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aI was mixed  作者: 阿賀野基晴
第2章 aI was mixed
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第30話:金井攻略5

相談室を出て金井を探しに行った私達。

時間にすると13時を回ったころだった。

もしかしたら既に金井は帰っているかもしれないが、それでも探すだけ探そうということだ。

私達はいつかの昼休みのように手分けして探索する。

金井を見つけた後はと言うと…正直私はどうすればいいんだろうか。

愛那と紗那のテンションで私も感化されたけど、実際少し話した程度の私達にそんな深い話をしてくれるものなのだろうか。

普通に考えて話すわけがない。

金井の真相には興味があるが、何もできそうにない。

私は外を探索していたが木陰のベンチに腰を下ろした。

探すのをやめた。


***********************************


「英梨はどこにいると思う?」


英梨と紗那は一緒に外を探索していた。


「この前は体育館にいましたけど、今日はどうでしょうかね。」


「一応体育館の方見ていくか。」


「はい!!」


テスト明けの久々の活動と言うこともあり、英梨はかなり舞い上がっている。

何より、こんな風に何かをするのが英梨にとっては貴重で、大切な時間なのだ。


「そういえば愛那さんは1人でよかったんですかね?じゃんけんで負けて一人になったけど…。」


「あいつ?まぁ、大丈夫だろ。この前は英梨が愛華と行動したし、自分の番がないからごねただけだよ。」


「だといいんですけどね。」


*********************************


「あ~あ、結局1人。こんなんなら愛華と二人で行動すればよかった。…そうしよ!!」


1人で歩きながら金井を探していた愛那は、急遽愛華を探すことにした。

別れる前、誰が英梨と一緒に行動するかをじゃんけんで決め、それに負けた愛那と愛華は1人で探す羽目になっていた。

3手に分かれての捜索と言うことだ。

だが愛那の勝手な思いのせいで、2手になろうとしているが。

愛那はグラウンド側の道に来ていたから、愛華の行った方向へ歩を進める。

その途中、陸上部の団体ジョギングとすれ違う。


「1、2、1、2、…ねぇ…あれ。」


「…目合わすなよ。」


一瞬の出来事だが、それは確かに聞こえた。


「…。」


速度を落とすこともなく、表情を変えることもなく、愛那は歩を進めた。


**********************


ベンチに腰掛け、数分ほど経った。

私はケータイでパズルゲームをしながらどこに行こうか考えていた。

この場に留まればいずれ愛那や紗那達が来てしまうだろう。

しかし、相談室に行けば男子2人がいるだろうから、1人で戻る気はまったくない。

図書室にでも行こうか、と迷いながらも、体は動かず座ったままだった。

そうこうしている内に、想像通り、予想通り、私の下に来た。


「愛華!!探してないじゃん!!!」


小走りになりながら愛那が来た。

私は『しまった』と思いながら、ケータイをポケットにしまい、立ち上がる。

言い訳する気は毛頭ないが。


「疲れてたから少し休憩してただけだって。よし、探しに行こ。」


「絶対嘘じゃん!普通にゲームしてたろ?」


「休憩がてらね!っていうか愛那は何してんの?」


「私?え~~と。一周したから合流、みたいな?」


「一周してる方向から来てなかったよ。絶対引き返してきたでしょ。」


苦い顔をしたが、開き直ったのかすぐに肯定した。


「そうだよ!!じゃ、一緒に行こ~。」


私は溜息をつくが、1人で探すよりはいいだろう。

何かあったら愛那がやってくれるし。


「…っていうか、流れで来たけど見つけた後直接聞くの?普通に教えてくれないと思うんだけど。」


「よぉ、最近よく会うなぁ。」


私の疑問を愛那に投げかけた時、後ろから、聞きなれたわけではないが1番意識にあった人の声が聞こえた。

事の当人、金井桃子である。


「うぉ!!金井さん!!」


「わっ!なんで!?」


意表をつかれてかなり驚いた。


「なんだよ。私がいちゃまずいのか?自販機に行ってたんだよ。」


金井の手には校内で人気の炭酸飲料があった。


「探してたんですよ!!金井さん!!ね、愛華!」


「いや、私は別に…。」


「金井さん、単刀直入に聞きます。」


私の言葉を無視して愛那が話を進めていく。


「なんだよ、いやに真剣じゃねぇか。」


「金井さん、部活やらないのは不良グループのせいですか?」


本当に単刀直入に、言いよどむこともなく言った。

明らかに金井の表情が曇る。


「…さすがに、愛那、お前に対してもう敵対する気はないけど、その質問はどういう意味だ?どこで何を聞いた?いや…お前には関係ない話だ。関わるな。」


予想通りの答え。

やはりこれ以上は進みそうもない。


本郷凛(ほんごうりん)。この名前に心当たりありますよね?」


愛那の言葉に、再度表情を変える金井。

口を開け、何かを言おうとするが、言葉がついてこないのか詰まっている。

愛那は私の方を少し見て、意を決したように話し出した。


「中学の時、この辺りのチームを調べてたことがある。ここらで1番有名なのは本郷と言う女が率いるチームだったはず。かなり規模がでかいチームだから、抜けられないんじゃないですか?」


「…そうだ。そこまで知ってるなら、その通りだよ。私の周りにいたやつら、覚えているか?最近いないけど。」


周りの奴らとは、かつて金井と一緒にいた人達だ。

最近では見かけなくなったが。

英梨を拉致したあの日にいた人達だ。


「あいつらは今、もう学校に来ていないんだ。元々同じグループだったんだけど、あいつらは多分そのグループにまだいる。私がいた時に別の奴が勝手に抜けた時はメンバーに1発ずつ殴られていた。私も状況は似ているし、近いうちに何かあるかもしれない。」


