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aI was mixed  作者: 阿賀野基晴
第1章 2人の愛
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第19話:夜桜

石丸の相談を終えた次の日、秋山は学校で私達には話しかけなくなっていた。

まぁ、元々部活の話とかでしか話し掛けられなかったから、あんなことがなくても部活を辞めた時点で話しかけられなくなっていたかもしれないが。

それに加えて、なんでか仲のいいグループの中にいてもあまり発言しなくなっているように思う。

とてもつまらなそうな態度をしている。

でもさすがにコミュ力が高いのか、人への合わせ方は得意なようで、周りには悟らせないようにしている。

しっかり見ないと分からないレベルだ。

私はここ数日しっかり見ていたから少々の違いにはなんとなく気付けたのだ。

一方、石丸は普段通りの感じだった。

昨日の今日であまり調子は良くないのではと思ったが案外しっかり立て直しているように見えた。

これで私はやっと前の状況に戻ったことを痛感する。

石丸から話しかけられることなんてなく、秋山を気にすることもない、静寂の日々が私を包み込む。

と、思っていたのだが…。


「うーーっす。今日は相談とかあんの?」


放課後、石丸が相談室に来るようになった。


「え?何しに来たの?え?また相談??」


冷たい目を向ける愛那。


「うぐっ…。愛那さんいつもながらひどいよ。俺元々放課後やることないからさ、委員会には入れないけど手伝ったりはできるかなと思って。男手も必要だったりしない?」


「しないし、いらないし、呼んでない。」


「嘘です居させてくださいすみません暇なんです。」


頭を下げるのがものすごい早い。


「おーす。ってうわ!!石丸…じゃなかった石井じゃん。」


紗那が入ってきた。


「石丸ってもう言ってるじゃん!!それ、もう皆飽きてるから!特に俺!!最初っから飽きてるよ!!」


「ッチ。じゃあこれからは石って呼んでやるよ。それなら間違えようもねぇだろ。2文字で言いやすいし。いし。」


「うわっ。その小石を見るような目で言うな!!しかも言いやすいって、4文字をバカにしているのか!?どれだけ頑張っても下にしか見られない!」


「はいはい分かったよ石。で、なんでいんの?え?誰かこいつ呼んだ?」


「ちょ、それ呼ばれてないけど友達の家に行った時の下り、止めてほんと!俺昔それあったから!!違うよ!手伝えることがあったら手伝おうと思ってきたんだよ!」


そんなヘビーな思い出が昔あったのか。


「へぇ~。どうする?愛華。」


「え?私??」


いきなりの指名に驚く。


「愛那じゃ頼りないからな。愛華が決めてよ。」


「ちょ、なにそれどういう意味!」


愛那が紗那に飛び掛かって紗那のほっぺをぐりぐりしながら問いただす。

そんなのは無視して石丸に。


「決めるって言ったって、別に私に権限があるわけじゃないけど、好きにしてもらっていいよ。ただ、相談は全然ないからやることないと思うけどね。」


「よっしゃ!!みんなお許しが出たぞ!!」


「こんにちは…ひっ!!」


今度は巡川が入ってくる。


「え?どうして石丸君がいるんですか??まだ何かあるんですか?私、部屋間違えました?」


「ちょ…みんな結構ひどくない?」


巡川にも事情を説明して(といっても事情と言う事情なんてないのだが)落ち着いたところで。


「で、いっとくけど私らも誰か来るまではやることないからね?」


「そうなん?まぁ元々放課後は1人で過ごしてたから、1人よりかはマシだね。」


