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aI was mixed  作者: 阿賀野基晴
第1章 2人の愛
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第15話:魔性の桜


「ただいま~。」


時計の針が20時半を回った頃に愛那と紗那が帰ってきた。


「おかえり2人とも。ご飯もう作ってるよ。」


早く帰れたこともあり、私は既に夕食を作っておいた。

メニューはハンバーグとポトフ。

冷蔵庫の中の材料で、できるものを作ったメニュー。

愛那と紗那はお腹が空いていたのか手を洗ってすぐにテーブルについて、夕食を食べ始めた。


「今日、委員長は秋山さんと話せたの?」


今日の私がいなかった部分を聞く。


「あ~色々大変だったよ…。収穫はあったんだけどね。」


*******************************:


放課後の後半

部活が終わる時間くらいに愛那と紗那と巡川は昇降口で待っていた。

それまでは何をしていたかと言うと、先日のように相談室で遊んでいた。

昇降口で待っていると、最初に来たのは石丸の方だった。


「おお~。いんちょー!対策案思いついたよ!そっちはちゃんと連絡先もらえた?」


「え!ほんとに!?ごめん俺の失敗のせいで、ほんとにありがとう!!そして…連絡先いただけました!!!犬の写真送ってくれって言われたけど…。」


「お、おお、よく頑張ったね…。」


石丸は部活終わりと同時に自分から連絡先を教えに行ったそうだ。

なかなか今日の石丸は頑張っている。

前半は盛大に失敗していたが。


「それで、犬の件なんだが、巡川んちの子犬を譲ってくれるそうなんだが、石田は大丈夫か?」


「石丸だって!!ってか本当に!?巡川さん!俺んちは猫も飼ってるからペットは何でも歓迎してるから!譲ってもらえるなら是非お願いします!!」


「あ、はははい!!」


まだ石丸には完全に慣れていない巡川。

それでもよくあの案を出してくれた。

少しずつだが成長しているのだ。


「…えっと、じゃあ、どうやって犬をもらおうか?」


「あ、そっか、学校に連れてくるわけにはいかないね。巡川ちゃんちってここから近いんだっけ?」


「はい!学校から徒歩10分くらいです!」


「じゃあ今日、今から行ってもいい?」


犬の写真を撮るので、なるべく早く石丸に譲っておきたい。


「え!?今日ですか!?…えっと今日って…火曜日ですか。えーっと…家の外まででもいいですか?」


急な提案に戸惑うが何とかOKしてくれた。


「なんだよ~部屋が散らかってるとかか?」


「まぁまぁ紗那、あまりそんなの聞くようなもんじゃないよ。デリカシ~。」


「うっ…。まともなこと言いやがって、ごめんな巡川。」


巡川は顔を赤らめながら俯いている。


「じゃあ今から行こうか。」


靴を履き替えようとしたその時、後ろから呼び止められた。


「あれ?みんないるじゃん。もう帰ったかと思ったよ~。」


秋山が着替え終わって昇降口に来た。

会わないようにしていたわけではないが、できれば出会う前には学校を出たかった。

変に会話をしてしまうとまた何か口走ってしまうかもしれないからだ。


「よっす~秋山さん。お疲れ様。今日は委員会の仕事してたから途中で抜けちゃったわ。」


嘘はついていない。


「あ、そうなんだ!愛那さんたちもお疲れ様。ここで会えてよかったよ!実は愛那さんたちとも連絡先、交換しようと思って~。」


そういいながらスマホを出す。


「おお!本当に!?大歓迎だよ!」


「わ、わわ、私もですか!?」


急展開に驚く巡川。

めちゃくちゃ嬉しそうだ。


「もちろんだよ巡川さん!!前から友達になりたいと思ってたんだぁ!私、学校の全員と友達になるつもりだったしね~!!中学の時からの人も合わせると、これで500人くらいなんだ~。」


