ねこの思い出9「カニ食いねこのいない冬」
18歳8ヶ月で逝ってしまったねこの思い出をつづります。
そのねこは、最高にかわいい容姿と最悪な性格をしていました。
うちのねこは、カニが好きだった。
本当に贅沢に育ててしまったと思う。
でも、最初からかにが好きだった訳ではない。
うちの家族は結構カニが好きだ。
でも、カニをさばくためにハサミをチョキンチョキンと鳴らすと、ねこはどこかに隠れてしまった。
この音が嫌いなのか、何か悪い思い出があるのか。
ねこは、生後2ヶ月ぐらいで捨てられた。
うちには、ミーちゃんという猫がいて、猫好きだと思われていたのだろう。
うちのそばに捨てられていた。
そばにいることは鳴き声で判ったが、ねこは、人の姿を見ると逃げてしまって捕まえられなかった。
このねこ。元は人に飼われていたのだろうに、とても人嫌いなねこだった。
二日二晩泣き続けて、声の枯れてしまったねこに、とりあえず餌になりそうなものを、ねこのいそうな場所に置いた。
そして、徐々に、慣らしていったのだ。
うちにいる猫は必ず「イヤだニャン」になる。ミーちゃんも自分が一番に思われていないといけない猫であった。
だから、いくら猫好き家族であっても、2匹一緒に飼う訳にはいかない。
そこで、兄の家の外猫になった。
ハサミの音を聞いて逃げるのを見て、いったい、このねこの過去には何があったのか、考える。
でも、ハサミを使って出した毛ガニの身を食べたねこは、ハサミの音を聞くと近くに寄るようになった。
それがうれしくて、一生懸命にカニをさばいて身を出した。
ねこが逝ってしまって、冬の鍋に、カニが入ることはなくなった。
ごはんのおかずも、さしみや焼き魚であることが減った。
みんな、ねこの好物だから、これらを食卓に出すことが多かったのだ。
宴会に、カニが出た。
私は、そのカニをさばいて身を出す。
それは、他の人も驚くぐらいに上手だった。
「いえで良くカニを食べていたから」と言うと、「贅沢だね」と言われる。
でも、私は、カニが大好きなねこに、カニの身をさばいてやっていた事を思い出す。
歩けなくなって起き上がれなくなって弱って逝ってしまう前に、ねこが最後に食べたのは、私がさばいてやった毛ガニだった。
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