表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
aI was mixed  作者: 阿賀野基晴
第3章 1人の愛
55/71

第52話:一撃目

北条達と話し合ってから二日経った6月13日の日曜日。

私達に最初の指令が北条から届いた。

もちろん、喧嘩のだ。

今日は昼から英梨も来ていた。


「愛華は来なくてもいいぞ。多分大丈夫だろうけど、危ないしな。」


「ありがとう、二人とも。よろしくね。私は北条さんの所に行ってるから。」


もちろん、私は何もしないわけではない。

情報収集や、案を出さなければならない。


「私も久しぶりですけど、多分大丈夫です。成敗!!!ですね!!」


正拳突きをしながら英梨が言う。


「まぁ私一人で十分だけどな。英梨がいるなら少しは楽できるだろ。」


今となっては英梨も当たり前のように喧嘩枠だ。

最初の頃の印象からはかけ離れている。

そう思うと、こんな風な扱いをしていることに少し笑ってしまう。


「今日の17時だよね?たしか向こうは『最近調子に乗っている奴らを潰しに行く』って名目で来るんだっけ。」


「そんなこと言ってたな。向こうさんも理由がないと集まったりしないんじゃないか?」


もちろん、その理由付けは北条がやっている。

北条の指示で、向こうの人達が動いているのだ。


「大人数でなければいいんですけどね…。」


「大丈夫でしょ。北条さんだし、うまく操作して少人数からあててくるはず。」


そこまで頭が回らない人とは考えにくい。

今回は初活動だし、多分簡単な肩慣らしのようなものになるだろう。


「そう言えば、紗那さんと愛那さんは何か格闘技とかはやってたんですか?どちらも強いと思うので。」


「ん?いや…。とくにはないかな。愛那は動画とかで護身術見てただけだし、私は愛那に教えてもらったくらいだしな。」


「…やっぱりすごいです…。私なんて空手やってたからよかったものの…。」


いや、愛那と紗那はただただ化け物みたいにすごいだけで、英梨も十分強いと思う。

その小柄な体からはとても想像つかないものだ。


「愛那さんの戦い方は、なんていうか、隙がないと言いますか、勘がいいと言いますか…。後ろにも目がついてるように相手の攻撃をかわしたりできるんですよ。」


ますます化け物じみているな。


「化け物みたいな言い方するな。その通りなんだがな。」


笑いながら紗那が言う。


「でも、確かに私も気になる。紗那と愛那は武器も持たずにやってたの??」


「ん??あ~。たまにその辺にあるものとか、相手が持ってるのを奪ってたりはしたけど、向こうも素手ならこっちも素手ってのが基本だったな。」


それはつまり、素手相手にはどんなやつだろうと素手で十分と言うことだろう。

フェアであり、しかも強い。


「そういえば、今日の場所は近所の公園だったな。大丈夫かな。こころでは大分暴れてたから、変に力入れてこないだろうか。」


近所と言っても歩いていくのは辛いほどの距離だから北条が近くまで車で送ってくれるのだが。


「中学の時は普通に顔とか隠してなかったからな。1人でも知っている奴がいたらもしかしたら…。」


「北条さんに限ってそんなへまはしないって!その辺も考えて少人数になるようにしてるよ。」


「まぁ、なんにしても私の敵じゃないだろうけどな。」


「私達、ですけどね!!」


「はいはい。英梨と私でだな。」


英梨と紗那が手を合わせて握り合う。

まぁ、確かにこの二人なら大丈夫だろう。


「そういえば原口はどうするんだろうな。愛華とも別行動か?」


「私も何も聞いてないよ。原口さんも情報収集メインって言ってたから、そっちだと思う。」


ピンポーン


インターホンがなる。


「ん。来たね。」


「よし、行くかぁ。」


「がんばりましょう!!」


北条が自分のであろう車で迎えに来た。


「よし、じゃあ行こうか。」


北条はそこそこに高級な外車で来ていた。

車好きなのかもしれない。

かなり手入れがされているように見える。

服装は相も変わらず上下のそろっていないジャージだが。


「まじまじと見るね。そんなに私の格好に疑問があるかい?」


「いや!!なんでも!」


さすがに少し見すぎた。

私達は車に乗る。

私は助手席。

英梨と紗那は2列目のシートに座った。


「それじゃあ行くよ。それから…はい、これ。」


北条が私と紗那と英梨に渡す。


「あ、これ私達のです。」


「なんだこれ?」


「これは一応、顔を隠すためのマスクだよ。少し恥ずかしいけど、愛那が作ったマスクだ。顔からバレたくないだろう??」


それは黒く大きめのマスクに、独特なマークが描かれている。

確かに少し恥ずかしいが、これはこれでかっこいい。


「特攻服もあるけど、それはさすがに私達のチームに対しては目立つから止めた方が良いかな。」


「よし!!これだけでオッケーだ!!」


