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aI was mixed  作者: 阿賀野基晴
第2章 aI was mixed
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第33話:愛の果てに

ゆっくりしたペースで山を下りる。

切り傷や、骨折はないものの、アザができそうなほどの打撲傷が複数ある。

完治にはしばらくかかりそうだが、それでも医者に診てもらうほどではなさそうだ。


「ふ~、ちょっと休憩。」


愛那と紗那は私を支えながら歩いているが、もちろん自分たちの鞄と、私の鞄も持っている。

それにこのスローペースだ。

疲れるのもわかる。


「紗那が先に荷物駅に持っていったら?私と愛華でゆっくり行くから、そっちの方が楽じゃない?」


「あぁ、確かに。じゃあ先に行ってるから、お前らゆっくり来いよ。」


そういって紗那が荷物を持ち、少し早めのペースで出発した。

私達はまだ座って休憩をする。


「愛華、痛い?」


「うん、でも運動した時の打撲みたいなものだから、すぐ直ると思うよ。」


「…。」


「なに、どうしたの?」


何か言いたそうな、そんな表情をする。

多分、今日の事だろう。


「ここまでしちゃったからね、愛華にもちゃんと言っておかないと。」


「…うん。」


ん?愛華にも??

私以外にもいるのか?


「全部は話せないけど、分かってほしいのはこんな話に巻き込みたくないからだから。…じゃあ。」


大きく深呼吸をして口を開く。

いつもの愛那とは違う、真面目な表情で。


「2年前くらいに、私達…私はここらの一番大きな不良グループを潰そうとしてた。不良がいるから、周りの人が怯えて、楽しい日々を送れないと思ってたから。でも、…今日の不良達のグループは規模が違ったの。だから3割くらいしかできなくて、途中でもうこんなことするのは辞めたんだ。」


初めて、愛那のことをちゃんと聞いている。

2年前と言えば中学の時。

あの頃は周りの噂と、遅い帰りや小さなケガとかから推測していただけで、どんなことをしていたかは全く知らなかった。

だから、こんなことをしていたなんて知らなかった。

もっと色々なことをしていたと思うが、たったこれだけでも、私は全く知らない人の話を聞いているようだった。


「…どうして辞めたの?」


自分の中で少しずつ整理しながら、質問をしていく。

平静を装っているが、それでも内心焦ってはいる。


「それは…愛華のために頑張ろうかなって~。」


照れ笑いをしながら言う。

そうか。

あの頃の私のために。

だから高校に入ってからはちゃんと周りと話そうとしたり、勉強したりと、普通になっていたのか。


「歩きながらしゃべろっか。」


私を立ち上がらせて、また一歩一歩と山を下っていく。


「それでさ、辞めたはいいけど、かなり恨み買ってたみたいで…。最近になって私のことをずっと探してたみたい。それで名前まで知られちゃってたんだよね。」


「ってことは、もしかして、まだこういうことがあるかもしれないってこと?」


「う~~ん多分…。だから、そうだね。愛華にも迷惑かけるかも…。」


愛那のことを初めて聞いて、知って、ことの重大さを知った。

それと同時に、私の浅はかさも知ってしまった。

こんなことが続けば、どれだけ私は邪魔な存在になるだろうか。

ドラマや漫画のように、私が外に出ないように、なんてことはできない。

ましてや警察なんて、きっと事が起こるまで動いてすらくれないだろう。


「迷惑なんて…。」


それ以上は何も言えない。

私が軽々しく『私は大丈夫だから』なんてことは言えない。

私が愛那にできることは1つも、ない。


「ううん、迷惑かけちゃうよ。だから、私、再開しようと思う。きっともう、引き返せないとこまで来てたんだよ。向こうから来るのを待つくらいなら、私から行く。」


「…。」


いつ来るか分からないなら、こちらから。

口では簡単だが、実際にはどうなんだ。

そんなことすら、私には想像もつかない。


「…どうするの?うまくいくの?」


「大丈夫、策はあるんだ。だからさ、終わるまではきっと、前みたいに一緒にはいられないかもしれない。」


ダメだ。

情報が多すぎて、考えることが多すぎて、まったく話についていけない。

返事も、簡単なものしかできない。


「…1人でやるの?」


「いや、何人かいるよ。愛華が知っている人だと、北条…って覚えてる?」


ん?


「え?ちょっと待って。」


なぜその人の名前が出たんだ?

いや、違う。

なぜその人の名前から出た?


「紗那は?紗那は知らないの?」


さっきも他の人にも言わないといけないと言っていた。

さっきまでの話は全部、紗那と一緒にやっているのだと思っていた。

でも、違うのか?


「紗那には、ずっと話してなかった。内緒でしてたんだ。迷惑かけちゃうからね。」


と言うことは、愛那は私の知らない、全く知らないメンバーで動いていたのか。

その一人が北条。

あのよくわからないことを言っていた女だ。


「そうだったんだ。じゃあ、紗那にも言わないといけないね。」


「うん。それと、謝らないとだ。怒るかな?」


「多分ね。…。」


それに、紗那ならきっと『私もやる』って言うだろうな。

紗那はずっと、愛那についているから。

じゃあ私は…?


「まぁ、要はあれだね。しばらくは私と一緒にいない方がいいってこと。すぐ終わらせるから、それまでは…がんばっ!」


少しふざけながら、それでも愛那は私に言った。


「私も、頑張ろうと思う…。」


「ん?」


少しずつだが、情報の整理がついてきた。

私はきっと、悔しいのだ。

愛那のことを知らなかったことにも、自分が何もできないことにも。

そもそも、愛那がこんなことをしだしたのは、多分昔の私のせいだ。

でも、今の私ならきっと…。


「私も…。」


太陽が沈み始めた、夕方、午後四時くらいだろうか。

私の新たな決意を表すかのように、周りがまばゆく光るように見えた。

鳴り響く轟音と一緒に。


ガガガガガ!!!!ドンッッッ!!!


愛那が少し微笑んだように見えて、大きな音と共に、私の意識は途絶えた。

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