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aI was mixed  作者: 阿賀野基晴
第2章 aI was mixed
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第22話:テスト週間でも

金井が相談室から出て、テスト勉強を再開しようとする私達。

石丸が何か言っていたけど、説明するのがめんどくさいのか全員が無視した。


金井が相談室から出ていき、数分が立った時、私達も集中し始めたくらいでドアのノックが響いた。


「あの、相談って今もできますか?」


二人の女子生徒が入ってきた。

ネクタイの色を見る限り、1年生ではない気がする。


「あ、大丈夫ですよ!今から片づけるんで!」


「俺、お茶準備するよ!」


「っ!私はえ~っと…片づけ手伝います!!」


「ほら、コウさん。来客っすよ。起きなくていいんで、どいてください。」


「うぉ!お前!!椅子から落とそうとするな!!」


皆、各々できることをしていく。

私はやることがないので、自分の周りのノートとかを片づけることにした。

来客に溜息を吐きながら。


****************************:


片づけが終わり、お茶を出して、二人の女生徒にはソファーに座ってもらう。

向かいのソファーには、ギュウギュウだけど私、巡川、愛那、紗那が座る。

石丸は一応委員ではないから隅でパイプ椅子に座る。

紅はその横で同じく、パイプ椅子で寝ている。


「あ、あの寝てる人は気にしなくていいので。」


やはり初見だとなかなか珍しい光景だろう。

パイプ椅子で周りにお構いなく寝る様子は。


「初めまして、私は3年5組の安藤菫(あんどうすみれ)です。こっちは…。」


「初めまして、3年6組の大平繭(おおひらまゆ)です。」


3年生の女子生徒。

今までの相談者は1年生だけだったから、少し意外だった(といっても相談者はこの場にいる2人なのだが)。


「実は私達、剣道部なんですけど…。中間テスト明けの、団体戦の大会に出たくって…。」


口籠る安藤。

安藤は横の大平に視線を向け大平に続きを言わせるようアイコンタクトをする。

ふぅっと息を吐いた


「今、私達は部員全員含めて4人しかいないんです。3年生は私達2人で、2年生が2人、それだけです。それでですね…。」


さっき、愛那は自分で『剣道をまたしたい』と言っていた。

ここにきてとても良い話が来たかもしれない。

愛那の表情も期待に満ちていく。


「…お願いします!金井を剣道部に引き込むのを手伝ってください!!!」


「へ?」


誘われて、『はい!』と答える気満々だった愛那。

拍子抜けの声を出し、それを見た紗那が小さな声で笑う。


「さっき、金井がこの部屋から出るのを見て、もしかしたら仲いいのかなって。そんなことないですか?…いや、なくてもどうにか!お願いしたいです!!」


完全に呆気に取られて、放心している愛那。

笑って全く集中できていない紗那。

対面して座っているが、初対面でまったく動くことのできない巡川。

私が対応するしかないのか。


「あの、別に金井さんと私達は仲がいいわけではないのですが、まずは敬語をやめてもらって大丈夫ですよ。私達は全員1年生なので。」


あそこで寝ている人は別に1年生と思われてもいいだろう。


「それじゃあ、お言葉に甘えて。皆さんも多分知ってると思うけど、金井は結構マジのヤンキーで、色んな怖い先輩と繋がってて…。だけど、剣道はめちゃくちゃ強いんだ。私達の部員は4人だから団体戦に出るにはあと一人足りなくて、最後の大会だし、どうしても出たいから、金井に入ってほしいんだけど…。」


