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白と黒  作者: 9741
第1章 告白
5/90

6歳の演技

 今思えば、クロちゃんの存在を公にするのは、軽率な行動だったと思う。

 だけど……。


「(あの時は小さかったから知識が足りなかったんだよ)」


 六歳の子供に因果応報、自分の行動がどんな結果に繋がるかなんて分かるはずがない。まさか見えない友達を自慢したことで、見える友達が少なくなるだなんて、あの頃の僕は考えもしなかった。


「(そのおかげで俺はもう少しで消えるところだったんだぞ!?)」


 当時、専門医による治療とカウンセリングで、クロちゃんの存在は一時消えかけた。消えたくないクロちゃんは僕に、治ったふりをするように言ってきた。嘘をつくのは子供心に気が引けたが、僕自身もクロちゃんには消えてほしくなかったので、言われたとおりに演技をした。


 小さい僕は必死に演じた。自分は正常だ、自分は普通だ、見えない友達なんていない。そう大人達に告げた。それは同時に自分は嘘つきだと認めてしまうことにも繋がるが、クロちゃんを守るため、僕は正常な子供を演じた。


 僕の子役俳優も裸足で逃げ出すような演技のおかげで、クロちゃんは消えずに済み、今に至る。今年でこの脳内寄生虫とは十数年の長い付き合いになる。


「(人を虫けらみたいに言うな!)」


 子供の頃は見えない友達だと喜んだけど、この歳になり、正直言うと虫と大差ないと思う。たまに、夏に合唱するアブラゼミ以上にうるさい時もあるし。


「(だから虫けらみたいに言うんじゃねえ! ぶん殴るぞ!)」


 クロちゃんは怒鳴るが、僕は全然怖くない。

 こんなふうに怒鳴り声で脅しても、クロちゃんは僕を殴ったことも蹴ったことも一度も無い。というか絶対に殴れないのだ。

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