表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/14

茨の代替わり

長い長い眠りから目覚めた者は、それからどうした?




「国なんてもの、最初から私は大切だなんて思っていなかったわ 」

そう師匠が言い放つから、私はただ曖昧な返事しか返せなかった。

え?だって、茨の森の存在理由って、国を守るために…


「そうね、茨たちは確かに守る為に在った。でも、その対象は国ではなかったのよ 」

そう言って微笑む魔女は、あの真紅の魔女だという。

ワールズという国の中で彼女の名を知らない者はいない。


なぜならば、彼女はワールズそのものだからだ。

「はじまりに真紅があった」を序文としたワールズの建国記は魔法学校で一番最初に習うものだ。

見た目はほんの少女のよう。果たして彼女は長い長い時の中で何代目の真紅の魔女なのだろう。

ぼんやりとそんなことを考えていると、私を抱きしめる腕が強まった。


「なんであれ、俺はもうリムから離れない。これで、俺の願いは成就されたのだから 」

勝ち誇ったように笑う王子ことエリクに、茨の魔女は悔しそうに表情を歪めた。

なんの力もない、長い時の中で忘れられ消えていくはずだった男。これが、執念というものなのか。


ふぅ、と溜息をついて茨の魔女は「いや、もういい」と答えた。

茨の制御が完全にこちらから離れてしまっている。ということは、茨は次の管理者を見つけたのだ。

ならば、もう自分が師匠としてやれることは終わっている。


「あとは、リムが決めることだよ。その男と共に在りたいと願うならば、その方法を教えてあげよう 」

「師匠…良いのですか? 」

100年前のあの時、師匠はエリクを酷く嫌っていた。彼の存在全てを嫌って憎んで、消そうとまでしていた。

そうならないように必死に止めたのは自分だ。どうせ彼は全てを忘れてしまうのだから、となんとか説得したのだ。


「もう、森はお前を管理者と認めた。私にとって重要なのはね、この茨の森が在りつづけるということ 」

そのために、お前には私の全てを授ける必要があった。

しかし、今は、もう、なにもかも終わったことだ、と茨の魔女は少し悲しげに微笑んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