「実は、私達とは1年生の時以来ほとんど口を利いていなくて…。だから誘おうとしても話しかけづらいし、金井も1日中誰とも話さないような性格だから…。」


大体話は分かった。


「…それで、金井さんと仲がいいかもしれない私達に頼んだ、と?」


「うん。実際、相談室から出てくる金井は結構楽しそうだったし。」


「っは!!え??金井さんが?剣道??」


愛那が帰ってきた。


「私達そんなに仲いいわけじゃないですけど、剣道部に引き込むって、元々剣道部じゃないんですか?二人の方が私達よりは声かけやすいんじゃないですか?」


話をあまり聞いていないから一度言ったことなのだが、確かにその通りだ。

金井は中学の時は全国に行くレベルの剣道女子だった。

その金井が今はあんな風だが入学したころは剣道部に所属していたりしたんだと思う。

だから金井を誘っているのだろう。

つまり、この人達とは元チームメイトなはずなのだ。

私達とは築いているものが違う。


「うん、1年の時は同じ剣道部だったけど…まぁ色々あってね。」


目を互いに合わせる先輩達。

その雰囲気からは『あまり言わせないでほしい』という思いが見て取れた。

金井が辞めただろうことはもちろん予想できるが、色々あったことを詮索することはできない。

それは野暮だろうから。


「色々ってなんですか?」


ソファーに座る私達は誰も聞こうとしなかったが、パイプ椅子に座る石丸が訪ねた。

3年の2人も『え?聞いてくる?』みたいな顔をする。

私達も『え?何で聞く?』みたいな顔をする。

そういえば、ここの男達は皆使えないのだった。


「え?いや…。んぐっっ!!」


察した紗那が石丸の口を押えに行く。


「ごめんなさい。あそこの隅にいる男達は見えないと思っていいですんで。」


愛那がシンとした目で言う。


「あ、はぁ。」


でもまぁ、色々あったと言っているし、彼女たちが誘うことが困難だから、私達に相談を持ち掛けてきたのだろう。

できれば3年生なんだし、自分たちで解決してほしいものだが。


「まぁ、事情は大体わかりました。私達にできることはしてみようと思います。テスト週間ですけど、先輩たちは明日の放課後とかも集まれますか?色々金井さんについて聞きたいので。」


