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aI was mixed  作者: 阿賀野基晴
第1章 2人の愛
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第16話:乱れ桜

翌日の昼休み。

私達はいつものように相談室に集まった。

そこで昨日の成果を巡川に伝える。


「愛華さん、そんなことしてたんですね!?探偵みたいですごいです!!」


「全然大したことじゃないし、むしろ褒められたものじゃないんだけどね…。だからまだこのことは内緒でお願い。」


「うん。分かりました。」


「それから、巡川さんもいろいろしてくれたみたいだね。その…。」


これくらい言うのは難しいことじゃないのだが。

なんだか少し恥ずかしい。


「…ありがとう。」


「!?いえ!!私も大したことしてませんよ!!へへへ。」


すごくうれしそうな顔で照れる。

改まってこんなことを言うと私らしくないように思う。

段々と巡川を受け入れつつあるのだろうか。

愛那と紗那もにやにやしながらこちらを見る。


「あ、そういえば。」


紗那が口を開く。


「クラスの子に秋山さんと同じ中学校の人探してみたら1人いたよ。どんな人か聞いてみたけど、そんなに親しくなかったみたいだ。ただ、愛華の予想は概ね合ってそうだったよ。一緒にいる男がよく代わってたらしい。しかもあまりいい噂はなかったようだな。」


「悪い噂??」


「うん。『女狐』って呼ばれてたらしい。すぐに男にはっぱかけるとか。」


「なるほど…。」


自分で予想を立てておきながら、あまり願わくはなかった。


「いんちょーにはどうする??過去のことだし、触れない方がいいかな?」


紗那の聞いた噂が本当なら、石丸もその一人になってしまうかもしれない。

手を出す前に手を引かせた方が石丸のためになるではないだろうか。


「もし噂通りなら、委員長が不幸になるかもしれないしね。でもまだ委員長には…。」


「俺がなんだって??」


4人がパッとドアの方を見る。

気付くと石丸が相談室に来ていた。

昼休みなのに珍しい。

いや昨日も来てたか。


「なんだよ~。新しい作戦??」


話の内容は聞こえてなかったようで安堵する。

入ってきた石丸はかなり機嫌がよさそうだった。


「皆さんに報告です!!なんと…秋山さんと、今度食事に行くことになりました!!イエィ!!!!」


「え!?ほんとうか!?」


「ほんともほんとの大マジよ!!昨日連絡先好感したからね!!…ってあれ?みんな喜んでない?」


上機嫌の原因は分かった。

だがこれはまずい。

こちらが手を出す前に、先に手を出された。

どうする。

現段階で分かっていることだけでも伝えるべきか?


「あぁ~、とりあえずよくやったねいんちょー。…もう日にちも決まってんの?」


「おう!今週の日曜日だね!!」


ほんとにあまり時間がない。

どうするべきなのか。

秋山が私達の悪い予想とは違えばいいのだが。

もう賭けに出て、食事に行かせた方が良いのではないだろうか。


「…委員長は、秋山さんと話してみてどう思った?」


「ん??どうって?普通にいい子だったよ?既読もちゃんとつけてくれるし、話してて楽しかったしね!!」


「そう。」


「ん??なんだよ。嫉妬か??」


「それはない。」


「それはない。」


「それはない。」


「それはないです。」


4人が一斉に口を開く。


「なんだよ!!とりあえず最後まで失敗しないようにしないと。それでなんだけど…日曜日のプランを考えるの手伝ってください。こういうの俺初めてなので。」


「あ~…おっけ了解。」


「なんだそれ軽いな!じゃ、俺もう行くから放課後また!」


そういって石丸は教室に戻っていった。

相談室に残る私達は、重い空気だけが残る。


「ほんとにどうする??石丸のやつめちゃくちゃ浮かれてるぞ。」


「紗那の聞いて来た通りの人なら委員長ははっぱをかけられた状態ってことかもしれない…。」


「でも…私は日曜日の食事に行くべきだと思います。こういうのよくは分からないですけど、こんなチャンスは逃すと石丸君には訪れないと思いますし。」


さらっと失礼なことを言うが、実際そうなのだ。

一度断ればこんなチャンスは来ないかもしれない

例え秋山がどんな人でも、石丸には関係ないかもしれない。

石丸にとってはどんな秋山でも受け入れられるかもしれない。

それなら私達がどんなことを言ったとしても石丸の秋山への思いは変わらない。

それが例え、秋山による故意の誘いだとしても。


「…まぁ食事くらいでそこまで進展しないだろう。多分。」


確かにどんな意図があるにしろたった1回の食事だ。

何があるわけでもないだろう。


「じゃあとりあえず日曜日のこと考えておこうか。もう部活はいいでしょ?」


「そうだな。委員会だから相談室にも誰かいないといけないしな。」


話がまとまったあたりで昼休みが終わる。

腑に落ちないが、石丸の相談はあくまで「付き合えること」だ。

私達がそれをしないように何かすることはできない。

と言うかしても意味がない。

とりあえずしばらくは石丸の意思に従うことにした。


**************************


6時限目の授業中。

相変わらずクラス内では浮いている私達だが、今ではヒソヒソ噂されたりはしていない。

さすがに1ヶ月もたてば噂としても新鮮ではなくなる。

ちなみに石丸や秋山と交流を持ち始めたが、彼らが私達のことを他の人に話したりはしていないようで、未だに私達の印象は不良のままだ。

まぁ変に気に留められなくなったし、話しかけられたりしないから私は現状に満足している。

すれ違う時に大げさに避けられたりはするけど。


昼休みが終わってからずっと石丸と秋山のことを考えていた。

当初の目的としては秋山の人間性を知ることでアプローチを考えて、石丸との仲を深めさせるつもりだったが、まさかこんなことになるとは。

本当はこんなこと気にするのは御門違いなのだろうが、一度首を突っ込んでしまったなら話は変わってくる。

御門違いだからこそ、これに対して私達が何か言うことも、何かすることも難しい。

もういっそ気にしない方がいいのではないだろうか。

そうだ、そうしよう。

はい、もう考えません!


