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aI was mixed  作者: 阿賀野基晴
第3章 1人の愛
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第66話:いつもの日常

あの後、私達は私の家に集合した。


北条救出作戦は同時に本郷を捕まえる作戦となっていた。

内容としてはこうだった。

紗那達が上階から何か危険なものを投げ出す。

もちろん外を確認して危なくないことを考慮してだ。

それによる通報と言う体で警察に電話。

本郷が拳銃を持っていたら警察が来たタイミングで発砲させ、上階まで警察に来させる。

持っていない場合…。


と、このように何パターンかの作戦を考えていたのだが、結果的にうまくいった。

その日の終わりは喜び半分、証拠は残していないものの、警察にばれないかどうかで不安な一日となった。

ご飯を食べて、私達は解散した。


そうして、次の日となった今日の朝。

北条から連絡があった。


『愛華。おはよう。今大丈夫か?』


「北条さん。おはようございます。まだ家なんで大丈夫ですよ。」


『昨日の結末が分かったよ。どうやら、本郷も北原も警察に連れていかれたようだ。しかも本郷の部屋の中も見られたようで、色々やばい資料とか、拳銃とかも見つかって完全に作戦通りの結果になったようだ。』


「!!よかったです…。それで…。」


私たちの事はどうなったのだろうか。


『それで、お前達なんだが…。』


「…っ。」


『気付かれることもなくおとがめなしだ!!』


「…よし!!紗那!!何もないって!!」


「おお!!本当か!!よかった!!!」


『といっても紗那と英梨しか見られていないからな。証拠も原口が消していたし、他の奴らもなぜか口を割らなかったらしい。』


「へぇ?そうなんですね。」


紗那達は少し危ないと思っていたが。


『とりあえずは何も聞いていないし、本郷たちが何か言ったとしてもそれ以上に彼女達の罪の方が重いからね。そもそも証拠もないし、何もないだろう。』


「ありがとうございます。…これで、終わったんですね。北条さんにも何もないんですか?」


『私は…分からない。本郷が何を言うかは分からないからな。でも私の方は私で何とかするから大丈夫だ。また何か分かったら言うよ。』


北条はやはり、危ない立場にある。


「…分かりました。何かあったら言ってください。」


『まぁ、愛華達はこれで安心だ。今日からはゆっくり休むといい。本当に、これで全部終わりだからね。ありがとう。…今まで…ほんとに…っく…ありが…とう…。』


やっと、念願がかなったのだ。

北条も嬉しかったに違いない。


「…今度、ちゃんと祝勝会をしましょうね。」


『…あぁ…。』


こうして朝の電話は終わり、いつもの日常が始まる。


********************************


「それで、結局私にも何もないってことなのか??」


「そういうことですね。」


「そうか…。大変な役をさせたな。ありがとう。」


昼休みになり金井と相談室にいる。

金井も一応関わっているし相談室に呼んだのだ。


「金井さんも、もう自分の将来を考えられますよ。」


「…後輩に心配されるようじゃなぁ。一応は考えてるんだぜ。今からじゃあ時間はかかるだろうけどさ。どれだけ時間がかかったとしても取り戻していくよ。」


「応援してます。」


「金井さんは結局何か目指してるんすか?」


「あ?…なんだっていいだろ。」


少し顔を赤くさせて口籠る金井。


「え?え??なんですかなんですか???」


紗那がぐいぐい聞く。


「…っせぇな!!……警察だよ。」


「おお!!!!」


警察官になりたいようだ。


「とてもいい夢ですね。金井さん。」


「剣道もできるし、案外向いてそうすね。」


「そのために少しでも勉強してないとな。目指すはキャリア組ってやつだよ。」


「きっと金井さんなら大丈夫ですよ。怖いからすぐ人の上に立てると思います!」


英梨が手を合わせながら言う。


「あぁ!?」


金井はそれに対して怖い顔を向けた。


「ひっ!!!!」


英梨は私の後ろに隠れた。


「…っぷ、あははははは。さんきゅーな英梨ちゃん。」


ガラララ


「…お前ら昼休み毎日ここにいんのか?」


紅が嫌そうな顔をしながら入ってきた。


「紅さん!金井さんの夢知ってます?」


「な!お前!!ちょ!!」


「実はぁ~…。」


ニヤニヤしながら口を開く紗那。


「警察官だろ?」


遮るように紅が言った。


「!?何で分かったんすか!?」


「なんでって、結構前にこいつが言ってたからだよ。」


金井が顔を赤くして目をそらす。


「えぇ??金井さんなんで紅さんには言ってるんですか??」


「え、いやその…。」


「俺が警察官になるって言ったら『私もなる』って言っていたぞ。」


紅が全部しゃべった。

しかも紅も警察官になりたいようだ。


「おい!!なんでいうんだよ!!!!」


「はぁ!?いっちゃダメだったのか!?」


「へぇ~~、お二人はそんな関係なんですかぁ??」


紗那がぐいぐい聞く。

かく言う私も少し気にはなっていたのだ。


「バッ…そんなんじゃ…。」


「そうだぞ?」


何でもかんでもはっきりと冷静にしゃべる紅。

それを言われて金井は今日1番顔を赤くする。


「お前!!!!殺す!!!!!!」


