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aI was mixed  作者: 阿賀野基晴
第3章 1人の愛
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第47話:最後の仲間1

原口智代という名前を知った後、私達はそのまま3人で私の家に来ていた。

英梨が家に来るのは初めての事である。


「…。」


真っ先に向かった場所は、愛那の写真の下である。

正座をして、英梨は手を合わる。


「…遅れました。すみません。」


そう言いながら、しばらくその場にとどまった。


「…ここが、愛華さんのお家なんですね。」


手を合わせ終わり、座ったまま周りを見渡す。

目をキラキラさせながら興奮する。


「やっぱり誰かの家に来るのは初めてか?」


「はい!!すごく…新鮮です!!」


立ち上がって言う。

英梨が嬉しそうで、私達も少し嬉しくなった。

何しろ英梨にとっては思い出の場所ではないが、最も愛那を感じることができる場所だ。

もしかしたら気持ちが落ちてしまうかと心配もしたが、大丈夫なようだ。


「1度愛那さんに行きたいと言ったことがあったんですけどね。」


「そうだったの?どうし…。」


聞くまでもなく、私は察してしまった。


「私との関係は誰にも言えないものだったようですしね。私の方がそれに気づいて断りました。」


懐かしむように、少し俯いて言う。


「そういえば、英梨はなんで高校私達と同じところにしたんだ?愛那に合わせたとか?」


「いえ!!もともと近かったし、受けるつもりでいたらたまたま一緒だったんです。なので入学が決まった後に一度会ったんですよ。」


その時、私のための作戦の算段を立てたのだ。


「じゃあ、そろそろ探しますか。原口智代さんのこと。」


「そうだね。」


「私はご飯作ってるから、二人でやっててよ。進展があったり手伝いが欲しかったら呼んでくれ。」


「ありがとおう紗那。じゃあ、英梨、こっちに来て。」


「はい!!」


私は英梨を自分の部屋へと連れていく。

紗那の部屋でもあるし、愛那の部屋でもある。

この部屋の中には私達の今までの歴史が詰まっているのだ。


「ここが愛華さんの部屋なんですね!!」


部屋の中は実は愛那がいた時からまったく変わっていない。

愛那の私物も、ベットも、服も、全部そのままだ。

別に片づけるのが億劫なわけでも、まだ、愛那の死を受け入れられないわけでもない。

愛那がいた証を、残していたいのだ。

そんなことは一言も言っていないのに、母ももしかしたら同じ気持ちなのだろう。

そのままにしておくことになっている。

英梨が愛那のベットに触れる。

私と紗那の生活感がでているベットに比べて綺麗に整頓されているから、すぐに分かったのだろう。


「…。すみません。いちいち感傷に浸ってたらキリがないですよね。」


「…。」


心臓がドクンと鳴る。

私は英梨に近づいて英梨を持ち上げた。

いつも、愛那がやっていたように。


「ひゃ!!!!愛華さん!?!?」


私はそのまま英梨を愛那のベットに投げた。

ベットに勢いよく倒れる音が響き、それに続いて私もベットに飛び込んだ。


「ふ~。…きっと、愛那もこうしたかったんだよ。」


英梨が来ていたら、きっと愛那がやっていただろう。


「愛那さんなら、やってくれたと思います。」


「…っふ!」


「あははははは!」


2人で笑った。

面白いわけではない。

2人で同じ風に思ったことが、嬉しかったのだ。


「愛華さんは愛華さんです。愛那さんの代わりなんかじゃないですよ。」


「え!?そんな愛那の代わりをしたかったからしたわけじゃないよ!?私がしたくなったんだ。」


「だったらよかったですし、嬉しいです。」


「…よし!!じゃあやろっか。」


私は起き上がり、当初の目的を実行する。

今回の情報収集は、かなりしやすい。

なぜなら私はともかく、愛那とは面識があったらしい。

と言うことは、中学校の卒業アルバムにその顔と名前は載っているはずだ。

当時の愛那からして、知っていた人なんて私の周り以上にはないはずだから。


私はクローゼットを開けて卒業アルバムを2冊取り出す。

もちろん2冊あるのは愛那の分があるからだ。

私は1冊を英梨に渡し、もう1冊を自分の手に取る。


「この中から原口智代さんを探そう。名前は覚えてないけど顔を見れば何かわかるかもしれない。」


「了解です!!」


まずは頭の中にイメージを沸かせたいところだ。

アルバムを見たからって通っている高校とか家とかまでは分からない。

でも、今できることはやっておきたいということだ。


「わぁ!!2人とも変わってないですね!!」


英梨は私達の写真を見つけていた。


「うわ、なんだかもう懐かしい気がるするなぁ。」


私は横目でそれを見る。

なかったことにするつもりも、過去を見ないようにしてるわけでもない。

