表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
aI was mixed  作者: 阿賀野基晴
第1章 2人の愛
15/71

第14話:嘘つきの石

あれから出身中学校と携帯番号を入手した私は家へと向かっていた。

佐倉先生は私にそれを教えた後、相談室のソファーでまた居眠りを始めた。

弱みを見せつけた後なのに、また弱みになりそうなことを平然とするのは、自分の意思を曲げないスゴイところではある。

その使いどころと、この人でなければの話だが。

多分話してる最中にはもう、少しめんどくさくなっていたんじゃないかと思う。

終わった瞬間寝にいってたし。

ほんとに教師やめればいいのに。


家に着いてパソコンを立ち上げ、早速作業を始める。

学校でケータイを使っても出来たが、特にいる意味はないので家でやることにした。

パソコンの方が操作しやすいという点もあるし。

私が知ろうとしているのは秋山が本質的にどんな人物かだ。

もちろん悪い子だとは思っていない。

どんな子かを知ることで、今後の作戦も立てられるはず。

ということで、私はSNSのアカウントを作る。

石丸の情報だとSNSによく出没するらしい。

この言い方だと規格外の物が出たような物言いだけど、そんな言い回し今はどうでもいい。

とにかくSNSによくいるらしいから、私も同じ土俵に立つところから始める。

SNS自体は昔登録したことがあった。

大したことをせずにすぐやめてしまったけど。

だからどんな風なものか、どんな機能があるのかは大体わかっているのだ。


「名前や自己紹介…打ち込む欄多いな。めんどくさ…。」


アカウントの設定もサクサクこなしていく。

名前は…本名にする必要もないか。

適当に「中村麻衣」とかにしておこう。

自己紹介欄とかその他は今は考えずに、とりあえず必要な欄を埋め、アカウントは完成した。

ここからが本番だ。

最近のSNSは登録と同時に電話番号を登録しなければならない。

つまり、電話番号から検索をかけることができる。

これを利用して秋山桜子本人を特定するのだ。


「あ、そういえば鍵機能みたいなのもあったっけ…。全然考えてなかった…。」


鍵機能とは本人が許可していない人に対しては自身のページを閲覧できないように制限する機能だ。

これをやられていたら手の打ちようがない。

鍵をかけていないことを祈って検索にかける。

検索をかけると秋山のアカウントが出てきた。

アカウント名が「さくらこ」だから間違いないだろう。

しかも鍵はついていない。

めちゃくちゃ安堵する。

これで秋山の呟きとか色々が見れる。

これを見ることで大体の人相を予想していく作戦だ。


余談だが私が思う鍵をかける女子は以下のパターンがあるように思う。

あくまでこれは私が勝手に思っているだけだが。

・本当にSNSに興味がないけど作ってみて鍵機能を何となく使ってみてるミーハー女子

・嫌いな人に見られたくない(愚痴や不満用)自称裏あり女子

・現実で絡みがない人からはとにかく絡まれたくない、見られるのも嫌な自意識高い系女子

・病み女子


余談はさておき、秋山のアカウントページを見る。

確かに一日の呟き量は多い。

…っていうか何だこれ。

授業中も呟いているじゃないか。

かなり画面をスクロールしてようやく呟きの日付が変わった。


「…。」


この量で1日分だけとか…。

気付いた時、私はパソコンから離れ、リビングでテレビを見ていた。


*******************************


「今日の部活は部活にあらず!どうにかして秋山といんちょーを仲良くさせるよ!」


「わ、私もできたらお願いします!」


部室で着替えながら愛那、紗那、巡川は意識を高める。


「そういえば愛華は?」


「愛華は今日休むって~。多分私達とは別の作業をしてると思うよ。」


愛華は愛華でできることをしている、と愛那は伝えた。

愛那の予想では秋山の情報収集だということは分かるけど、方法は分かってない。

まぁそこは愛華に任せておくことにしている。

準備ができて体育館に入ると、いつものように部員はアップ前のストレッチや自主練、駄弁ったりをしている。

まずはここが最初のチャンスだ。


「よーす秋山さん。今日もがんばろうね~。」


秋山は1人で柔軟をしていたから話すタイミングとしては完璧だ。


「あ、愛那さん、一緒にがんばろうね~。」


「よっす秋山さん。…あ~、秋山さんって趣味とかあるのか?」