「500人!?す、凄すぎですよ。」


その数に驚く巡川。

だが、愛那と紗那は一瞬、少しだけ眉をひそめた。

一瞬だけ。


「おっけ!じゃあ私のID言うね!」


「うん!りょーかい!」


愛那、紗那、巡川全員、秋山と連絡先を交換できた。

石丸が自分だけの優越でなくなったことに少し不満そうだが、別にライバルとかになるわけじゃないし、これで何かサポートができるならそれに越したことはない。


交換した後、秋山は帰っていった。

そのあと私達は4人で巡川家へと向かうことにした。

愛那と紗那は別に用事はないのだが、ついていく理由は巡川の人柄からして自明だろう。

その道中で石丸が言う。


「そういえば俺。愛那さんたちの連絡先持ってないや。…。」


「うん…。え…いるの?」


「え…ダメなの?」


「私はいらないけど。」


「私もいらない。」


「私もいいです。」


満場一致だ。


「なんだよみんなして!!俺はそういう扱いなの!?もう固定されてんの!?こういう時って嫌でも交換するもんじゃないの!?自分で嫌でもって言っちゃったよ!!!」


石丸の嘆きに少しだけ笑う。


「も~仕方がないなぁ。ほい。」


そういって愛那は石丸にスマホを渡した。

自分のIDが開かれた状態で。


「用がないとき以外は話しかけてくんなよ。」


紗那も言い回しは酷いが、自分のIDを見せる。


「頼まれたって話さないからな!!……はい、登録完了。」


石丸が登録を終えて愛那と紗那にスマホ返す。


「…巡川さんも、スマホ貸して?」


「え、私本当にいいです。」


スマホを催促する石丸に対し、当たり前のような顔をして言う巡川。

巡川にとって交友関係とはあくまで女子とのものなのだ。

男子と交友関係になったり、ましてやそれ以上なんてまったく頭にないのだ。

故に、巡川は断ること自体悪いと思っていない。

というより今までこんな機会がなかったから断り方なんてわからない。

これが巡川の普通なのだ。


「ははははははっ!!!巡川ちゃん、最高!!!はははっ!!」


「石丸どんまい!!くくくっ。」


笑いながら石丸の背を叩く2人。

笑いすぎて紗那もちゃんと名前で呼んでいる。

なぜ褒められたか分からずに巡川は「?」顔を浮かべる。

石丸は顔を赤らめながら巡川に差し出した手を引っ込めた。


「…あぁぃ!!背中叩くのやめて!!もぉ~~ああ~~!!なんだこの感じ!!」


「…なんか…ごめんなさい。」


「いや!こっちがほんとにごめんなさい!!」


といわけで結局石丸、愛那、紗那だけ連絡先を交換した。

もちろんなのだが、巡川と愛華達3人は連絡先を交換している。

今の相談室メンバーができた次の日には交換していた。

愛華は交換しないように途中で部屋を抜けたりしていたが結局最後には交換されてしまった。

会話量と言ってはあまり多い方ではなく、今のところは本当に委員会の話や放課後、昼休みどう過ごすかと言ったくらいだ。


巡川家に到着。

というよりも、家が見えるくらいのぎりぎりのところに到着した。


「…あの、ここで待っててください、すぐに連れてきますので。」


巡川家は2階建ての一軒家。

周りには他にも一軒家やアパートが並ぶ住宅地だ。

ガレージには乗用車一台と中型バイクが駐車していた。

この時間だし、親も仕事から帰っているのだろう。

そういえば、紗那たちは巡川の家族構成を知らない。

いつか機会があれば聞いてみたいものだが。


「…っていうか遠すぎじゃね?かなり遠いところで待ってるよ俺ら。」


「女の子なんだから、男がいたら見せたくない物とかもあるんだよ!!!」


「へぇ~。…。表札すら見えない距離だけどね。」


玄関が開く音が唐牛で聞こえ、巡川が走ってくる。

両手で小さな犬を抱えながら。


「あの、石丸君、かわいがってくださいね。」


そういいながら子犬を渡す。

子犬と言ってもここまではしっかり巡川が飼っていたのだ。

少し涙ぐみながら別れを惜しんでいる。


「めちゃくちゃ可愛い!ほんとにありがとう巡川さん。大事にするよ。」


石丸もここではしっかりとした返事をする。

子犬もかなりかわいいし、寝ているのかとてもおとなしい。

犬を譲り受けた後巡川はそのまま帰り、愛那達も駅へと進む。

石丸も電車通なので駅までは一緒だ。

同じ方面の電車だが車両までは一緒に乗らない。

前も言ったが、石丸に対する目もある。

男子だし、愛那達の立場もあり、あまり一緒にいるところは長く見られない方がいいだろう。


駅に着き石丸はコンビニへ行って愛那達とは別れた。

子犬は石丸の服の中に隠して電車に乗るつもりらしい。

ばれずにうまくいってほしいものだが。

愛那と紗那はそのまま改札をくぐり、電車に乗って家へと向かった。


「今日はぎりぎりの戦いだったなぁ~。」


「ほんと、でも活動してるって感じで楽しいな。やっぱ。」


「そうでしょ?まぁ、このまま何もないといいんだけどね。ほんと。」


***********************************


夕食中、愛那と紗那は愛華に今日の出来事を話した。

石丸の嘘、打開策、巡川の功績。

伝えたのはこのあたりだ。


