ハジマリ
私を忘れてください。
世界に望まれない恋ならば
どうか忘れてしまってください。
貴方が全てを忘れても、私は貴方を思い続けます。
この心さえ守れるならば、私は幸せなのですよ。
だから、どうか貴方は笑っていてください。
彼は、神の望まない恋をしてしまいました。
身分違いの恋。間違った恋。ただの悲恋で終わればよかったのに、悲しいことに彼は生まれついての王族でした。
だからこそ、諦めるという選択肢になど見向きもせず、己の思いにまっすぐでした。
その思いは、恐ろしい執着心を伴い、国に破滅しかもたらさないものであり、彼を取り巻くすべての者達は嘆き悲しみました。
そして彼らは、何としても国を守ろうとしました。
彼の恋を成就させたならば、間違いなく国が消滅することを分かっていたからです。
そして、それは彼が好きになった相手も同じ考えでした。
彼女はただの召使いの子どもで、自分の生きる国と家族をとても大切に思っていました。
なんとか、全てを守りたいと強く思っていました。
だから、彼女は選んだのです。
一生をかけて、「守る」ことを。
魔法の国ワールズで彼女は魔女になることを選びました。
自分を忘れた国の外で、独りで生き続けて全てを見届けると決めました。
何年の時を経ても変わらない容姿。それは、彼女が己に課した呪いであり願いでした。
疎まれながら、恐れられながら、それでも彼女は生き続ける。
祖国の繁栄への思いと初恋を、ひっそりと胸に抱えながら。