11.精霊の名付け
急峻に切り立つ岩山の途中から緑が続き、やがて野の斜面に変わり、勾配を緩やかにするためかぐねぐねと曲がりくねった道が続いている。所在なげに孤立する木々の間を縫って麓まで続いている。鮮やかな緑色に灰色の道、濃い緑影の木、茶色の岩肌、それらが傾きかけた日の黄金色の日差しに染まっていて、上空から長時間眺めていても飽きない。
「凄いなあ。いい眺めだね」
『そう?』
大したことがなさそうに言うティオの首の付け根を優しく叩く。
「ティオのお陰だね。上空から見るとこんな風に見えるんだね。僕もティオが見ている風景を見れて嬉しいよ」
『どこまでもぐーんとひろがっていくね。ころころってしたらたのしそう!』
リムがシアンの肩から身を乗り出す。今しも飛び立って、斜面を転がりそうな勢いだ。
『はは。転がるのは今度にしようね』
そっと小さな頭を撫でると、気持ちよさそうに目を細める。
ティオは切り立った岩山を易々と超えた。吹きすさぶ向かい風に、シアンは前傾姿勢で目を細めながら、ティオの背で踏ん張った。突風に煽られて体勢を崩して転がり落ちでもしたら、まさしく死へ真っ逆さまだ。大地の精霊の加護を受けたとはいえ、まだ高高度を飛ぶティオの背に乗るのは危なっかしい。
山々の続く中、ひときわ高い箇所、むき出しの岩肌に緑が張り付いた絶壁がある。そこに白い筋が見える。滝の半ばから下は折り重なる山裾に隠れている。
近づいて見上げると、落ちる水の下半分ほどが中空で辺りにたゆたい空気に溶けている。水量の少ない季節には虹がかからないと言われる所以だ。ここが満月の夜に虹がかかる滝で、シアンは大雨が降った後の水量が増えた日を選んでやってきた。
広く周囲に撒かれる豊かな水が多くの植物を育み、木々が生い茂り、滝を見えにくくしている。
中に入り込むと岩肌のせいか、滝つぼ周辺はぽっかり空間ができている。
こちらの世界で初めて夜を迎え、その場所がいかにも冒険心をくすぐる光景であるのに、高揚感が湧き出た。
現地調達でティオが狩った動物の皮を剥ぎ、血抜きをし、骨から肉を外し、内臓と分ける。
肉の焼き具合はそれぞれの気分によって変える。今日はよく火を通すことを所望された。
大きめのフライパンを火にかけ、油を引いて塩コショウした分厚い肉の塊の表裏や側面を焼く。出てきた油を取り除き、香草を散らし水を加えて蓋をして蒸し焼きにする。弱火でじっくり焼く。肉を取り出し、柑橘系の果汁を軽く絞りかけ、表面の粗熱を取ったら完成だ。
現実世界ではこれほど連日肉を食べることはないが、ゲームの世界ではSPを補充する必要がある上、狩りで得られるのは肉なので勢い肉食が主体となる。システム的にもそれを考慮しているのか、それとも、そこまで現実に即した変調はないのか、胃もたれすることもない。
同じ味ばかりだと飽きる。早くスキルレベルを上げて調味料を増やし、味の幅を広げたいところだ
今回の分厚い肉は食べ応えがあるとティオに好評だった。
九尾曰く、古来より上位存在には食事と音楽を捧げる。
闇の精霊の食事を前にリュートを奏でながら、願わくば、リムの心に平穏が訪れますように、生まれた時のショックが癒されるようにと祈る。
シアンはリムの精神が最近不安定なのは、親から引き離され、卵の中にいたとはいえ、巨大トカゲに食べられそうになっていたことに起因するのではないかと思っていた。リムからしてみれば、親にも等しいシアンと離れる可能性に恐怖を感じた。だから、シアンが眠る前にまた戻ってくるかと不安になったのだ。
澄んだリュートの銀の音色が夜空に溶けていく。
姿を現した満月の光に、滝に虹がかかる。幻想的な風景に見とれる。