やはり、聞いたところで私達にはどうにもできないものだった。

さすがに愛那も殴り込みに行くとまではいかないだろう。


「やっぱり、なすすべなしっすね…。全然打開策が思いつかない。」


「ははは、解決しようとしてくれたのか?無理があるし、さすがに愛那でも無理だろ。数が違う。本当は私が直接行って全て終わらせたいんだけどな。」


「どうしてやらないんですか?」


思わず聞いてしまった。


「ボコられると聞いて、分かってて、誰が平気な顔で行ける?少なくとも私には無理だ。」


それを聞いて、自分の質問が恥ずかしくなった。

他人事過ぎて、そんなこと思いもつかなかった。

考えればすぐわかることなのに。


「これで聞きたかったことはいいか?さっきも大平達が来たけど、やっぱり私には無理だ。大平達に聞かれたら今のことを伝えてもいいぞ。それじゃあな。」


金井はそのまま後者の方へと行った。

真実は知ることができた。

これ以上はもう何もできないが。


「…愛那、どうする?」


「さすがに乗り込むなんてことはできない。それは私達の仕事じゃないよ。」


「…私は乗り込むとしても無理だけどね。」


これにて、本当に金井の件は終了した。

手の打ちようがないのだから。


***************************


相談室に戻った私達は今の話を全員にした。

もちろん、石丸と紅にもだ。


「なるほど…。愛華さん、1から話を教えてもらっていい?」


「え?分からなかった?」


「いや、そうじゃなくて、まず金井さんの話を1から…。」


そういえば石丸は何も知らないのだった。

愛那が代わりに石丸の下へ行き、教えてあげることになった。

その間私と紗那と英梨は話を進める。

紅も一応は聞いているようだった。


「…って感じで、結局何もできそうにないかな。」


「そっ…かぁ~。」


「すごく…残念です…。」


落ち込む二人。


「金井もめんどくせぇことになってんな。」


「コウさんが助けてあげてくださいよ。男なんだし。」


紗那が適当に話を振る。


「はぁ?無理だろ。不良だろ?こえぇよ。」


普通に、格好つけるわけでもなく、ビビっていることを伝える。

ここには男も女も違いはない。


「この話は結局ここまでってことだな。」


紗那が立ち上がり伸びをしながら言う。

不完全燃焼ではあるが、仕方がない。


「おい、石。もうわかったか?」


「今聞きおわったよ!本当ならこれはテスト中に知り得たものだからな?!」


「まぁ、今回はこれで終わりだね。これからどうする?」


「今日はもう帰ろっか。多分残るのは部活動してる人だけだろうし。」


時間も14時前くらいである。

そろそろ下校者が増えだす頃だ。


「そうだね。また明日から、ちゃんと活動しよう。」


さすがに、今日は続けるほどテンションが高くはない。

帰りの支度をして相談室を出る。

紅はそのまま残っているけど。

いつものように石丸は先に帰っていき、英梨と愛那と紗那と私で校門まで一緒に行く。