金井が紅の首につかみかかる。


「おおお!!?!?ちょ!!やめっ!!…!!」


「金井さん!!落ち着いて!!」


「ひっ!紅さん白目ですよ!!」


全員で金井を制止しに入る。

紅は完全に落ちていた。

これが元全国に行くほどの女の底力だ。


ガララララ


「っちわ~。…って、えぇぇええ!!?!紅さんどうしたんすか!?」


石丸が入ってきて、すぐにこの惨状を目の当たりにした。


「ちょ、誰か~!!AEDを~!!誰…。」


うろたえる石丸に金井が踵落としをして黙らせた。

というより気絶させた。


「…私は悪くない。」


そう言って金井は顔が冷めやらぬまま相談室から出て行った。

2人の被害者を残して。


私達は石丸と紅をソファに寝かせ、座るところもなくなったし私達は外に出ることにした。

お昼ご飯の残りは外で食べるつもりだ。

もちろん昼休みが終わる前に起こしに来るつもりだ。


「体育館の横のベンチでいいよな。」


「うん、いいよ。」


「大丈夫ですよ。」


私達はベンチへと歩く。


「よく聞けなかったけど紅さんと金井さんがなぁ~。また今度ちゃんと聞くか。」


「今度は被害者が出ないようにしないとだけどね。」


「あ、あそこ。」


英梨が指をさす方向を見るとボーっと空を眺めている佐倉先生が屋上にいた。

昼休みだから何してようが構わないが、そのまま昼休み後もそこにいそうに見える。

そんなことはないと思いたいが。


「そういえばお母さんと佐倉先生、どうなんだ?」


「かなりうまくいってうと思うんだけどね。もしかしたら結婚するかもしれない。」


「えぇ!?私あんなお父さん嫌だなぁ。」


「ふふ。私も最初はそう思ってたけど、今はそうでもないよ。」


意外としっかりしている時もあることを知ったからなのだが、今一度考えなおしてみると不安しかない。

考えるのをやめることにした。


「あ、人少ないですよ!座りましょう!」


ベンチに到着して私達は腰を下ろすと、別のベンチに座っていた人がこちらへ来た。


「あんたらいつも一緒にいるな。」


相手は秋山だった。


「秋山さん!ここで食べてるんですか?」


「たまにはね。教室にいてもいいけど、こんな性格って知られたからな。皆仲良くはしてくれるけど私も他の奴もたまには息抜きがいるでしょ。」


そう言いながら秋山も私達のベンチに腰を掛けた。


「なんだ?寂しかったのか?」


「なっ!そんなことない!!」


「ふふふ。秋山さんは教室でもちょこちょこ話しかけてくれるんだよ。まだ周りとうまく話せないから仲介をしてくれてる。」


「なんだよ。すっかりいい奴じゃん。」


「元々いい奴だろ!!」


「秋山さん。またバレー一緒にできませんか?実は私あの後からもたまにやりたくなるんですよ。」


英梨がトスのジェスチャーをしながら言う。


「…また今度暇だったらね。」


最近英梨もしっかり人と話せるようになってきた。

もちろん初対面だとまだおぼつかないが、ある程度は話せるようになってきている。


「じゃあ、その代わりに今週の土曜日あけといて。」


「え?」


「…どうせ今どきの女の子らしい遊びなんてしたことないんでしょ。私が教えてやるって言ってんの。」


「なんだ?寂しいのか?」


「それさっきも聞いたよ!!!!…嫌なら別にいいけど??」


少し不安そうに、でもちょっと偉そうに、秋山は言う。


「…うん。空けておくよ。ね?みんな。」


私は秋山に微笑みながら言う。


「おう。仕方ないな。」


「全然空けておきます!」


「……っじゃあ!それだけだから。また連絡する!!」


そう言って秋山は帰っていった。


****************************


放課後になり委員会が始まる。

相談室には私と紗那と英梨と石丸がいる。


「ほんとに…なんで昼休み起こしてくれなかったんですか…。」


昼休み外に出た私達は秋山と会った印象が強すぎて、すっかり紅と石丸のことを忘れてしまっていた。

つまり、二人は授業に遅刻することとなった。


「ほんとにごめんね委員長。」


「あ、いや、全然いいんですよ。」


「大体、あれくらいでノビるのが悪いんだろ。」


「ちょ!今もう許す流れだったのに!!許せなくなっちゃいますよ!!」


いつものように石丸に茶々を入れる紗那。


「すみません石丸さん。私も気づいていれば…。」


「あぁ!いいんですよ英梨さん!!そこまで申し訳なさそうにされるとこっちが逆に申し訳ないというか…。」


「全部お前が悪いってことだな。」


「だからもう!!!」


笑い合う全員。

本当に私達はもう、この日常に帰ってこれたのだ。

いつもの日常。

最初の頃とは違う。

キラキラと、光り輝いてさえ見える。

それはほとんどが愛那のおかげだ。


ここに愛那がいたら。


どんなに楽しい日々にも、私は、まだそう思ってしまうことがある。

そこに愛那がいるような妄想をしてしまう。

未だに囚われているようにも見えるかもしれない。

それでも私は、そんな感情も含めて、毎日が幸せなのだ。


「すみません、相談に来たんですけど。今大丈夫ですか?」


「!!…はい。どうぞ、ソファに座ってください。」


私はきっと愛那を思うことを生涯やめないだろう。

なぜなら、どんな楽しい想像でも、どんな悲しい想像でも、どんな悔やまれる記憶でも、愛那を思うことが幸せなことなのだから。

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