「え?何?これから毎日来るの??」


「…週3くらいにするよ、そうすればいいんだろ。」


「邪魔だし、部活でもやってろよ。いし。」


「嫌だね!!俺は運動ぜんっぜんできないから。っていうか邪魔って言わないでさっきからずっと傷ついてるよ。」


「うぃ~~す。ん?え~と…石丸じゃねぇか。なんでここにいんだ?」


佐倉先生が入ってきた。

放課後の昼寝の時間なのだろうが、相談室内の人口が増えているから表情があからさまに『邪魔だ』と言っている。


「今日から準相談委員ですので。ちょ、そんな顔しないでくださいよ。みんなマジで俺にひどすぎる…。」


「え~ほんとにいらない。女子だけでワイワイしたい。」


愛那も譲らず石丸を邪魔者扱いする。

実際ほんとに邪魔なのだろう。


「な!佐倉先生はいいのか?!」


「おっさんは別にどうでもいいんだよ。いてもいなくても何もしないのは変わらないし。」


「おい渡辺妹、今なんて言った。俺だってやるときはやるぞ?今から俺の仕事ぶりを見せてやってもいいぞ?あ??」


何で挑発口調なのか分からないが、肩を回しながら首をほぐし、ソファーに座っている石丸と紗那をどかして座る。


「よし…え~~と。相談だから、そうだな…。巡川。お前はもっとハキハキしゃべれ。」


全員が『え?』と言う顔になる。

まさかの相談でもなんでもなく、急に巡川の欠点を突いてきた。

教師の風上にも置けない。


「おっさん余計なこと言うなよ!!!英梨ちゃんだって頑張ってんだから!!」


「一番言っちゃいけないこと言ったぞ!!おい!!」


愛那と紗那が佐倉先生に詰め寄りながら言う。

巡川は少し涙目になりながら。


「ぅぐっ…。私だって頑張ってます…。」


「巡川さんってクラスとかではどんななの?話したり、喜んだり、怒ったりはするの?」


そういえば石丸は巡川がどんな人かは石丸に対しての巡川しか知らないのか。

追い打ちをかける石丸。


「おい、いし!!巡川だって怒ったりするぞ!!げんこつするんだぞ!?!」


「えぇ!なんでそれ知ってるんですか!?」


あ。

昨日帰って、巡川が妹に起こる時、げんこつをすることを愛那と紗那に教えてしまった。


「ごめん巡川さん。昨日私がつい言っちゃって。」


「ひ、ひどいですよ愛華さん…。」


「あ~あ、これはもう石とおっさん巡川のげんこつだな。」


「えぇ!?私がするんですか!?無理ですよ!!」


「いや、受けてくれるよね?ね?おっさん、いいんちょー。」


愛那が睨みながら言う。


「は、はい。受けます…。」


「はぁ?俺は受けねぇぞ!!逆暴力だ!!」


往生際の良すぎる石丸と、往生際の悪い佐倉先生。

本当に教師の風上にも置けない。


「よし!石丸からやるんだ!巡川!いけ!」


「俺は受けねぇって!おい、押さえつけるな!渡辺姉!!助けてくれ!!」


一気に賑やかになった相談室。

廊下まで声が聞こえているのではないだろうか。

騒がしさにうんざりしながらも私は一応愛那に、やりすぎだと抑えに行く。


ドン!!!!!


突如大きな音がして騒がしさが収まった。


「え?何の音だ?廊下か?」


私は廊下に出てみる。


「…いや、何もないけど。何か落としたとかじゃ…。」


私は目を疑ってしまった。

と言うより他の人も目を疑っていた。

床に顔から倒れたかのように沈み、腰が浮いた変な体制のまま動かなくなった何かがそこにはあった。

石丸が床で伸びていたのだ。

どうやら、さっきの音は巡川のげんこつだったらしい。

石丸は動かない。


「あ、あの。俺、教師だよね?君は生徒だよね?落ち着け、少し話そうか。」


ソファーの上で正座になり、口調が変わる佐倉先生。


ゴッ!!!