リュートの音が虹にまで届き、光がはじけて空中に色とりどりの砂つぶのような火花が飛び散る。
満月の下、初めて過ごす異世界の夜、吸い込まれそうな闇に、無心に曲を奏でた。
一曲弾き終えた時、ティオとリムが揃って同じ方向を見つめているのに気づいた。釣られて顔を向けると、濃い闇色が動くのが視界の端に映った。
星と満月の他、焚火と携帯ランプの灯りの中、一抱えもある闇色の何かが、こっそりこちらを覗いているように見えた。
ティオもリムも警戒していない。
しばらく見つめているとのそのそと岩を伝って近寄ってくるそれを静かに抱き上げた。
「わあ、ぷにぷにしている。それに冷たくて気持ちいい」
弾力性のある楕円形の黒い体が戸惑っているように見えてシアンは小首を傾げる。
「あ、もしかして君も知性があるのかな。ごめんね、勝手に抱き上げて。今、下すね」
静かに地面に下すとゆるやかに撫でる。
「ふふ、おとなしいんだね。嫌だったら言ってね、って喋れないかな」
『喋れるよ』
声が脳裏に届く。
「喋れるんだ。ごめんね、勝手に触って」
慌てて手を引っ込めるのに、大丈夫、と返ってくる。
幻獣の声が聞こえ、精霊が実在する世界だ。妙な生き物でも知性をもっていれば魔法の手助けなどで意思疎通ができるのだとシアンはすんなり受け入れた。ゲームに詳しくなく、立て続けにイレギュラーに遭遇しているせいで他のプレイヤーであれば困惑するところを、すんなり受け止める。
「君はこの辺りに住んでいるの?」
『たまに来る。綺麗な音がしたから気になって』
おずおずと躊躇いがちではあるが、きちんと返事がある。小さい銀の粒がはじけ合うような澄んだ声の持ち主を、なんとなくシアンは信用する気持ちになっていた。
「そう、うるさくしたんじゃなければいいけど」
『ううん、前にも聞いた歌が聞こえたからもっと近くで聞いてみたくなって。大地の精霊の加護を得た存在が、私と光の精霊に、自分ではない他の存在の安寧を願ったのに興味を持っていた。そしてまた、今度はすぐ近くまできてその存在の心の安定を願っていた。妙なる調べに乗せられた願いは、鮮烈に届いたよ。それに、この黒い体が気持ち悪いと言われるのに、君は平気なの?』
音量は少ないながらも、懸命に意思を伝えようとするのに、シアンも釣られて自分が感じたことを言葉に紡ぐ。
「うん、手触りがよくてひんやりしていて、逆にもうちょっと撫でていたかったな。それに、君は気持ち悪くないよ。よく見ると黒にちかちか光が点滅していて、まるで夜空のようだよ。綺麗だね」
『そんな、私は――』
『前から俺も言っているだろう、君は真実見目麗しいのだと』
声がしたかと思うと、満月が強く輝き、一筋の光を地面に落とした。
それはすぐ近くに着地し、辺りを眩い光で満たした。
思わず目を瞑るとまた同じ声がする。
『うん? すまん。調整しよう』
光が落ち着いたのが瞼を通しても分かる。
目を開けると、そこには眩い美貌の男性が立っていた。二十台半ばのしなやかな筋肉のついた体は高身長で、金色の長く波打つ髪、太めの眉に通った鼻筋、華やかな相貌をしている。銀色の瞳が異様で人でないことはすぐにわかった。さらには体全体がうっすら黄金の光をまとっている。
襟のついたシャツにズボン、ベルトにブーツと何の変哲もない格好ではあるものの、精緻な刺繍が施されている。
「あなたは光の精霊?」
『そうだ。よくわかったな』
「では、君は闇の精霊だね?」
黒い物体に視線を移す。
『うん』
精霊に会う目的を果たすことができた。シアンは人の価値観とは違う存在に緊張しながらも挨拶をする。
「僕は冒険者のシアン。大きい方がティオで小さい方はリムと言います。お二方にはリムの生まれた時に助力をいただいたお礼を言いたくてやって来ました。お会いできて光栄です」
