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aI was mixed  作者: 阿賀野基晴
第1章 2人の愛
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第3話:雑用委員会

学校生活では最低限の会話や発言は避けられないものだ。

授業のグループワークや国語の朗読などがそれにあたる。

もちろん私も例外ではなく会話や発言をするのだが、入学式の一件のせい(おかげ)で会話の方は弾むどころか終始気を使われてしまう状況だ。

というよりもずっとビビっている感じだ。

その理由は私の妹、愛那と同じように私も不良だと思われているからだ。

そんなあらぬ誤解をされるのは嫌だが、解くために人と関わる方がめんどくさい。

それに今の状況の方がヘタに話しかけられないし、却って楽だ。


そんな私も今日から委員会活動が始まる。

誰とも話していないから、生徒委員なんて委員会の内容はわからない。

それはもちろん愛那もだ。

昼休みの昼食の時、委員会活動に期待する愛那が私に終始「こんなことするのかな?」とか「先輩とかどんな人かな?」とか言ってきたけど、適当にあしらった。

ちなみに昼食はここ2週間で毎回教室から出て適当な場所(人のいない)で食べている。

もちろん1人で行くところに愛那がついてきているのだが。


6時限の授業が終わり、学級委員長が張り出した紙を見て委員会の集合場所を確認する。

2年3組の教室で行われることを知り、身支度を済ませて向かおうとする。


「あ、愛華~ちょっと待って。ノート片付けるから。」


やっぱりこの子を待ってあげないとダメか。

簡単に返事をして愛那の後ろで待つ。

と言っても私達は出席番号の1番最後で席も教室の後ろの隅の方だ。

愛那の後ろの教室の角に腰掛けながら愛那を待つ。


準備ができた愛那と一緒に2年3組の教室へ急ぐ。

若干時間を押しているが同じ学校内にあるから余裕で間に合う。

1年生の教室は1から6組すべてが二階にあり、その上の階に2年、その上に3年と階が上がっていく。

階段をのぼりながら揚々と愛那が話す。


「生徒委員ってなにするんだろうかなぁ。やっぱり生徒のために奉仕みたいなことするのかなぁ。私的には行事の企画とかがしたいなぁ。愛華はどう?」


「私はめんどくさくないといいかな。」


もっと言えば人と関わらなくて済むような委員が良いのだが、そこまで言う必要はない。

私の返答に「そっか」と簡単に愛那は返して階段を登り切った。

2年3組に到着し中に入ると案の定、全クラス集まっていて、私たちが最後だった。

委員会は1年の6組分と2年の6組分で計12組。

3年は委員会所属はしなくてよいらしく大抵の人が辞めていき、受験勉強に勤しむのだろう。

私達が適当な席に二人並んで座ると教壇にいる男の人が口を開き、委員会が始まった。


「あ~っと。俺が生徒委員会の委員長、鬼塚紅(おにづかこう)です。委員長だからって偉いわけでも誰よりも仕事をするわけでもないけどな。…え~っと。ここからは副会長が進行をします。」


話し始めた委員長はいかにもだるそうにしており、まるで担任の佐倉先生のようだった。

この学校はこんな人が多いんじゃないかと思うと、ますます関わりたくないなと思った。

というかなんでこんな人が委員長なんだ。

よく見ると他の2年生もケータイをいじったり本を読んだりしている。

誰もやる気がないようだ。

もしかしてここはこういうワンマンな人が多い委員会なのかもしれない。

会話とかをあまりしなくてもよいのかもしれない。

期待に胸が膨らむ。

副委員長が教壇に立ち、委員長の紅は後ろの席に移動して机に伏せた。

昼寝を始めるあたり本当に佐倉先生みたいだな。


「はい!頼りない委員長で申し訳ないけど俺が副委員長の槇原英雄(まきはらひでお)です!今から仕事内容を書いた紙を配りますので、1年生の人はこれを読んでおいてください。」


打って変わってハキハキしゃべる人だ。

声量とか言葉遣いは並みの人だが、この教室に限って言えば、この真面目な感じはかなり浮いている。

紙を配っていく中で2年の委員たちは紙をもらうやいなや立ち上がり教室を出ていく。

というか帰っていく。

もう今日はやることないのかと思いながら紙をもらい内容を確認した。


以下内容

・配布物を職員室から教室に持ってきて配布する

・課題などを集めて先生に提出する

・授業前にその授業の準備をする。

・先生の補助をする。

・教室内の不備(消耗品など)の管理をする

・校則違反者の指導または報告をする

・他委員会の欠席は代役をする

・生徒の相談を受ける

以上


雑用。


「何これ、雑用じゃん。」


愛那が躊躇なく言ったところで、一人の1年生が「部活があるのでこれで抜けたい」と言い私たち以外全員部活に行ってしまった。

残ったのは私と愛那と寝ている委員長の紅と副委員長の槇原だけだ。

がらんとした教室で副会長が口を開く。


「毎年この委員会は、内容の通り人気がなくて。まぁ他にも理由はあるんだけど。部活と兼任する名目で幽霊委員みたいなのが多いんだ。俺も部活をやってるけどなるべく顔出すから。基本部活をやってない君たち3人でやっていくことになると思うけど、まぁ、やめないようにな!」


副委員長の最後の決め笑顔が決まったところで、愛那が質問をする。


「かなりやること多いけどこれ全部私らだけでやんの…ですか?」


「いや、この紙はあくまで書式上、規則上やることを書いてるだけで実際は先生が指示することを手伝ったり代わりにやったりくらいだよ。ただし1年生には生徒相談というのをやってもらうね。」


「ええ、相談ですか?」


思わず口を開いてしまったが、私が見た段階で一番やりたくないのがこれだった。

それに対して愛那は目を輝かせて食い気味に内容を聞く。


「相談室って部屋に毎日放課後通ってもらって生徒の悩みを聞く教室を開設するんだ。部活をやってない君たち3人でやるんだけど、ほとんど人が来ないらしいから気構えしなくて大丈夫だよ。」


『らしい』のおかげで喜べない。

『らしい』で愛那は明らかにテンション下がっているが。

副委員長の槇原の話によると、去年は委員長の紅が一人で1年間受け持っていたらしく、その話を聞く限り人は来ていないらしい。

と言うより、紅みたいな人に相談なんてしたくないと思われているのが普通な気がする。

ただ毎日かかさずちゃんと行っていたことが評価されての委員長らしい。

それでも「来るときは来るよ」と言う槇原の言葉に愛那は少し調子を取り戻す。


「それじゃあ仕事の内容は大体こんなものだから、相談室の場所は紅に聞いて今日からお願いね。それじゃあ部活に行ってくるから。紅!!この二人頼むよ!!」


紅は声は出さないが、手を挙げて答える。

槇原は「それじゃあ」と部活へ向かった。

シンとなる教室でスッと起き上がった紅が愛那に鍵を渡してあくびをしながら言った。


「じゃあ俺帰るから、場所は学校案内地図でも見ればわかるよ。んじゃおつかれ。」


「え!ちょっまっ!」


速攻で教室を出て行った。

最後に見た横顔は寝起き悪い人の典型的な「今起こすなよ」みたいな顔だった。

大体の仕事の内容は把握したからいいものの、正直何をしてればいいかがわからない。

とりあえず愛那と一緒に誰もいなくなった教室から出て相談室を探しに行く。

私も便乗して帰るんだったと思ったけど、愛那を見て無駄な空想にため息をついた。

多分帰らせてくれないだろう。

愛那はやる気満々の顔だ。

本日、この放課後から私達の雑な初委員会活動が始まった。

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