくらまんじゅう~

 


 街道からほど近い村は行商人が訪れることも多く、踏み固められた地面が草地の中を通路として機能していた。家畜小屋から抜け出した羊や鶏が闊歩して草を食んでいる。のんびりした動作はだが、ティオが間近を通ると、ぎょっと身体を竦めたり、固まったりしている。鶏は目ざとく素早く逃げ去っている。

 村人からはグリフォンを連れていてもあからさまに怯えられなかったのは、やはりロランの先導があったからだ。


「聖教司様、聖教司様!」

 ロランの姿を見つけて駆け寄ってきた農夫が、娘がぜんそくの症状がでるのだ、と服の裾をいじりながら懸命に訴える。日に焼けた赤ら顔で、爪の先には土が馴染んでいる。

「確か、貴方の娘さんは漆に敏感だったと言っていたね」

 顎に手をやりながら、ロランが思案する。

「へえ、そうです。よく覚えて下すって」

 自分が話したことを覚えていてくれたのが嬉しかったのか、心配に顔を曇らせていた表情を少しばかり綻ばせる。


「他に目の炎症などの症状は出ていないかい?」

「ああ、あります、あります!」

「そう。じゃあ、症状をよく診てみないことにははっきりしたことは言えないが、恐らく、家の近くに植えられている木が原因だろう」

「木が?」

 ロランの言葉に怪訝そうな表情になる。

「そう。コショウボクと言ってね。これは漆の近縁種で、樹脂は揮発、空気に紛れ込んで飛び散りやすいんだ。これを吸い込んだり目の中に入ったりすると、漆にかぶれた風になるんだよ」

「そうなんですね!」

「すぐに診に行くから、家で待っておいで。窓や扉は閉めておくといい」

 自分よりも幾つか年上の若い農夫の肩を叩きながら、ロランが爽やかに笑う。

「ありがとうございます!」

 娘の症状に気を揉んでいたのだろう。原因が判明して農夫は顔をくしゃくしゃにして礼を言って、走っていく。


「お見事ですね」

 庶民にとって体は資本だ。その体が害せば不安になる。そして、原因が分からない体の不調は更に不安を加速させる。まずは原因を突き止め、対応を話してやれば気持ちは落ち着く。丁度今しがたの農夫のように。

「こういったことは往々にしてあるのですよ。正しい知識を持つものが伝授してより良くしていく。それが聖教司としての務めだと私は思います」

「素晴らしいですね」

 実に立派な考えだ。

「いえ、普通のことなんですよ。知っていることを役立たせてもらう、というだけなんです」

 シアンが重ねて称賛すると、淡々と自分の役目なのだと言ったロランが頬を染める。村人には毅然とした態度で説明したのに、純朴な反応を見せるロランに、他から擁護の声が上がる。