『リムだよ! シアンがつけてくれたの』
リムが物怖じせず精霊たちに挨拶する。名前を気に入っているようで顔いっぱいの笑顔を浮かべて胸を張っている。
『おお、いい仔だな』
豪奢な金髪が性質のものを現しているようで、明るい笑顔でリムを豪快に撫でる。体格差から少し心配になったが、リムは撫でられた頭をふるふると二度三度振って元気にひと声鳴いた。差し出された光の精霊の腕に乗ってご満悦だ。
『いい名前だね。いいなあ、ドラゴンのリムか』
闇の精霊が褒めるのに、リムがうれし気に鳴く。
ファンタジーのドラゴンらしからぬ姿のリムの正体も一目で分かった。
シアンが名付けた名前を気に入ってくれて嬉しいが、リムがとんでもないことを言いだした。
『じゃあ、闇の精霊もシアンになまえをつけてもらう!』
「えっ……」
『だって、闇の精霊ってよびかけにくいんだもの』
流石に九尾とフラッシュに散々説明された為、精霊が高位存在であることは理解した。そんな存在に名付けなどして果たして良いものなのか。
躊躇するシアンに、闇の精霊はどこか寂し気な声で遠慮する。
『そんな、悪いよ。名づけして貰うなんて。君が可愛いからこそ、名前を付けてくれたんだよ』
『あー、そこの人間、シアンと言ったか。こいつは自己評価が低い上に臆病なんだが、お前には興味を持ったんだ。お前もこいつのことを気に入ったみたいだし、なんでもいい、簡単なものでいいから、名前をつけてやってくれ』
見た目通り、豪儀で懐の深い精霊にシアンは困った。
「簡単な何でもいいものと言われても」
ティオもリムも直感で名付けたが、果たして九尾とフラッシュが力説した滅多に遭遇しない精霊にそんなものを渡しても良いものか。
しばし、黒い楕円形の内部で宝石の欠片が瞬く小宇宙、精神が吸い込まれそうな姿を見つめていると、ふと言葉が浮かんだ。
「深遠。深遠というのはどうかな?」
『深遠。奥深くて容易に理解が及ばないこと、計り知れないこと、か。おお、言い得ているな!』
光の精霊が破願する。闇の精霊本人も体を揺らしているのが嬉し気に見える。
『じゃあ、次、俺な!』
ちゃっかり便乗する光の精霊に再びシアンは悩んだ。
「ええと、じゃあ、稀輝、はどうでしょうか」
『稀なる輝きで、きき、か。いいな!』
『綺麗だね』
破顔すると体が纏う黄金の輝きが増す光の精霊に、闇の精霊も同意した。
『お、深遠も気に入ったみたいだし、決まりだな』
「お二人は仲がいいんですね」
『この姿の時はな』
「別の姿になる時もあるんですか?」
シアンが問うと、ふ、と光の精霊の姿がゆがんだ。蜃気楼のように表面がゆらゆらした後、ぐにゃりと大きく体の中央が捻じ曲がる。かと思うと、別人が立っていた。シアンよりも指五本くらい低い身長で、銀色のまっすぐな長い髪、肌の白さは変わらないが、透明感が増し、高いが小ぶりの鼻、細い眉に切れ長の瞳は金色で薄い唇、硬質で繊細な美しさを持つ存在だった。先ほどとは違い、うっすらと銀色の輝きをまとっている。
『僕はこうだな』
「随分変わりましたね」
『闇のはもっと変わる。今は人型でさえないから。ああ、深遠だった』
『あ、私は』
黒い塊がもじもじする。身じろぎするたびに小さなきらめきがまたたいて、こっそりシアンは見とれていた。
『えっと、あの、気持ち悪いかもしれないし、怖いかもしれないから』
「えっ、怖いの? 蛇とか鰐とかそんな形?」
『人型だよ』
シアンに応えたのは光の精霊だ。
「そうでした。じゃあ、物凄く体が大きいとか?」
『えっと、あの、あの』
『じれったい。なってみれば』
銀色の方の光の精霊は気が短いらしい。