「委員長も難儀だなぁ。よく打開したね2人とも。巡川さんにはちゃんとお礼言いなよ?」


「そんなお母さんみたいなこと言わないでよ~。ほんとにどうしようもないと思ったんだから。」


「それにしても部活もしてないのに今日は疲れたな。愛華は放課後で何かできたのか?」


そうだ。

私の放課後の内容はまだ言ってなかった。


「…とりあえず、これ見てみて。」


私は自分で作ったまとめを見せる。

実はあの後。

私が一瞬諦めた後、再度ちゃんと調べ始めたのだ。

秋山のSNSをさかのぼりまくって、ほとんど読んだ。

他にも同じ中学校だった人で仲がよさそうな人との会話や、写真など。

見れる範囲は全て見た。

このために秋山の出身中学校を探ったのだ。

まるでストーカーみたいだが、目を瞑ってもらいたい。

やると言ったらやる女だということで目を瞑ってもらいたい。


「それで、全部見て大体でまとめたんだけど。」


「…これで秋山さんの性格を予測したってこと?」


「う~ん。一応そうなんだけど。性格よりも、経歴?かな?」


私は秋山のツイートが少ない期間を各アカウントごとにまとめた。


「ん?どういうこと??秋山さんのアカウント以外にもあるの?」


「いや、これは全部秋山さんのアカウントだよ。…多分ね。」


その数は20個を超えていた。


「え??どういうこと??」


私が調べることができた秋山の現アカウントの期間は高校に入学した4月くらいからの物だった。

それでも一日のツイート量がかなり多かったが。

だが4月が始まった頃はあまりツイート数がなく、入学してから3週間たたない頃はツイートがほとんどされてない日があった。


「ツイートがほとんどされてない期間。どういうことだ?忙しかったのか?」


「いや、多分なんだけど。ツイートがあまりない日は後で消してるんだと思う。ほとんどされてない日はする気にならなかったんじゃないかな。」


「ん?どういうことだ?」


「?」顔を浮かべる紗那に対して、愛那が閃いた。


「あ、わかった。人間関係。それも…恋愛か。」


「そう!多分別れて、その後、思い出だったツイートは消してるんだと思う。」


この考えが100%正しいとは言えないが、私の自信的には90%はかたい。

この考えに至ったのは、秋山のツイートに対するリプライ(返信)を見て確信を持った。

ツイートを消してもその返事は見ることができる。

私は、秋山によくリプライを送っている人のツイートも遡ってみていたのだ。

本当にこんなこと言うのもやるのも恥ずかしいことなのだが…。

そのリプライには彼氏がいたかのような文面が多数あったのだ。


「それで、このアカウント数なんだけど。名前が『外してください』とか『新しいの作りました』とかになってて、自己紹介欄にどんどん次のアカウントIDがあったの。これをたどると秋山さんにたどり着くよ。」


「それにしてもこの数。それからツイート数。もしかして…。」


「うん。かなり男をとっかえひっかえしてる。中学の時からね。」


アカウントは多分消し方が分からなかったのだろう。

そのまま「使わないこと」だけを示して次のアカウントを作っていたのだ。

とすれば、アカウントを変えるような大きな心境の変化があったはずだ。

それが多分恋愛関係なのだろう。

これも現アカウントと同じくツイートを見たことによる予想だ。

だが多分正解だろう。

重要なのはここからだ。


「このまま委員長が秋山さんと付き合えたとして、うまくやっていけないと思う。」


「…。」


多分、男癖が悪い。

秋山が交際を申し込む立場なのか、申し込まれる立場なのかはわからないが、それでもこのアカウント数だ。

ツイート内容もどれも同じような感じで、たまにツイート数が激減し、別のアカウントになる。

この繰り返しだ。

それでも100%とは言い切れないから、多分なのだ。


「このこと、石丸に言う前にちゃんと確かめないとね。愛華どうやって調べる?」


「一番いいのは本人に『今までどれくらい恋愛経験ある?』って聞くか、秋山さんと親しい人に聞くかだけど、私達じゃあどちらも厳しそうだよね。」


こういう話はある程度の仲を深めたものか、コミュ力が高い人にしかできない。


「よし、じゃあ私のクラスに同じ中学の奴がいるか聞いてみる。もしかしたらいるかもしれないからな。」


紗那が動いてくれそうだ。


「ありがとう紗那。私がやってること、あんまり褒められたことじゃないから、変に誤解されそうになったらすぐやめていいからね。」


「おう!頑張るな~。」


「とりあえず、今日はみんな頑張ったね!早く寝てしっかり休も!」


夕食を食べ終わった愛那と紗那。

お皿をシンクに持っていき、そのまま私も連れてお風呂に入る。

浴室は普通の広さだが3人入るとやはり少し狭い。

身長も女子にしては高い方だし。

浴槽につかりながら疲れからかあくびが出る。

愛那と紗那は向き合って互いの髪にシャンプーで泡を立てる。

私は考え事をしながら浴槽にもぐった。

私の悪い予感が外れるよう祈りながら。

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