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aI was mixed  作者: 阿賀野基晴
第3章 1人の愛
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第57話:紗那と英梨と

紗那と英梨が捕らえられていたアジトから北条の車で原口が待つ別のアジトに移動していた。

その道中は紗那も英梨もぐっすりだったのだが。


「おい、みんな。着いたよ。」


「ん。ふぁ~~~。っ!!いってぇ…。」


休んでいたせいか、久々に動かす体からは酷く痛みの信号が駆け巡った。


「うっ…。動くの嫌です~…。」


「だから、手当てするから。早くいくよ。」


そんな紗那と英梨を急かすように北条は言う。

愛華はまだ起きていないから北条が担いでアジトに連れていくようだ。


「あ、待ってましたよ皆さん!!」


そう言いながら原口も出てきて、北条の愛華運びに手を貸す。


「ごめんな。私達のへまで迷惑かけた。特に愛華に。」


「ごめんなさい。」


愛華と紗那も痛む体をどうにか動かし車から降りる。


「いえいえ!けがは多いようですが、とりあえず助かってよかったです!ささ、中で手当てをしましょう!」


アジトは先ほどのに比べるとかなり小さい。

と言うよりもちょっと大きめのプレハブ小屋みたいな感じだ。

いや、倉庫のような感じか。


「ここは元々私の職場の資材倉庫だったんだけどな。さすがに資材をおくには狭すぎるってことでもう使ってないんだ。まぁ、勝手に使わせてもらってるが、今まで何も言われてないし大丈夫だろうけど。」


中には電機は通っていないのか電池で点く大きめの証明がいくつかとテーブル、ベットがある。

そのほかにも大きな棚に何やらたくさんの物が置いてある。

パット見人が一人寝泊まりするには十分な感じだ。


原口が棚から医療箱を取り出す。

しかもかなり大きめの。


「まずは消毒しますよ。」


そう言ってガーゼに消毒液をかけ、傷口に当てていく。

紗那も英梨も、もちろん痛みを訴える。

傷もそうだが、その数も多い分、消毒の痛みも多い。


「それで、何があったか詳しく聞かせてもらうよ。」


北条が手当てをしながら言う。


「とりあえず私等はこんなで縛られたから何もできなかったんだよ。そこに愛華が来てくれてくれたんだが。」


「最初は愛華さんもすぐにやられてたんですよ。いきなりであんなに強い人とやったら勘とかじゃあさすがに勝てないですね。」


「なんとか私等の拘束は解けたけど、そこからははっきり言って絶望だったな。」


「確かに北原相手に手負い三人じゃあ分が悪すぎる。だからこそ、勝って帰ってきたから驚いたよ。」


「愛華が、突然スッと立ったんだよ。ボロボロでそれまでは動くのもつらそうだったのに。」


その時の様子を鮮明に思い出し、伝える紗那。


「その時確かに、愛華の声が愛那の声に聞こえたんだ。しぐさとか、表情も、愛那そのものだった。」


「そこが一番不思議だね。演技をしていたとしても、愛華は愛那が戦っているところをそんなに見たこともないはずだろ?そもそも動きを知らないのにマネなんてできない。もっと言えば、体のダメージ的にもおかしい話だ。」