「ふぅ。すっきりしました。」


ソファーの上と床の上で沈む男二人を愛那と紗那が二人係で廊下に出してドアを閉める。

その間誰も口を開けなかったのは言うまでもないだろう。

多分ないと思うが、私も巡川を怒らせないようにしよう。


************************************


結局石丸が来た日の放課後と、その次の日の放課後も相談者は現れず、また暇な日常に戻った。

石丸は結局二日とも来たが。

まぁ私は別に来てほしいとも思っていないし、そもそも何度も言うが、相談室に人が来るなんてことがレアケースだと思う。

普通は身内で解決するものだろう。

対して普通も分からないけど。


そして今日は土曜日。

本日5月15日より阿原高校では中間テスト約一週間前になる。

私と愛那は近くの(といっても電車に乗って移動する距離だが)ショッピングモールに来ていた。

普段から休日は家で過ごすこともあればショッピングをしたり、食事に行ったり、と私なりには楽しんでいる。

もちろん一人か愛那と紗那とだけど。

今日この日はテスト一週間前と言うこともあり私と愛那はショッピングモール内のカフェで勉強をしに来ていた。

家でできたけど暇になったらそこで遊べるし、愛那からの誘いだっため、断る理由もなかった。

丁度ノートも買いたかったし。

ちなみに紗那は両親が帰ってきているため実家の方で過ごしている。

カフェで簡単な軽食とコーヒーを頼み、私達はテスト範囲を確認する。


「そういえば数Aの範囲追いつくか分かんないって言ってたらしいね。今授業はどのへんなの?」


「一応方程式入る前くらいだと思うけど…。ていうかちゃんと授業聞いてなよ。」


「え~いいよ別に。愛華だってそんなに聞いてないでしょ?」


「まぁそうだけど…。あ、ノート買ってくるんだった。ちょっと行ってくる。テスト範囲表鞄に入ってるから見といていいよ。」


「そのくらい私も持ってきてるし!!あいあい行ってら~。」


ショッピングモールのいいところは中にあるお店は出入りが自由なところだ(もちろん人が中に残っていないと無銭飲食と勘違いされるが)。

私は文具のあるコーナーを探す。

よく来るモールだがどこに何のお店があるかはまだ覚えきれていない。

何しろ超大型モールだから集約しているお店の数もかなりの規模なのだ。

インフォメーション板を探し、文具のある店を探す。

と、そこに。


「なぁなぁ、どこで食べる?あそこは?ピザがある店!」


「あそこはパスタもあるしいいねぇ!他の人は?」


男女6人組がインフォメーション板に向かってきていた。

年も近そうだし、知り合いでもいたらめんどくさいから、とりあえずその場を離れようとしたのだが。


「桜子はどこがいい?」


「あ~私はどこでもいいよ。」


聞いたことある名についつい、頭がそちらの方へ動いてしまった。


「…あ。」


直後、すぐに別の方へ向き、逃げるようにトイレへ向かった。

完全に目が合ってしまった。


「ん?桜子どした?」


「いや、何でもない。」


トイレに到着した私はとりあえず個室に逃げ込む。

個室に入って落ち着いてから気づいたが、わざわざトイレに来ることはなかったな。

目は合ってしまったけど、向こうが話しかけてくるわけないし、気にしすぎていただけだ。

落ち着きを取り戻し、トイレから出る。


「ちょっと、あんた何してんの?」


「わっ。秋山さん…。」


秋山が来ていた。


「私は勉強しに来てるだけだけど…。…秋山さんは?」


あんな一件があったせいか、うまく話せない。

間に耐えられず質問で返してしまった。


「私は…誘われたから遊んでるだけ。別に男をたぶらかしてるわけじゃないから。」


「あ、そうなんだ。…ごめん、私が変なこと言ったせいで、そんなの個人の自由なのに。あの時はほんとにごめん。」


一応気にしてた私、謝っておこうと思い、謝った。


「うっざ。謝られるようなことされてないし。それに個人の自由って、私が男好きみたいじゃん。」


笑いながら秋山は言う。

『え、そうじゃないの?』と思ってしまったが。


「まぁ今日はいい男いなかったし、次は確実に捕まえようかな。その時は邪魔すんなよ。」


「本当に秋山さんが好きになってやってるなら邪魔しないよ。」


「うざっ。何しても関わりたくないくせに。」


秋山は笑いながら私の気持ちを言い当ててきた。


「愛華さんは無口でもコミュ障でもなくて、人を見てないように見えるから。当たってる?」


「…。さぁどうだろ。」


「私のこと、陰で悪く言う人はよくいたけど、直接言ってくる人は初めてだったよ。だから今度は私が愛華さんを観察して直接欠点言ってやる。根に持ちやすい性格だからね。」


最初に会った時の印象に比べて、今はとても本音の方で話してくれてるように思う。

なんでか、私は秋山と話すのがそんなに苦じゃない。

本音で話してもらえる分、裏を勘繰ることがないからだろうか。

そういえば私が人と関わりたくないのは、そういうのが理由だった気がする。


「秋山さんほどの欠点はないと思うけどね。」


「皮肉を言うくらいはできるんだ。ふふ。じゃあ、私もう行くから。」


秋山も戻り、私は当初の目的だったノートを買い、カフェに戻った。

今あったことは別に話すことでもないし、愛那には言わなかった。

謝ったからと言って、話しやすいからと言って、これから秋山と話していくこともない。

何も日常は変わらない。

ただ、校内に一人、話すことのできる人ができただけだ。

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