頭の中を整理し、達成感を持ちつつ(何も達成してないけど)大きく息を吐いた。

後ろの席からは愛那の寝息が聞こえてくる。

秋山の方を見ると1番前の席なのに机の下でスマホをいじっている。

石丸は…何か一生懸命書いている。

私も今の板書をノートに写そう。


*********************************


授業が終わって放課後に移行する。

ワイワイしながらみんな放課後の活動の準備をする。

前も言ったが私の学校は部活か委員会の所属が絶対条件で、放課後の週何度かは活動を必ずしなければならない。

活動内容は部活、委員会の他に図書館で勉強したり、教室で勉強したり…と、とにかく学校で何かをしていればいいことになっている。

一応は5時までは活動し、それ以降は帰宅してもよいことになっているのだが、結構バレないように帰ったりする人もいる。

だから私達も5時までは委員会で残らなければならないことになっている。

当番制にして私はどこかで勉強でもしたかったのだが、それは叶わなかった。

ちなみに委員長、ここでは生徒委員会の方の委員長は学校で寝たりして合法的に時間をつぶしている、らしい。

というわけで(どういうわけだ)、私達は相談室に行く。

と、その前にトイレに行く。

女子トイレではよく、女子の愚痴とか、化粧直しとかが蔓延っているようなそんなイメージが強いが、まったくその通りである。

まぁ化粧直しなんてごく一部の人だし、女子の悪口なんてリスクが高いからあまり言われていないように思う。

女子の悪口は。


「さくらこ、今狙ってるのはどうなの??」


「ん~。スペックは可もなく不可もな…いやちょい不可かな~。ってか狙ってないし!?私は遊んであげるだけだよ~。」


私は思う。


「どうせ自分から仕向けたんだろ~?ほんと、いつもすげぇと思うわぁ。」


今思い知らされた。


「全然すごくないよ~、付き合ったりはするつもりないしね~。好意を持ってもらえるのはうれしいけどねっ。あはは。」


情報収集はトイレでするものだったのだ。


個室から聞いてただけだから何人いるのか分からなかったが、個室のドアがいくつか開閉する音が聞こえ、会話もなくなったタイミングで私は外に出た。


「お!ここにいたんだ!」


トイレの外に出ると廊下の少し先に石丸がいた。

と言うより教室から今出たところのようだが。

ノートを持って駆け寄ってくる。

だが、まずい、非常に。


「ちょ!…ちょっと待って!」


小声で叫んだ。


「え!?なん…っ!!」


大きな声を出そうとしてたからすぐに駆け寄って口を塞ぐ。


「ちょ…黙って!!!」


騒がれたら困るので、あまり使いたくなかったが、私は愛那がよくやる(意図的ではないが)睨みのようなものをして凄む。

案の定、石丸は固まって指示に従ってくれた。

今この場で大きな声を出し、中に聞こえてしまってはまずい。

いや、石丸の声が聞こえること自体は別に中の秋山達に聞こえても大丈夫だろう。

まずいのはトイレの前で、今そこから出たばかりの人と会話をすることだ。

ここはバレずに早く立ち去らなければならない。

私はそのまま石丸と早歩きで教室に戻った。


「っぶはぁ!!な、ななんですか!?すみませんすみません!!」


マネして凄んだだけなのに、大分ビビらせてしまった。


「あ、いや、こっちこそごめん。ほら、えっと…中にゴキブリいたから大声出すと出てくると思って。」


「え?あ~そうだったんだ??声出したら逆に来ないんじゃあ…。ひっ!!」


そこから先は言及しないでと言わんばかりに睨んだ。


「ふぅ…、それでどうしたの?わざわざ私じゃなくて相談室に行けば愛那達がいるのに。私に言わないといけないこと?」


「あ、いや。ほかの人はなんていうか…怖いしバカにしてくるし会話にならないしで…。」


「あぁ…。」


納得してしまった。


「それでさっき色々考えたんですけど、日曜日のプラン。」


授業中に頑張って書いていたのはそれだったのか。

鞄からノートを取り出そうとする。


「あぁ~。それ見るのはやっぱりみんなで見よう。あんまり私だけでやってもどうせ後でみんなの意見聞かないとだし。」


「う…やっぱりか。…少し嫌だけど、相談室にいくかぁ。」


大きくため息を吐きながら折れてくれた。

今聞いてもよかったが、どうせならみんなで聞いた方がいいだろう。

それに2人で話すなんて、最近交流が増えてきたからといってあまりしたいものではない。


「先に行ってて。私、片づけて行くから。」


授業が終わった後トイレに行ったからまだ帰りの支度をしていなかった。


「んじゃ、またあとで。」


そういって石丸は相談室に向かって行った。


その間、私はまた迷っていた。

本当に秋山とのことをどうするか。

日曜日に遊ばせておいて脈がないことを石丸自身に勘づかせるか。

それとも今日のことをもう石丸に打ち明けるか。

また迷いだした。

いやでも、知っているのは私だけだから、このままなかったことにすればいいんじゃないだろうか。

そうしよう。

石丸には日曜日頑張ってもらおう。


帰りの支度をして教室を出る。

思えばこの出るタイミングをもう少しずらせばよかったのかもしれない。

私が出るタイミングは、トイレから出てこちら側に向かって歩いてきた人と鉢合わせるタイミング的にはぴったりだったのだろう。


「あ、愛華さん!やほー!今日は部活来れる??」


秋山に声をかけられてしまった。

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