すう、と周囲の闇が精霊に吸い込まれるような錯覚に陥った。闇の精霊はふるふると体を震わせ、宿っていた光が消えたことから、そう思えたようだ。
なめらかな動きで黒い体が縦に長く伸び、ゆるゆると人型を取る。
おうとつができ、墨汁から引き揚げられたかのように、白い肌が現れる。
高くもなく低くもなく通った鼻筋、太くもなく細くもない黒い眉、切れ長の瞳は黒に近い紫色で、薄い唇、何より、闇色が凝縮された波打つ長い髪をしていた。服は黒いたっぷりした貫頭衣で足元まで覆っている。力なく下がった眉尻や櫛目が通っていない髪が顔の半ばを隠し、だぼついた服装と相まって、気弱そうな雰囲気が醸されている。
『こ、怖くない?』
「ううん、全然」
『ぼくは怖い』
それまで黙っていたティオの不意の発言は意外なものだった。
「あれティオ、そうなの?」
『うん、すごい魔力を感じる。地面に突っ伏してやり過ごしたい』
いつもの凛々しい眼差しがどこか気弱だ。先ほどの黒い塊の方とは感じる何かが違うのか。
『少し抑えるね』
シアンでは感じ取れない何かをティオは感じているようだ。そして、精霊は加減してくれるそうで、非常に友好的でありがたいことだ。
『僕はこの姿の時、深遠がもう一つの人型になったのとは相性が悪い』
銀色の光の精霊は一人称も声質も変われば性格も変化した。先ほどは明るく人懐こかったのに、今は素っ気ない。闇の精霊ももう一つの人型になった時には性格が変わるのだろう。
「精霊ってみんな姿を変えられるんですか?」
何とはなしに、光の精霊には丁寧に話し方になるシアンに、敬語でなくてよいと断られる。
『そうでもない。でも、動物もそっちの仔みたいに力があるなら変えられる』
言いながらリムを示す。
「リムって姿を変えられるの?」
「キュア?」
そうなの?と当の本人は首を傾げている。
『生まれて間もないからもっと先かな。うん、大きくなれる』
闇の精霊も保証した。
『その種族なら、屋敷くらいの大きさになるんじゃない?』
『その大きさになったら鱗に覆われたトカゲのような形態になるよ。常態の大きさも自分で調整できるようになる種族だしね』
光の精霊の補足をして大きくなった時に驚かないようにね、と闇の精霊に微笑まれる。
リムがファンタジーに出現するドラゴンそのものの姿になるという重大な情報を得たが、もっと先のことなのでひとまず棚上げにすることにする。
闇の精霊の笑顔が優しく端麗なので、もっと顔を出してみたいと思いつく。
「ね、深遠、ちょっと髪を触ってもいい?」
『うえ、う、うん、いい、よ?』
シアンはカバンから櫛と紐を取り出し、闇の精霊の髪を梳き、ゆるく編み込みまとめ上げた。長い前髪も適度に額が出るように形作る。
それを眺めていたリムが近くに咲いていた紫色の小さな花をいくつか取ってきてシアンに渡す。
「キュア!」
「本当、深遠の瞳と同じ色の花だね。深遠、花を髪に飾ってもいい?」
『似合いそう』
でも、と言いそうになった闇の精霊を遮って、光の精霊がさっさとシアンから花を取って適当に髪にさす。
「綺麗だね、でも、落ちそうだからこっちにさそうか」
修正するシアンはフラッシュが見れば卒倒しそうな程、精霊たちに無造作に接していた。
『にあうね!』
リムが嬉し気に言う。
闇の精霊は驚いたように目を見張って固まっている。
「うん、後は、この衣装、腰のあたりで何かで縛った方がいいと思うんだけど」
『花冠の大きいやつを作ろうよ』
ティオが提案する。以前、ティオに作ったのだが、大きすぎて首輪になったのを思い出したのだろう。
「すぐほつれて壊れるんじゃないかな」
『闇の精霊に献上するんだ、大丈夫』
非常に軽い調子で光の精霊は言う。当の闇の精霊は髪に花を挿されたところからずっと固まったままだ。