気合が入る紗那。


「じゃあ、公園の近くまで送るから、そこからはよろしくね。何かあったらすぐに連絡して。そんなことはないと思うけどね。」


車を発進させる。


************************


「よし、じゃあここまでだ。」


「はい。あざっすー。」


「ふー。私緊張してきました…。」


「緊張するのはいいけど、早く行ってくれよ。こちらも色々することがあるからね。」


英梨が大きく深呼吸をする。


「…よし!!行きましょう!!」


「おう!!じゃあな愛華。そっちも頑張れ。」


「うん。紗那たちの方が大変そうだけど…。頑張ってね。」


紗那と英梨が車から降りて、歩いて公園へ行く。

ここからは別行動だ。

私は北条と一緒に車で移動する。

どこに行くかは知らない。


「…あの、これからどこで何をするんですか??」


「ん?あぁ。今からある取引現場の写真を撮りに行くんだよ。証拠として押さえておかないとだからね。」


なるほど。


「ん?取引の管理は誰がしてるんですか?」


取引を北条がしてるなら、もっと簡単に証拠をつかめるし、なんなら警察との連携も取りやすいはず。


「本郷自身か本郷が一番信頼している人がやっている。これに関しては場所とか内容とかは一切口外されていないんだ。だからこそ、かなり慎重に調べている。原口が関係しているだろう人間の動向を監視することで、取引が行われる()()()場所に行くってことだ。」


ということは、確信はないのか。

だからこそ、総当たりで、なるべく可能性の高いところに行くのか。

例えその現場で、取引が予想通り行われたとしても、その場面を押えれるかも難しいはずだ。


「今日行くところももちろん、予想場所ってだけだから実際にあるかは分からないし、何時にするかもわからないからね。」


「結構長く拘束されそうですね…。」


「まぁ紗那達が終わり次第こちらも切り上げるさ。そんなにかからないだろうしさ。」


「気になったんですけど、北条さんは何をする立場なんですか?」


「簡単に言えば人事みたいな感じかな。人員管理。それもグループ内だけじゃなくて全体的な奴だ。だから、少しでも名が売れた奴とかをスカウトしたり、グループに対してのけじめとか、小グループの管理とかだな。だから嫌でも周りの情報を得ないといけない。」


だから今日みたいに小グループに公園に行くよう指示ができたのか。

上手く立場を利用している。


「ちなみに、原口の存在は大して知られていないはずだよ。肥大化しすぎたグループじゃ全体を把握してる奴なんてそうそういないからね。」


「なるほど。…北条さんは普段は何をしてるんですか?」


「む?ぐいぐい聞くなぁ。別に黙って乗ってもらっていいんだけどね。私は普通にOLってやつをやってるよ。もちろんそこじゃあ大人しくしてるけどね。」


「な!?ほんとに!?!?」


まったく想像できない。

その前に、ジャージ以外のものを着ているところも想像できない。


「失礼な反応をするね。今すぐ降ろしてもいいんだけど。」


「いや!!すみません!!!」


少しむっとした顔をする北条。


「わかったわかった。じゃあもうすぐ着くから、準備しといて。」


そういわれて私は北条からスマートフォンを渡される。


「その中に無音シャッターのアプリが入ってるから。それで撮るよ。一応最近の機種の中では一番暗闇を明るく撮れるやつだから。」


「…なるほどです。」


確かにかなりの最新機種だ。

しかも値段もそこそこに高い。

だが、こうでもしないと明かりもないようなところの写真を撮るのはかなり困難だ。


「…これ、自腹ですか?」


「もちろんそうだよ。今の私のスマホより高いんだから。まぁ、全部終わったら私が使おうと思ってるんだけどね。」


そうこうしているうちに私達は人気のない、街灯もない道に到着した。

私達はその道から歩いて少しくらいのコンビニに車を停めた。

もちろん車が停まっていることがバレてはいけないためだ。


「よし、ここからあそこの道に行って後は待つだけだね。」


「そうですね。紗那たちがうまくやれてるといいんですが。」


紗那達と別れてもう20分くらい経つ。

もうすでに始まっていて、うまくいっていれば中盤くらいだと思う。

中盤といっても何をもって中盤なのかはわからないけど。


ピロン


着信音が鳴る。


「おいおい。着信音はあまりならないように…って。私のスマホだったか。ごめんごめん。」


北条のスマホからの着信音だった。

私たちは暗がりの道へと進む。

その途中だった。


「!?!?」


北条の顔が曇る。


「え??どうしたんですか?」


予想だにしていない最悪の事態が起きた。


「…二人を…。紗那と英梨を倒したって連絡がきた…。」


私たちの足が止まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