「そんなことあるもんかい! 旅人さん、あんた、噂の翼の冒険者だろう? ここではね、ロラン様こそが英雄なんだよ!」

 ロランの姿を見つけて近寄ってきた村人が言う。

 年配の小柄な女性が語る所、ロランがこの村にやって来た際、ちょうど子供が春先に咲く良い香りの花の球根を、玉ねぎと取り違えて食べて嘔吐したところに出くわした。

「その時の処置の見事さと言ったら!」

「シアンさんも気を付けてください。嘔吐や呼吸障害を起こした例もあります」

 興奮して語る農民に苦笑しながら、ロランが料理人だと話したシアンを気遣う。

『果実は鮮やかな色で、子供が二、三個食べると死に至ると言われているものだね。全草に毒がある。命を取り留めても、喉の炎症や内出血に苦しむこともある』

 風の精霊が詳細を説明してくれる。

「他の春に咲く花の球根が玉ねぎと間違われることがままあります。呼吸障害などを起こすこともありますので、十分注意してくださいね」

「ありがとうございます」

 その後、ロランは村長に掛け合ってくれ、シアンは二、三日村の空き家を使わせてもらえることになった。



「えっ、そうなんですか?」

「そうさあ、あんた、そんな、年がら年中収穫できる地は限られているよ!」

「冬は気候柄、農業には適していないとは思っていましたが」

「冬以外の春夏秋と三節を通して安定して農作物を得ることができるなんて、それこそ、大地の精霊に愛されている証さね」

 シアンは村で唯一の酒場に来ていた。夕方の短いひとときを寛ぐ村人たちで賑わっている。

 相席となった村人にこの村の特徴や特産物、郷土料理を質問していた最中のことだ。

「知り合いの農家の方が、常時安定して農作物を作っておられたので」

「ほう、そりゃあ、大したもんだな!」

 カラムとニーナ、クレールたちのことである。

『シアン、悪口言われているの?』

 大丈夫?という風にリムが小首を傾げて心配そうにシアンの顔を覗き込む。肩の上で仕草は柔らかい毛が当たってくすぐったい。

 大きな声で複数の村人から色んな言葉を掛けられたのを、シアンが責められたのではないかと心配したのだ。

 大丈夫だよ、という気持ちを込めてリムの頬や首を撫でる。への字口が横に伸びる。

「キュア……」

「おうおう、可愛いのう」

「鳴き声も、可愛らしいねえ。もーう、おばちゃんね、可愛らしすぎてね、困っちゃう!」


「うちの村でも畑の名人と言われる人がいるにはいたが、なあ」

「まあ、出る杭は打たれるっちゅうか」

「悪い奴じゃあなかったのよ?」

「でもなあ。わしらはほれ、共同作業が多いじゃろう?」

 要するに、嫉妬により村八分にされて畜産に転向したのだそうだ。

 この長閑な村にもやはりパワーバランスがあるのだな、とシアンは考えた。

「そういえば、先日、お祭りがあったそうですね。踊ったり歌ったり、盛大にされたとか。他にも、お面をかぶったりするお祭りもあるそうですね」

「おお、よく知っているな!」

 感心の声に猜疑が混じったのを読み取り、シアンはすかさず付け加える。

「この村に導いてくださったロランさんが話してくれたんです」

「聖教司様が」

「そういやあ、聖教司様はちょうど五月祭りの頃に来なさったなあ」

「村の広場の真ん中に柱を立てて、それをリボンや鈴で飾るんだ」

 若木の枝や花を手にし、着飾った若者たちが音楽に導かれて通りを練り歩き、広場に到着した後、村長の有難い話がある。その後、広場中央の五月柱を中心に円を描いて踊るのだそうだ。春の訪れ、五月を賛歌する祭りだ。


「お面をかぶるのは夏至祭りの方だな」

「そうそう。色んな動物のお面をかぶるんだ」

「その時も歌や踊りもあるんですか?」

「そうさあ!」

『わあ、見てみたいね!』

 リムが肩の上で後ろ足で屈伸し尾を振るので、くすぐったくて仕方がない。

「お、チビは祭りが気になるのか?」

「はい、そうなんです」

 リムの様子に村人たちが微笑ましそうにする。

「じゃあ、六月下旬ごろに行う夏至祭りの頃にまたおいでよ」

 幻獣が自分たちの祭りに興味を持ち、楽しみにしている様子に気を良くし、色々話してくれた。


「なあ、あんた、翼の冒険者なんていうすごい噂のお人だがよ、ちょっとの間、話しただけでも良い人だってことがわかる。だから言うんだけれどさ」

 顔を赤らめ、木をくりぬいて作ったカップをぐい、と煽った村人が熟柿くさい息を吐きながら言う。目が据わっている。

「この村は丘のふもとにあるだろう?」

 シアンを取り囲むようにしてテーブルについた村人たちが息をのんだ。こちらの会話が聞こえていない周囲では相変わらずの賑やかさで、対照的である。

「はい、そうですね」

 街道近くにあるこの村は小高い丘の麓にあり、すぐ傍に森が広がっている。ティオの背にのって上空から見下したら、濃い緑の海に黄緑色の岩がぽっかり頭を出しているような風情であった。


「悪いことは言わねえ。中腹にある上の村には近づかない方がええ」

「おい、おまえ……」

「あんた、何もこんな所で言うことはないよ」

 つい先ほどまで威勢よく、または笑い声交じりで話していた村人たちの勢いが萎む。

「いんや、翼の冒険者さんたちは夏至祭りの日にまた来てくれるって言っているんだ。こういうことはしっかり話しておかないとな」

 丘の中腹の村というのはどんな所か、何故近づかない方が良いのか、聞いてみたい気持ちはある。しかし、話す男も明らかに酒の勢いを借りているし、周囲の二の足を踏む様子に言及しない方が良いだろうと判断した。触れてほしくない場所に無神経に接触すれば、手痛い反撃を食う。


 シアンは翌日、羊たちの毛刈りを行う村を眺めた。

 もうもうと羊毛の軽い切れ端が舞い上がり、辺りを白に染めている。慣れた作業で手を動かしながら口も動き、時折、どっと笑い声が上がる。

 羊を一匹ずつ柵の中へ追い込み、大きなはさみで躊躇なく毛を刈り取る。見事なはさみ使いで、尻尾の毛まで刈っている。丸裸になった羊は洗い場へ連れていかれて洗われている。


「賑やかでしょう。羊毛刈りはこの季節の風物詩だそうですよ」

 シアンが幻獣たちと羊毛刈りを道なりに沿った柵にもたれて眺めていると、ロランがやって来た。

 明け方に咳が止まらなくなった患者の家族に呼び出されて、朝から往診に出かけた帰りだという。ロランもまるで羊と戯れる賑やかな一幕を見つめた。その視線に少し憧憬が混じっている風に思えたのは気のせいだろうか。