「あ、教科書置いて帰るんだった。どうしよ、鞄重いし。誰かついてきてぇ~。」


愛那が鞄の重さに気付き、教室に戻ると言い出した。


「なんだよも~。私行ってくるから英梨と愛華先帰ってて。駅で追いつくから。」


「了解。またあとで。」


「お二人ともさよならです!」


愛華と紗那は教室へと戻っていった。

校門に着き、英梨とも分かれを済ます。

私は愛那達を校門で待たず、そのまま駅へと歩いた。

校門で待つのは、周りの目もあるし、少し遠慮した。

駅までの道のりはすぐだし、駅で待っていても差し支えないだろう。


学校から駅までの道のりで言うと半分辺りに差し掛かった。

駅は既に見えているし、焦らなくてもすぐに着くような距離。

私はそこで、1歩も前に出ることができなかった。

本当に1歩も。


「…ちょっと顔貸せ。」


私は多分初対面だろう人達5人に囲まれていた。

マスクしてるから絶対ではないが、多分知らない人達だ。

だが、さすがにどんな人達なのかは察しはついている。

絶対、私と愛那を間違えてるんだと思った。

私は返事もする間もなく2人に腕を押さえられ、そのまま押されるように別方向の道へと連れていかれる。

『…あの、多分人違いじゃ?』と聞こうと思ったが、すんでのところで止まった。

あれでも一応、愛那は私の妹だ。

愛那なら難なく対処できるだろうが、危険な目にあわせたくはない。

それに、仮に人違いと説明してもここまで似ているし、信じてもらえないだろう。

私は何も言わずにその場をやり過ごすことにした。

と、いうより、一瞬のすきを見て逃げるつもりだ。

だが、腕はがっちり固定されていて、とても隙なんてない。


「おら、これに乗れ。」


そう言われて私は車に乗せられる。

怖いし、不安だが、泣いたりビビったりしない。

考える。

ここから逃げる方法を。


***************************


「あれ?愛那先に帰ったのかな?それともトイレ?」


「もうそろそろ電車来るし、次の電車まで待ってみるか。」


駅に着いた愛那と紗那は駅のホームで愛華を待つ。

だがもちろん、電車が通過した後も愛華は来ないどころかその影すら見えない。


「もう帰ったんだろ。」


「えーでも何も連絡してこないなんてあるかなぁ?…いやあるか。」


「…ってかこっちから連絡すれば?」


「あ、ほんとだ。」


そう言って愛那が電話をかける。

今更気づくか、とも思うが、案外2人いるとどちらも連絡しようとしないものだ。


プルルルル…ガチャ


電話に応答がある。

紗那もケータイに耳を傾けて愛那と一緒に聞こうとする。


「あ、愛華?今どこ?先帰ってる?」


『…。』


「ん?」


『…今日私友達の家に行くから遅くなる。他にも人いるから心配いらないよ。』


電話は切れた。

愛那と紗那は顔を合わせる。

険しい顔で。


「…行くよ。」


2人は改札を出た。

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