「こればかりは、愛華が起きてからじゃないと分からないからな…。」


「はい。とりあえずは応急処置したよ。明日の学校でいろいろ言われるかも知られないけどどうにかごまかしてね。」


「ほんとにそれだよ。英梨、明日どうする?」


「どうしましょう…。顔のアザ、やっぱり目立ちますよね…。」


体のダメージよりも今後の事の方が不安になる二人。


「っていうか紗那は親には大丈夫なの?」


「あ、うちはあまり親と会わない環境だから、大丈夫だな。英梨は?」


「うちも前からこういうことよくあったし、妹もよくケガしてきますからね。大丈夫です。」


英梨は前からこんなことをしているんだった。


「とりあえず明日の学校はどうにか乗り切るぞ英梨。」


「そうですね。」


「愛華さんの処置も終わりました。」


後ろから原口が言う。

愛華はベットの上で応急処置を終えていた。


「おきそうにはないね。まぁ、ゆっくり休ませてあげよう。…じゃあ送るから、今日はお開きで。みんなとりあえず帰ってきてくれてよかったよ。」


そう言って紗那、英梨、愛華は自宅へと帰ることになった。

もちろん英梨も車で自宅へと送られた。

距離は遠いが北条の計らいだ。


********************************


車で送ってもらったのは愛華の家までで、紗那もその日はそこで寝た。

翌日、家を出る前に愛華に書置きをして学校に登校する。

紗那も1人で登校することに慣れつつあった。

学校について、相談室にてまずは英梨と会う。


「ふ~~。来たな。」


「ふ~~~。ですね。」


「最初のHRで多分気付かれて呼び出しがあるはずだ。昨日考えてたんだが土砂崩れに巻き込まれたってのはどうだ??」


突拍子のないことを言い出す紗那。


「えぇ…。さすがにその発想は天才です…。」


何の不信感もなく信じてしまう英梨。

作戦会議は終了したらしい。


「よし。とりあえず、場所は私の近所の山肌ってことで、時間は18時くらいにしておこう。なんとかお互い自力で抜け出したってことで。いいか???」


「完璧です…。それで行きましょう…!!」


その後、案の定昼休みに呼び出しを食らった二人。

途中授業中にトイレに行って一度叱られるも昼休みを迎えた。


紗那も英梨も職員室に呼ばれる。

話を聞かれるのは生徒指導の一番怖い先生だ。

英梨は結局ビビってしまっている。

紗那は強気だが。


「はぁ??もう一回言ってみろお前ら。」


「いや、だから、土砂崩れにあったんですって。本当に。めちゃくちゃビックリしましたよ。」


「そそそそうです。」


小さい声で英梨も言う。


「いや…。まぁ信じられないわけじゃないんだが…。もし何かあるんだったら正直に言ってくれないと。俺達も力になれないぞ??怒ったりしないから言ってみろ?」


親身になって話を聞いてくれるのはかなりありがたい。

教師のかがみだ。

だが、真実を言うわけにはいかないのだ。


「ほんとに土砂崩れに合って…。だから何かされたとかじゃないんですよ。ほんとに大丈夫です。」


「…分かった。信じるが、いつでも何かあったら言ってくれていいんだぞ。分かったな?」


「はい!!」


結果的に、簡単に話し合いは終わり、すぐに戻ってもいいことになった。

いつものように、相談室に行く。


愛華がいない間の昼休みは相談室にいるのも英梨と紗那だけだ。

放課後は石丸が来たり、紅が来たり、佐倉先生が来たりはするが、相談者が来ることはなかった。

そもそも相談者なんてあまりいないものだし、それに愛那の噂が本格的に広がったことで周りの人も気辛いのだろう。

相談室でお昼ご飯を食べて、昼休みを終える。

もうすぐ五限のチャイムが鳴る。

他愛無い話を終えて英梨と紗那は教室へ帰る。

相談室から出て教室に行く英梨と紗那のその姿を遠くで石川が見ていたことにも気づかず。


**********************


放課後。

いつものように相談室に英梨と紗那は来た。

そしてまた、いつものように石丸が来た。

ただし今日は少し表情が違う。


「ちょっと!!!!なんで二人してそんなにケガしてんの!?!?俺何も聞いてないよ!!!?大丈夫なのか????」


ドアを開けて入ってくるなりそう言った。


「ん?全然大丈夫だよな。英梨。」


「ちょっと痛いですけど大丈夫ですよ。」


「あ、そうあの?よかった。……じゃなくて!!!なんで俺また蚊帳の外なの!!??」


「はぁ??いわないといけなかったのか??」


「当たり前だろ!!!心配するよ!!何がったんだ???」


石丸はこれでもかなり心配してくれているのだ。

自分は関係のないことでも。


「ちょっと喧嘩しただけだよ。結果勝ったから心配ねぇよ。」


「喧嘩!?!?金井さんの件でってことか!??」


紗那も英梨も、愛華が事故に合ってからは石丸に大した近状報告をしていなかったのだ。

といっても、言ったところでどうしようもない内容だからでもあるが。

さすがに、今していることをこれ以上の人まで巻き込むわけにはいかない。


「ん~。まぁそんなとこだが、もう終わったから安心しろ。」


「そうですよ。大丈夫です。」


「…それなら。…いいんだが。もしまたある時は言ってくれよ。喧嘩はしたことないけどさ。俺も何かできることはしたいんだ。」


「あぁ。ありがとうな。」


またドアが開き、今度は紅が入ってくる。

いつも何事にも無関心な紅だが、英梨と紗那を見てさすがに驚く。


「紅さん!!見てくださいよこの二人!!紅さんも心配ですよね!!」


「…まぁ…。ってか紅さんって言うな。お前ら、大丈夫なのか?」


「大丈夫っす。」


「…だったらいいんじゃねぇか?」


「えぇ!?!めちゃくちゃドライじゃないっすか!!!!!!」


「うるせぇな!!!!いちいち掘り返すもんでもねぇだろ!!!!」


「そうだぞ石!!!おとなしくしてろ!!」


「なんで俺が悪者みたいに!?!?」


いつものように賑わいだす。


「よし、ある程度来たし、私と英梨は愛華の見舞いに行くからな。」


放課後は必ず活動しなければならないが、愛華の方が心配だ。


「またか。まぁいいんだが。俺と紅さんがちゃんとやっとくよ。」


「頼むぞ。人が来たらちゃんと話聞いとく事。」


「優しそうな子だったら私の時にも来てくれるようにしてくださいね!」


「はいはい。じゃあ愛華さんのことは頼んます。」


学校の日常は大して変わりない。

愛華が帰ってきても問題はなさそうだ。

帰ってきた愛華が、前以上にいろいろできるように、何も変わらない日常のままにしてあげたいものだ。

英梨と紗那は愛華に今から帰ることをメッセージで送信し、家路につく。

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