それでも、私にとっての中学生活は思い出したいようなものではないのだ。

たったあれだけのことで、と私自身も思う。

でも、たったあれだけで、こうなってしまうのがいじめだ。

変わってない、と英梨はそう言った。

アルバムの写真を撮ったのは3年生が始まった時からだから、髪もほとんど切らなかった時だ。

それと変わらない今の私。

気持ちだけでも変わったんだから、髪も切ろうかなと思った。


「紗那さんも全然変わってないです!!」


紗那は昔から全然髪型も変わっていない気がする。


「あ、すみません。ちゃんと探します。」


英梨は作業に戻った。


そこそこに人数も多い学校だったから、手間はかかったが、全てを見終わった。

結果は


「…どこにもいない。」


おかしい。

おかしすぎる。

当時の愛那のことを知っているということは私も知っている人で、確実に中学時代にいた子だと思ったが。

原口智代さん、もとい、原口と言う名前の人すらいなかった。


「あれ?おかしいですよ。原口さんは初めて愛那さんに会った時『あの時はありがとうございました』って言ってたんですから。」


「ん?どういうこと??」


「私も詳しくは分からないんですけど、そんなことを言ってて、愛那さんはピンと来てなかった気がしますけど。それで二人は知り合いなのかなって思ったんですけど。」


うん??

お礼を言っていたのか?

だとしたら、1人で活動していた頃の愛那にどこかで助けられたとかされた人なのか?

だとしたら確かに私は知らない人だ。

愛那がピンと来ていなかったことも何となくわかる。


「原口さんと初めて会った時は英梨もいたの?」


「はい!私と北条さんと愛那さんでコンビニにいた時に原口さんの方から『あの時はありがとうございます』ってきましたよ。あ、でも、学校でとかも言ってたような…。」


「学校??」


「はい!」


と言うことはやっぱり中学にいた人なのだろう。

だったら後輩とか先輩とかか?

でも英梨の口ぶりからだと年が違うようには聞こえない。

正直もう全く分からない。


「他に何かない?話した内容とか、どんなことしてたかとか。」


「そうですね。強くなりたいからって私達と一緒にいたんですけど、あんまり暴力的な事とかには参加しませんでしたね。ただ行動力がすごかったので作戦とかを立てたら真っ先に動けてましたけどね。」


「…。」


どこかにヒントはないだろうか。


「お礼を言った後の愛那の反応は覚えていない?」


「え??う~~ん。全く知らない人みたいな感じの対応してましたね。でも原口さんは会ったことあるって雰囲気でしたけどね。そうですよ。それを見てたから知り合いだと思ったんですけどね。」


確証はないが、話を聞いていると愛那ではなく原口の方が知っていたという感じになっていそうだ。

それでも愛那は知らなかった。

中学校にもいなかった。

ダメだ、まったくわからない。


「…あ!!」


そうか。

すっかり意識から抜けていた。


「愛那のケータイ!!…いや、でも電話番号とかは持っていないか…?」


「私も知りませんし、持っていないかもしれないです。でも写真とかがもしかしたらあるかもですね。」


「よし!」


私は愛那の机の中から愛那のスマホを取り出す。

充電はしていないが、あの日から全く触っていないから電源はついた。

すぐに充電器を繋いで、スマホの中を確認する。


「やっぱり電話帳とかには名前はないね。」


「写真とかはありますか?」


私はギャラリーを見る。

意外としょうもない画像や風景写真、佐倉先生のサボり画像とかがあったりと、カメラをよく使っていたのが見て取れる。

私の電車内の寝顔写真とかもあった。

無言で消したけど。

英梨も一緒に同じ画面を見る。


「…あ!!」


ある画像に目が留まる。

大分遡ったが、まだ髪が長い英梨の写真が出てきた。

春休みに会ったと言っていたが、その時の物だろうか。

私と愛那がスマホを持ったのは卒業する少し前くらいだから。


「この時の写真!!まだ愛那さん以外ケータイ持っていなかったですけど北条さんも原口さんもいたと思います!!この日に北条さんの連絡先を登録していた気がします!」


「ということはこの写真の前後の写真に原口さんが移ってるかもってこと?」


「っていうか、この奥に映ってるのがそうです。」


「え!?」


目を疑った。

奥に、と言うのは確かに英梨の奥に映っているのだが、なんというか、私みたいな人だった。

とても小さく映っている。

前髪が長く、目がほとんど見えない。

それは、まるで、周りから、外界からの全てを遮断している様にも見える。

その顔を見て、私は一つだけ、思い出したことがあった。

立ったその一つが、今までの話を全て線で結び繋がっていく。


「…あの子?」


彼女は、私が中学二年の時に、南達にいじめられているところを助けた子だった。

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