第1章プロローグ
家から駅まで歩いて10分。
駅から50分ほど電車に乗り、またその駅から歩いて5分の場所に私立阿原高校はある。
本日4月5日は阿原高校の入学式だ。
私、渡辺愛華は朝6時に起床し身支度を30分ほどで済ませ入学式への支度をする。
寝起きは悪くない方だからと前日にほとんど準備をしていなかったことを、やはり少し後悔した。
この支度が自分のだけならここまで後悔しないのだが。
ともあれ私は、今日から高校生なのだ。
制服を着てネクタイを締め、買ったばかりの新しい携帯電話を持ち、人生初の義務でない学校生活に期待と希望で胸を膨らませながら学校へ向かう。
新たな友達と部活や勉強に励み青春を謳歌するのだ。
―なんて、思えたらよかったのだろう。一般的には。
制服を着てネクタイを締め、買ったばかりの新しい携帯電話を持ち、前髪を目まで下ろして家を出る。
予定の時間よりだいぶ出発は早いが計画通りだ。
誰とも会わずに済む時間。誰とも話さずに済む時間。誰とも友達にならずに済む時間。
入学式その日に私は、誰とも出会わないために誰よりも早く、学校のトイレを目指した。
先にトイレに籠ってしまえば、最後ぎりぎりのタイミングで教室に入れるからだ。
高校生活は最初が肝心だ。
「友達はいらない。」
私の高校生活が始まる。