せっせとリムとティオが花を集めてきて、それをシアンが編み、光の精霊は闇の精霊のために作った料理を温めなおして貰って食べ、闇の精霊は固まったままだ。
みんな、好き勝手していた。
「できた! あとは深遠の体に回して、っと」
闇の精霊の胴体に花のベルトを巻き付け、背中側で結ぶ。すぐにほどけるかと思いきや、光の精霊が言う通り、花の帯は闇の精霊の胴体から落ちることはなかった。
「はい、完成です!」
『完成です!』
『できました!』
『できたできた!』
すっかり皿を空にした光の精霊が笑いながら手を叩き、シアンたち三人の尻馬に乗った。硬質な美貌が柔らかい印象をはらむ。
『えっえっ……』
闇の精霊はようやく再起動したが、うろたえていた。
『ほら、麗しいぞ、闇の』
どこから取り出したのか、手鏡を渡してやる。
精霊も鏡を見たりするんだな、と明後日なことを考えるシアンは、闇の精霊がはにかんだ笑顔を浮かべるのに、奇妙な充実感を覚えた。
「気に入ってくれたようで僕も嬉しいよ」
『良かったね、シアン』
『深遠、きれいだね!』
ティオはシアンが喜ぶのが嬉しいようで、リムはシアンと一緒に闇の精霊に何かをできたことが楽しいようだ。
「深遠も何か食べる?」
『ティオがね、かってきたお肉、おいしいよ!』
『うん、美味しかった』
同意する光の精霊の汚れた口元を、リムが布で拭っている。自分がシアンに世話を焼かれるのを真似ているのだ。これもフラッシュが見れば人事不省に陥るだろう。
「じゃあ、お肉を焼くね。稀輝は紅茶を淹れようか?」
『飲む』
リムが水を張った鍋を火にかける。
その間に茶葉の用意と肉を焼く下ごしらえをする。
肉は低温で表面にうっすらと肉汁が浮き上がってくるまでじっくり焼く。ひっくり返した後、同じく肉汁が浮き上がってくるのを待つ。
ティオの分と焼き方が違うのは肉の厚さの違いだ。
「早く他の調味料を作れるようになるからね。そうしたらもっと味の幅が広がるから」
『うん、楽しみにしている。加護を渡すから頑張って』
光の精霊がついでのように爆弾を落とす。「え、いいよ、これくらいのことで貰わなくても。それにもう大地の精霊からも貰っているし」
『私たちのはいらないの?』
白い額を出し、露わになった玲瓏な闇の精霊に見つめられると頷かずにはいられなかった。妙な迫力があった。さすがは精霊、と見当違いな関心をする。
「あの、ところで、お二方はその、ええと」
『なに?』
シアンが淹れた茶を光の精霊が飲みながら言いよどむ先を促す。
「ええと、もしかして精霊王とか?」
『うん』
『そうだよ』
「え、じゃあなおさら貰えない!」
フラッシュが三日は寝込むこと請け合いだ。
『もう渡したよ』
『ご、ごめん』
あっけらかんと言う光の精霊に、申し訳なさそうな顔をする闇の精霊、加護をくれたにも関わらず、腰の低いことだ。
『シアン、ぼくにもついたー!』
「え、リムも?」
『光の精霊王と闇の精霊王のかご!』
キュアキュアとはしゃぐ。
「ああ、僕にもついてる。フラッシュさんときゅうちゃんに何て言えば……」
『これでシアンはそこのグリフォンに乗って遠出もできる』
頭を抱えるシアンに光の精霊は腕組みをして満足気に一つ頷く。
『道行を照らし、心の平穏と癒しを与える効果の加護だから大丈夫と思うけど、道中、気を付けてね』
闇の精霊が優しく告げる。
麗々しい精霊たちは靄が吹き消されるようにふわりと消え去った。
『シアン、僕にずっと乗っていられるようになったって! もっと高く飛べるね』
ティオが喜びの声を上げる。
濁流のように自分の力量を外れて並外れた助力が増えていき、事態に置いて行かれて途方に暮れるシアンだった。