「春先の新鮮な牧草を食べている牛たちも乳の出が良くて、これからバターやチーズといった加工品作りも忙しくなります」

 牛がかかる病気などもあり、ロランは専門ではないがちょっとしたことくらいなら具合を見ることもあるのだそうだ。

「家畜は村の財産ですからね。病を得れば大打撃です」

 だから、自然と処方を覚えたのだという。


「ロランさんは本当にすごいですね」

「シアンさんも薬師でもないのに、薬草を集めておられるでしょう?」

 シアンよりも身長の高い整った顔を見上げる。ロランは何てことない、という風な今の晴れ渡った空のような笑顔を浮かべる。

「僕は単に親しくしている人が怪我をした時に少しでも役に立てたら、と思っただけですよ」

 ロランのように見ず知らずの人間の暮らす所へ行って役に立とうとしているのではない。幻獣のしもべ団など、自分の手助けをすることに危険を伴うのであれば、少しでも軽減したかっただけだ。


「私は風の属性に適性があったので、貴光教では地位を確立することはできないでしょう。こうやって諸国を歩きながら、人々の暮らしの手助けをすることができるのが嬉しいのです。私が生まれ育った村にふらりと貴光教の聖教司がやって来たことがありましてね。家の働き頭だった父がずっと病み寝付いていたものだから、私の家は物心ついた時からその日の食事に困るほどに貧乏だったのです。もうお察しでしょうが、貴光教の聖教司が煎じてくれた薬のお陰で父は回復しました」

 しかも、その薬に用いられる草は村の近くで採れるものであり、聖教司は煎じ方も教えてくれたのだという。

 ロランやその家族、そして村人たちは知らなかった。知れば事態は改善される。

 貴光教の聖教司の研鑽が家族を、自分を救ったのだと言った。


「飢えは人の尊厳を奪います。動物から人へと戻してくれた聖教司には感謝しかありません」

 村の外で食べられる植物を採取するのも、共同体の一員であれば管理されている。

 シアンはエディス近隣の村で緑色のジャガイモを食べて横たわっていた子供を思い出した。あれは多分、村の貯蔵庫からこっそり持ち出したものだろう。それも、悪くなったものをこっそり食べようとしたのだ。飢えで弱った体はソラニン中毒に耐えることができなかった。


「犯罪が起きるのはその人が悪いからだけではなりません。貧すれば鈍する。生物として飢餓は正常な思考能力を奪うのです」

 それまで、シアンはそんな生死を分かつほどの飢えを感じたことはない。この世界へ来て、そういった状況に陥る者たちを目の当たりにしてきた。だから、大切な存在がそういった状況に陥ることを想像せずにはいられなかった。


「少しわかる気がします」

 おや、とロランは形の良い眉を跳ね上げる。

「失礼ながら、シアンさんは困窮したことがおありだとは思えませんが」

「はい。ただ、僕がいない間、幻獣たちが飢えていたら、と想像したことがあります。彼らは力ある存在です。そんな彼らに僕は人間と対立してほしくないと伝えています。でも、もし、飢えたり不当に攻撃されたりしたら、と思うと……。彼らは知性も理性も高い動物です。力のまま壊すのではなく、他者との共存を良いものなのだと感じる心もあります。でもそれは生物としてはまず真っ先に生存本能が勝つでしょう?」

「なるほど。生死にかかわることであれば、幻獣が力を発揮する。その前では力なき存在は呆気ないものでしょう」

 幻獣たちが美味しいとせっせと食べる姿は気持ちを和ませる。そんな彼らが飢えるところを想像しただけで胸が押しつぶされそうになる。その気持ちと、可能であれば彼らには人間と敵対してほしくないという気持ちが、状況によっては成立しないという現実に苛まれる。

