困惑と疑問
「重要なのはね、この茨の森が在りつづけるということ」
その言葉の意味をリムが考えていると、ずっと黙っていた真紅の魔女がずんずんとリムと茨の魔女の間に入ってきた。
「ちょっと、待ちなさいよ!! 」
もう、私を置いて話を進めるんだから…とぶつぶつ文句を言いながら真紅の魔女はリムと向かい合う。
「初めまして、次代の茨の魔女リム。まずは茨の森の継承おめでとう。貴女の天命としての運命は、森の管理者となること。だから、それさえ守れるならば何をいても良いわ。でも、ワールズにいてもらわなきゃならないから、帰ってはきてね 」
「それは…分かっています 」
「ならば、それでいいわ。後は好きになさい 」
「へ? 」
あまりにもあっさりと、現状を認められて、リムは驚きの声をあげる。
それでいいって、一体何に対してなのだろうか。この惨状に対する償いは、どうすればいい?
「茨の国の現状については、お気の毒様としか言えないわね。まさか、最大の味方が、最凶の敵になって襲ってくるなんて思っても見なかったでしょうに… 」
そうだ、自分は、国一つを、壊してしまって…
「でも、その責任は、貴女にはないわ。茨の森は、彼女の己の意思で国を飲み込んだのよ 」
どういうことだ。確かに、森の暴走によって国は飲み込まれた…でも、彼女って誰だ?意思ってなんだ?
どういう意味?と問えば、真紅の魔女は曖昧に微笑むだけで答えてはくれなかった。
「そこらへんについては、後で師匠から引き継ぎしてね。正式に継承したのならば、色々と知ることになるでしょうから… 」
後ろで師匠がニコリと頷いたから、確かにそうなのだろう。
…ならば、私は生きていても良いのだろか。でも、この罪への償いは、やっぱり、
「リム、あえて罪を問うならば、全ては俺だから。俺が茨に干渉してしまったんだ 」
そう、エリク様のことも不思議だったのだ。どうして、彼がいるのか。
エリク様としての存在も不思議だが、今は王子をどうすればいいのか…を考えなくてはならない。
国を失くした王子なんて、一体どこへ行けば良いのか。
そう思い、リムが難しい顔をしていると、あっけらかんと真紅の魔女は言い放つ。
「茨の魔女としての務めを果たせるならば、そこの王子様だった男も一緒にワールズに連れてきてもいいわよ。なんなら、使い魔みたいに従属させちゃえば、ずっと一緒にいられるじゃない 」
突然の提案にリムの思考はついていかない。使い魔に従属って、自分にはなんのことやらわからない。
しかし、エリクは違うようで、したり顔で頷いている。
そんな様子を見て、リムはますますわけが分からなくなるのだった。