第51話:始動
「それで、案はあるのか?北条さん。」
紗那が聞く。
私もそれが気になっていた。
これだけの大きな組織をどうにかしようとしているわけだ。
愛那も無策だったわけではないだろう。
だとしたら北条はその作戦を知っているはずだ。
「そう。愛といたときから1つ作戦は決まってたんだよ。途中で愛がやめたけど、一応その準備だけはしてきたのさ。」
「そうなんですよ!なかなか大変だったんです。」
北条と原口が言う。
「やっぱり、なにかあるんですね。」
「実は私も知ってますよ!!変わってないなら!!」
英梨も手を挙げながら言う。
とても誇らしげに。
「そうそう。それを伝えるためにも、紗那さんを呼んだんだよ。」
「どうせこれからもっと会うんだ。紗那でいいよ。」
「…ありがたい提案だよ。」
さっきまで少し険悪だったが、紗那もそれだとやりづらいと思ったのだろう。
「私も、愛華でいいですよ。」
「分かった。じゃあ愛華、紗那。2人は知らないから言うね。」
案が知らされる。
「私達は本郷のグループの主要な人たちを逮捕させようと思っている。」
「…なるほど。」
「正確には水面下で動いている今の状況を水面上に浮き彫りにさせる感じだ。」
「この数か月は証拠をとにかく集めてる状況だったんですよ。」
「既に、ヤクザとかにも顔が利くほどのグループになってしまったからね。そのあたりの方に触れることはもうかなりやってしまってるんだ。だけど、逮捕しただけだとちりじりになった奴らでまた勝手に始まるかもしれないからね。前までは逮捕された後のチームは愛那がまとめ上げてくれる予定だったんだけど、今は他の信用できる強い人を探してる段階なんだよ。」
確かに、これだけ大きなグループを全体的にいい方向に向けるにはリーダーが代わるのが一番だ。
リーダーを表面上消して、そこに別の人が入る。
でも―
「そう。このままだと少し穴がある。」
私の顔を見ながら北条は言う。
見透かされたようで少し恥ずかしい。
「このままだと本郷が出所した時にすべてが終わってしまう。まぁ改心してくれてればいいんだけどね…。そこで、新しいリーダーが少しずつ、解体していってほしいんだよね。一気にすると反発は起こるだろうけど、少しずつだとそれも最小限で済むからね。」
「現段階でも少しずつ解体はしてるんですよ。って言っても仕事とかしたりしてる人が増えてきたから、こっちからの招集に呼ばなくなったりしてるだけなんですけどね。」
「それで、作戦としては以上なんだが、信用できる強い人ってのを橘紗那、あなたにやってもらいたい。だからまずは強さの証明からだね。」
「え??私か!?愛華じゃなくて??」
「ええ!?何でそうなるの!?」
どう考えても私にはできないだろう。
愛那と違ってそんな度胸もないし、殴り合いの喧嘩なんてしたことない。
あ、事故の前に一方的なのはあったな。
「私も愛華さんはいいと思うけどなぁ。」
「私も賛成です!!」
原口も英梨も言う。
「ちょっと、君たち話聞いてた??この作戦には圧倒的に強さが必要なんだって。英梨でもいいけど…いや、紗那にお願いしてもいいかな??」
一瞬英梨に話が行きかけるがその先は何も生まれないと察したのだろう。
確かに英梨は強いが(愛那と一緒に行動していたわけだし)、人の上に立つような感じではない。
英梨自身もホッと胸を撫で下ろしている。
「ッチ。仕方ないなぁ。」
渋々引き受ける。
「で、強さの証明のためにも、これから小人数相手にまずは名を挙げていってもらう。その時に愛華と英梨は紗那のサポートをしてもらってほしい。大丈夫。そんなに強い人は出さないから。」
「え!?私も!?」
私も参加するのか!?
喧嘩なんかしたことないって言ってるのに。
「喧嘩はできなくても、人数がいることが重要なんだよ。人は基本的に初対面の相手に対しての強さは人数差でみるものだからね。少しだけでも相手の気持ちの余裕を無くせられれば十分だ。」
「私達がなるべく小さくてあんまり強くないグループを送るので安心してください。」
大体、作戦は理解できた。
「この中で頭が切れるのは多分愛華、あなただ。愛華は私と智代と一緒に証拠探しもしてもらうよ。」
「分かりました。」
「よし、じゃあ大体話は決まったし、これから少し忙しくなると思うけど、学校には行けるようにするから、夜とかは頼むね。」
「おう。」
「はい!」
紗那と英梨の返事が響く。
「愛華はまだ学校行かないんでしょ。さっそく明日からよろしく。」
「私も学校終わったら行きますね!」
「はい。」
明日からいよいよ始まるのだ。
ワクワクしているわけではない。
でも、ドキドキはしている。
愛那の代わりに私ができること。
私が、変わるためにすること。
愛那と紗那と3人だけだった私の世界が広がっていく。
少し臆病だけど頑張り屋の英梨。
上下のそろわない人を見下す北条。
私にはできなかった自分を変えることができた原口。
私は愛那が作ってくれた世界で、愛那がいなくなった今も、愛那の残してくれたもので救われている。
今度は私が、私の力で、この中で変わっていく番だ。