紗那が焦ったのか、いきなり話題を振り出した。

愛那が「ちょ!いきなりすぎるって!」という視線を向けるが、紗那もわかっているようで「やっちまった」って顔をしている。


「趣味??う~~ん買い物?とかかな?えへへ。」


危ない危ない。

軽く返してくれたからよかったものの、変に怪しまれてもおかしくはなかった。

運よくうまくいっただけなのに紗那は愛那にどや顔を返す。


「紗那さんはどんなのが趣味なの?」


「私?私はそうだな…りょ、料理とか?」


それは趣味じゃなくて当番なんだが。


「うわぁすごい!!なんか女子力って感じだね!うん!私の趣味なんて誰でもできるようなもんだしね。」


「い、いやいや!私も買い物とか結構好きだよ!紗那なんて料理とか言ってるけどあれだから、ゆで卵くらいだから。巡川ちゃんはどう?」


「ちょ、おまえ。今私をバカにしなかったか?」


「わ、私も、はい!好きです!!」


紗那を無視して巡川へ。

巡川はいつものように緊張している。

今日は愛那の後ろに隠れ、緊張のあまり簡単なことしか返せられない。

ちなみに愛那と巡川は少しづつ仲が深まっており、愛那の呼び名もだんだん友達っぽくなってきている。

紗那は初めから呼び捨てだけど。


「おーい、いんちょー!いんちょーは趣味とかある?」


ここで当初の作戦通り、石丸を話に参加させる。

本当は巡川にももっと会話をさせたかった愛那だったが、後ろで満足そうな顔をしているので良しとした。

その顔を見た紗那は呆れた顔をしていたけど。


「お、俺!?えーっと………。」


「早く言えよ!」と言った表情で睨む愛那と、「急に聞かれても困る!」と言った表情で怯えながらも睨む石丸。


「そうだ、犬を飼ってるから、趣味って言ったら散歩かな。」


まともな返事だ。

それにしても緊張で慌てふためくと思ったけど意外としっかりしている。

まぁ変なところを見せて引かれたりしないように、石丸も努力しているのだろう。

いい返答をしただけあって、会話は続く。


「へぇ!石丸君犬飼ってるんだ!私も飼ってるんだ~。ミニチュアダックスなんだけど、石丸君のはどんなの?」


共通の話題でうまく会話がつながった。

お互い犬を飼ってる偶然なんてよくあるものだが、ここではその偶然にも奇跡性を感じる。


「え?あ~…チワワだったかな?ごめん、たしか雑種なんだけど、よく覚えてなくて。」


「うわぁ!絶対可愛いじゃん!!写真とかないの?」


「えっとごめん、写真はないんだ…。うちの犬撮らせてくれなくて、逃げちゃうんだよね。」


「え~まじかぁ。残念。…じゃあ撮れた時見せてよ!後で連絡先あげるね!」


「え!ほんとに!?おっけ、わかった!」


切りよくストレッチを終えて部員全員も整列し始めている。

思った以上に会話が弾んでいたし、しかも連絡先ももらえることになった石丸。

っていうかまだ持ってなかったのか。

これには相談室3人も嬉しい状況だ。

3人が石丸に詰め寄り、ねぎらいの言葉をかける。


「やったないんちょー!よくやったよ!」


「すごいです!ああやって仲良くなるんですね、参考になりました!」


「たまには岩丸もやるじゃねぇか。もしかして犬飼ってること知ってたのか?」


「…。」


ねぎらっているにも拘らず、俯いたまま反応しない石丸。

巡川みたいに固まってるのだろうか。


「…おい、せっかくボケてやったのにツッコミしろよ。」


さすがに紗那も待ちきれずに言う。


「………どう…うか。」


「え??」


男の声にしてはか細い声だ。


「…俺、本当は犬じゃなくて猫飼ってるんだけど、どうすればよいでしょうか。」


「…。」


言葉をかけることなく愛那と紗那で石丸の肩を持ち、体育館の外に連れ出す。

巡川が空気を呼んで、つたない言葉で秋山に部活を休むことを伝える。

まるでその光景は、不良が人気のない場所へ連れ出すかのようなものだった。


*******************************


「なっっっっにやってんだぁあぁああああ!!!!!!!!!!」


あの後、4人は相談室に来ていた。


「えぇえええなに!なに!?なんだぁ!?!?」


寝ていた佐倉先生が飛び起きるが無視。


「ひぃいいい!ごめ、ごめんなさいっ!!何かしゃべらないとと思って、ペットの話しようと思ったら秋山さんが犬を飼ってることを思い出して…。つい…ね。」


「つい」のレベルじゃない。

取り返しがつかないぞ。


「そんなの…嘘ってバレたらどうしようもないですよ?」


「う…。」