愛那が話を進める。

剣道の誘いでなかったことへのショックは消えているようだった。

その代わり、久々の相談者に対して声色には出てはいないが、表情から楽しそうなのを感じる。


「う~~ん…。私は大丈夫だけど、菫は大丈夫?」


「私も大丈夫。そんなに長くは居れないけどね。」


とりあえず明日も放課後は相談室になりそうだ。

誰にも聞こえないような溜息を吐く。


「愛那、このことはまだ金井さんには言わない方がいいだろ。」


「そうだね。じゃあ、とりあえず先輩たちは帰ってもらっていいですよ。」


「うん、ありがとう、じゃあまた明日よろしくね。」


先輩たちは相談室を出て行った。

思えば私達に来る相談はいつもその瞬間には終わらないようなものばかりだ。

まためんどくさくなってきた。


「…んん~~っっ!!」


「あ、わり。」


紗那が石丸の口から手を放す。


「えほっ!げほっ!!ちょっと…力強すぎるって…。」


石丸が生還する。


「私…また一言もしゃべれなかったです…。」


「大丈夫だよ巡川さん。顔を伏せないだけ成長してますって。」


嘆く巡川を慰める。

もうこの展開も慣れたものだ。


「皆、気にならなかったの!?金井って人のこと!!」


石丸が話を遮られたことに腹を立てる。


「気にはなったよ!だけど聞いてよさそうな雰囲気じゃなかったからさ~。いんちょーは空気を察する能力をつけた方がいいね。」


「本当なら殴ってたぞ。巡川がな。」


「え!そんなことしませんって!!」


「それはマジで勘弁です。」


巡川がいじられるのもこの空間に限っては、最近では珍しくなくなってきた。

もちろん、打ち解けてきている証拠なのだが。


「とりあえず、話はついたから明日から色々するけど…いんちょーと英梨ちゃんは勉強してた方がよさそうだね。紗那はどうする?テスト大丈夫そう?」


その通りだ。

何と言っても高校生活最初のテストだ。

ここで躓いてほしくはない。

私と愛那はまだいいが、巡川と石丸はあまり勉強以外のことはしない方がいいだろう。

紗那に関しては、愛那のおかげで勉強できないわけではないけど。


「私は大丈夫だよ。愛那と愛華に夜教えてもらえれば。」


紗那はこちらを手伝ってくれるようだ。


「え?!紗那さん愛那さんに夜教えてもらえるんですか!?」


驚く巡川。

そういえば私達と紗那が基本同じ家で寝泊まりしていることは言ってなかった気がする。

私がいないところで言っていたのかもしれないけど。


「ずるいですよ!!!そんなの…友達みたいで羨ましいです!!!!」


友達みたいと言うより、友達なのだが。

いや、それを通り越して家族か。


「じゃあ、英梨ちゃんも来る?」


「へっ!?!?」


急な誘いに驚く巡川。


「ここからだと電車で遠いし、お金かかるな。私達が巡川の家に行くよ。」


「へぇっっ!?!?!?!」


反応する暇もなく、新たな提案に驚きを隠せない。

誘ってほしそうだったが、いざ誘われるとなると巡川自身も初めてだからかなり動揺している。


「えっと…それは…。」


「そうだよ紗那。英梨ちゃんにだって家の事情があるんだから、私達が決めたら…。」


「いや!!大丈夫です…!明日は…大丈夫です!」


巡川のOKに愛那も紗那も驚く。

一度行ったときは家にすら近づかせてもらえなかったと聞いていた。

それもあってか、まさかOKされるとは思っていなかったらしい。

紗那もダメ元で言ったのだろう。

しかし、実際私達は定期で電車に乗れるが、定期のない巡川にとっては痛い出費になるはずだ。

巡川の家は学校から歩いていけるからお金もかからないし完璧だ。

ただ、私が気になるのはその計画に私が入っているだろうことである。

また私の意見も聞かず、暗黙的に、強制的に参加させられてるはずだ。


「それだったら、明日は私も放課後参加できそうです!」


「じゃあそうするか!な、愛華もいいだろ?」


あ、やっぱりだった。


「…分かったよ。」


ここで否定しても空気を濁してしまうし、どうせ強制参加させられるだろう。

めんどくさくなるくらいなら折れた方がいい。


「よし!じゃあ俺も明日は放課後参加しようかな!」


「え?なんで?」


石丸の提案に、紗那は速攻返事をする。


「えぇ!?やっぱり俺いない体で話進んでた!?寂しいよ!!!!寂しすぎて死んじゃいそうだよ!!」


「いやいや、いんちょー。これは女子の会だから、いんちょーが来れるものじゃないよ。いんちょーはちゃんと勉強してた方がいいよ。今の感じだと。」


「うっ…。俺だけ仲間外れ…。」


「…石丸君って友達と勉強とかしないんですか?」


そういえば気になる質問だ。

石丸は結構な頻度で放課後、相談室に来るが、教室では男子と普通に話してるし、昼食ももちろん一緒に食べている。


「俺の友好関係って広く浅くだから、なんていうか、学校以外で会うほどの仲の奴がいなくて…。」


「…贅沢な悩みですね…。」


巡川にとってそういった悩みは経験もなければ、これからしていく可能性もかなり低いものだ。

石丸なんかに羨ましい気持ちが芽生えるのも仕方ない。

私はちっとも思わないが。


「まぁ石は自宅で勉強だな。女子の、しかも巡川の家だぞ?男子なんかが入れるわけないだろ。」


普通そんな家あるわけないが、巡川の家に関しては完全にその通りだ。

男子禁制の家。

入ろうものなら、巡川の夫くらいにならないと無理だと思う。

そのためにはまず、巡川のペースを考えると10年は付き合わないと無理そうだけど。

ちゃんと会話するまで4年、手を繋ぐのに3年、それ以上で3年、という計算だ。

少しふざけて見積もってみたが、強ち間違えてなさそうだ。


「…確かに。…ていうかなんか酷くね。」


後の部分はスゴイ小さい声で言ったけど。

確かに巡川の家に対して、勝手な偏見を持ってしまっていた。

巡川の表情を見る限り、あまり深く聞いてないようで大丈夫そうだが。

と言うより友達っぽいことができることで、これからの展開の妄想でもしているのか一人でニヤニヤしている。


「まぁそうだね。今回はおとなしく勉強しとく。その代わり、どんなことになったかはちゃんと教えてくれよな!」


「ん~~。仕方ないなぁ。その代わり、手伝えよちゃんと。」


「おっけ!!任せろ!!」


話はまとまった。

明日は私と紗那と愛那と巡川が放課後、石丸は不参加。

その後巡川の家で勉強会。

色々あるがテストまではあまり日がない。

大会までもあまり日数がない。

引き入れて、大会までに練習もしなければならない。

引き入れるのはテスト期間中くらいにしないとダメだろう。

先を思うだけで面倒くさいけど、頑張るしかなさそうだ。


もう時間も遅くなっていたし、皆帰りの支度をして相談室を出る。

紅は起こすのもめんどくさいからそのまま置いて、ドアの鍵を閉めずに帰った。

石丸はいつも帰るときは一緒にいないように先に帰っていく。

今も一応、私達の印象は根強く残っている。

だから私達と一緒にいたがらないのか、それとも女子と一緒にいるのがそもそも恥ずかしいのか分からないが、石丸は周りが見えるところでは私達と一緒にいないようにしている。

もちろん誰かにそう言ったわけでもなく、暗黙的にだ。

私と愛那と紗那と巡川は校門まで一緒に帰り、そこからは別れて帰る。

今日の帰り道、紗那と巡川が明日の話をしながら盛り上がっていたが、愛那はあまり話に入っていなかった。


「愛那。どうしたの?ボーっとしてない?」


「ん?いやいや!…そうかな?…もしかしたらちょっと熱っぽいかも。今日は早く寝よ~。」


そう言ってしばらくすると、またボーっとしていた。

今日は色々あったから疲れていたのかもしれない。

これから本当に忙しくなるかもしれないと思うと、私は先を考えるのをやめたくなった。

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