 自分は飢えることがないのに彼らには要求するのか。力があり、そんな状況を甘受する必要が本来ない彼らに要求すべきではない、という考えを拭い去ることができないでいる。


「しかし、素晴らしいですね。それほど力ある存在の幻獣たちに人の世の理を説き、ある程度ルールを守らせることができるなんて」

「すごいのは幻獣たちなんですよ。力があることと、色んな特技があることは別物なのだと理解しているんです。例えば、僕は戦闘はからきしですが、料理ができるので」

 そして味覚すら発達している幻獣たちは、生存のためだけでなく嗜好としても食事を楽しむことを知り、美味い料理を振舞ってくれる存在には一目置くようになった。

「ああ、分かりやすいですね。幻獣たちは高い戦闘能力を誇っても多様な料理をすることはできない」

 ロランが大きく頷くと、顔を覆う金色の髪をそよぎ、日に透けて輝く。

 リムや九尾は器用で料理もできるが、それは黙っておくことにする。

「ロランさんはそうやって自分が受けた恩を返しながら、村人たちの生活を支えているのですね」

「獣闇に光を教え、人の知性を取り戻す。それが私の役割なんだと思います」

 胸を張って答える笑顔には欠片も曇りはなかった。


 ロランが去って行った後、視線を感じてそちらを見やれば、九尾にじっと見上げていた。

「何かな?」

 周囲に人がいないのを良いことに小さく声を掛ける。

『シアンちゃんの顔は緩衝地帯でしたよね』

 肩縄張りから派生したシアンの身体領域侵犯のことだ。

 苦笑するシアンに、九尾が柵の上によじ登り、顔を近づける。

 シアンの額に、自分の額をくっつける。

『イケメン仕草です!』

 すぐに離れた九尾は、『でここっつん? デコツン? デコデコ?』などと訳の分からないことをぶつぶつ呟いている。


 また視線を感じたのでそちらを見やると、ティオとリムがじっと見つめている。ティオの丸い頭の上にリムの小さい顔が見えている。

「ティオ、リム? どうかした?」

 起用にティオの首の上で後ろ脚立ちし、細長い体の胸元で両前足を合わせて、リムがもじもじする。

『んー、シアンの顔はぼくのじゃないけど』

「はは、さっきの? リムもやってみる?」

 ぱっと顔を輝かせて飛んでくる。

 差し出すシアンの手に収まり、そのまま額と額を合わせる。すると、ティオも近寄ってきて、シアンとリムの頬に自分の頬をくっつける。力加減をしつつ、ティオが顔をぐりぐりとこすり付けてくる。

 ぎゅうぎゅうと三人で顔を押し付け合っていると、なんだか腹の底から笑いがこみあげてくる。

 笑ううちに、いつの間にか、頭をもたげた澱が鎮静されていた。

『おう、可愛いものですなあ。幻獣のしもべ団などには夢のような眩い光景です。まさしく、ここにユートピア有り! 桃源郷! 理想郷!』

 なお、ティオが参戦したことから、「顔おしくらまんじゅう」という命名が九尾によってなされた。

 九尾もたまにリムに『顔おしくらまんじゅうしよう!』と参加させられることとなった。

『シアンちゃんプラスもふもふ限定顔おしくらまんじゅう』

 冬にはよく行われたと言う。



 一旦一番近くの街の神殿に赴いて雑事を済ませたらまた村に戻ってくると言うロランと別れ、村を出発した。

『どうかしたんですか?』

「うん、ロランさん、何か気になることがある様子だったなあと思って」

 ティオの背の上で九尾に尋ねられて正直に答える。

『あの御仁、大した人物でしたなあ。きゅうちゃん、貴光教の聖教司への見方が変わりました』

 シアンも頷く。

『風の精霊が近くについていたね』

「そうだったんだ? どんな風だった?」

 ティオの言葉にシアンは興味津々で尋ねる。

『おや、シアンちゃんは感知しなかったのですか?』

「うん、やっぱり、向こうも大っぴらにしていないのに、って思って」

 気が引けて、感知能力を使うことはしなかった。

『風の精霊は小さな人型をしていたよ。シアンの掌に乗るくらいの大きさだった』

『ちょっと緑色をした透明だった!』

 ティオとリムが口々に説明してくれる。恐らく、うっすら緑がかかった半透明の小人のような感じだったのだろう。

『あの御仁に色々教えていましたよ。ほら、喘息が酷いと言っていた農夫がやって来た時とかに』

「そのお陰で、彼の娘さんは症状が軽くなるかもしれない。流石は風の精霊だね」

『シアンちゃんの超高性能ナビシステムには遠く及ばないでしょうがねえ』

「英知は本当に色んなことを知っているし、必要に応じて説明してくれるからねえ」

 九尾の称賛にシアンもしみじみ頷く。


『シアン、お祭りに行くんだよね?』

「うん、お祭りがある頃にまた行こうね。その時に色んなお面をかぶっているのを見られるよ」

『わあ! ティオ、お祭りだって!』

 嬉しさのあまり、リムはシアンの肩から飛び出して、ティオの顔の近くで並走する。

 ティオが良かったね、という風に喉を鳴らす。

 ティオの賛同を得ることができたことが嬉しい気持ちを後押しする。リムは錐もみするように旋回したり、ティオの下や上を飛んだりとアクロバティックな動きを見せた。

 楽しそうな様子に触発され、シアンはマジックバッグからバイオリンを取り出して奏でた。リムが目を輝かせて旋律に合わせて歌いだす。ティオも翼の羽ばたきで合いの手を入れる。九尾が律動に合わせて頭を左右に振る。

 見上げれば、翼の隙間から光の筋がうっすらと降り、妙なる調べがあえかに届く。

 いつしか、翼の冒険者にそんな言い伝えができた。



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