巡川の言葉にさらに気を落とす石丸。


「はぁ~…まぁやってしまったもんは仕方ないよ。」


紗那の言葉に少しだけ表情が晴れる石丸。


「…打開できないけどな。」


辛辣な言葉をつなげる紗那に、表情が二段と沈む石丸。


「本当にどうするよ。今から犬飼う??」


「…犬を飼うお金なんかないよ!そんなこと出来っこねぇ!おわたー、俺おわたー。」


頭を抱えながら崩れ落ちる石丸にもはやかける言葉はなかった。

唯一を除いて。


「おい、お前ら、無視すんなよ。なんかあったのか?」


佐倉先生が声をかける。

その言葉にも、先生にも誰も期待の目はむけなかったけど。


「…お前ら、その目は何だ…。」


「いんちょーが取り返しのつきそうにない嘘をついたんだよ。犬を飼ってるって。おっさん…そういう嘘の打開策とかってある?」


「犬?う~~~~ん…。死んだことにしたら?」


この教師は。

ほんとうにダメ人間だ。

ごみクズだ。

教師辞めてしまえ。


「う~~んどうしよっかぁ。」


佐倉先生を無視して考えを巡らす。

無視してることに対して佐倉先生は何か文句を言っているが、まぁ無視する。


「とりあえず大石、お前は体育館に戻れよ。連絡先は持ってるに越したことはないからな。」


「もうずーっと誰だよ。石丸行きます。」


あまり強いツッコミはできず石丸は一人で体育館へと戻った。

と言うことで相談室に残った3人で策を考える。

その前に、そういえば練習着のままだった。

体育館の部室に戻り着替えと荷物を持ってくる。

体育館の中は通らずに行けるから、変に部員に見られることもなかった。

部室で着替えた後荷物を持って相談室に戻る。

戻ったのちにソファーに座って先の策を考え始める。

ちなみに佐倉先生はもう職員室に帰ったのか相談室にはいなかった。


「…ぜんっぜん思い浮かばん!!!」


愛那が勢いよく立ち上がり、早々に投げ出す。


「あぁぁうるさい!!考えてんだから!!!巡川だって集中してんだぞ!?」


見ると、巡川は頭に両手の人差し指をさしながら考えに耽っていた。

可愛さにちょっと笑いそうになったけど愛那は耐えた。


「勉強よりむずいよこれ~。」


嘆きながらソファーに倒れるように座る。

ボフっという音が響いた。


「犬は実は借りてて、もう元の家に返したことにするとかは?」


「そんな少しだけの間を趣味とかって言えるのか?…まぁ言ってもよさそうだけど…。」


「その程度のことを趣味と言うような奴って見られないかな。秋山さんがどんな人間か分からない内は下手に手が打ちづらいね。」


秋山が仮に嘘とかを許せない人だったら、仮に冗談とかを聞き入れないタイプだったら、下手な言い訳はできない。

今まで話した感じからするとそんなに悪い子でもなさそうだし、ちょっとしたことにも寛大な気がする。

気がするだけだから下手なことはできない。


「う~~ん。私の家の犬を1匹あげるくらいしか思い浮かばないです…。」


「え!?」


考えあぐねていた巡川の案に2人が驚く。


「えぇ!?何ですか??」


「それができるならそれでいこうよ!!っていうか巡川ちゃん犬飼ってるの!?」


「え、あ、はい!でもチワワじゃなくてプードルですけど、この前赤ちゃんができたので何匹か増えたんですよ。だから親の知合いの人に何匹か譲る予定だったんですけど、頂いてくれるなら是非です。」


「犬種はなんか適当にごまかしてたし、いけるんじゃないか!?あとはあいつの家が犬も飼えるかってだけだな。」


なんとかしのげそうになってきた。

あとは石丸に犬を飼えるか聞いて、巡川が犬をあげれば解決だ。

秋山には石丸が犬の犬種を全然知らなかったことにすればいい。


「よし!とりあえずこれで連絡先もらっても大丈夫だな!!…っていうか、あいつ一人で連絡先ちゃんともらえるのか?なんだかんだで秋山に忘れられたりな。」


「あ~確かにありそうだね。終わる頃に昇降口で待ってみよっか。」


帰る時には必ず昇降口を通らないといけない。

ここで石丸か秋山を待ち、連絡先の交換をしていないなら交換するようにすればいい。

とりあえずはこれで大分距離を縮められることだろう。


「巡川ちゃんナイスアイデアだよ!ありがとうね!」


お礼を言いながら抱き上げ、ぐるぐる回す。


「わぁぁ!ありがとうございます!ありがとうございます!!」


「何だこの光景。」


いつもは一緒にふざける紗那も、愛華がいない今日は冷静だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