輪廻
少年の魂は
少年が死んだあと、あの少女はすっとどこかへ消えた。それは忽然と。足音も立てずに、気づいたら忽然といなくなっていた。
そのことに対し、人々は唖然となった。
あの少女の手によって殺された少年の遺体は、道端にそっと落ちていた。
その遺体を俺たちは協力しあって、商店街の端っこの地味な一角にある少三次神社の一角に少年のお墓を作ってそっと埋めて、住職さんに拝んでもらった。
もちろん俺たちも、一人一人少年のお墓の前で拝んだ。
参列者はざっと150人程。
その中で俺は一番最後に並んだ。
何故一番最後に並んだのかは俺もよく分からないが、そうしろといわれてるような気がしてならなかったからだ。
少年の墓で拝み終わった人達はそっとその場を離れ、商店街を直しに静かに足取りは重くながらも歩いていった。
参列中、崩れる人もいた。
まあ、しょうがないだろう。あんな地獄絵を見たら平常心ではいられない。実際のところ少女はもっと他のことで遊びたそうだった。けど、あれだけで終わったからこそ今俺たちはここにいられる。もし、少女があれ以上のことをしていたとするのなら、俺たちはあの商店街で魂が抜けたようにへたり込んでいたのだろう。
30分ぐらい経つと参列者は殆どいなくなった。そして、すぐ俺の番が廻ってきた。
俺は少年の前で座り、そっと手を当て目を瞑り静かに「助けられなくてごめんなさい。」とつぶやいた。
俺は拝み終わってからも立ち去れる気にはならなかった。
周りには誰もいなくて静かで少し寂しかった。
俺は少年の墓に向かって、一人語りかけた。
「俺はな、お前を殺したあの少女を倒すために不思議な力を預かったんだ。だけど、結局何もできなかった。俺って弱いよな。君一人助けられなかった。いざ目の当たりにして、一歩踏み出す勇気、戦う勇気がなくなってしまったんだ」
俺は一間あけた。
風がそっと俺をやさしくなでていく。
少しなまるい風で俺を包んでいく。
「なんで俺なんだろうな。なんで、俺なんかがこんな大切なカンナとかっていう不思議な能力を授かっちまったんだろうな。俺には分からねーよ。何で俺だったんだよ。俺じゃなくて他の人だったら、もしかしたら君のことを助けることができたんだろうな。お前はどう思う?」
俺は反応なんてないと分かっていながら語りかけた。
返事がない。
当然のことだ。
その時、
(お兄さんじゃなくても俺は死んでたよ。)
「え?」
頭の中で声が響いた。
(お兄さんじゃなくても俺は死んでたよ)
「君は、あの少年?」
俺は、キョロキョロしながら言った。
(そうだよ。俺の名前はケンタ。お兄さんは、不思議な力・・・カンナを預かったんだね。お兄さん、お兄さんは特別な人なんだね)
ケンタくんは、楽しそうに言った。
「俺は特別なんかじゃないよ。てか、いるなら出てきてくれよ」
俺は苦虫をつぶしたような顔を詩ながら言った。
(いいよ)
え、いいのかよ。
少年は、返事をするとともに俺の目の前が光そしてケンタ君が出てきた。
「お前、死んだんじゃないのか?」
(?うん、死んだけど。それがどうかしたの?)
それがどうかしたの?って、なんて適当なんだこいつ。
「だーかーらー、何で死んだのに俺の目の前にいるの?って聞いてるの」
(あー、そういうことか。どうやら俺は、君に伝えなくてはならないことがあるらしくてネ~、それが終わるまで俺はあの世にいけないんだってさ)
少年はちょっと笑いながら言った。
「俺に言わなくちゃいけないこと?」
(うん。お兄さんに言わなくてはならないこと)
少年は、俺の前でプカプカ浮かびながら、人差し指を自分の口に持ってきて、内緒だよ。とでもい痛げな顔で言った。
そして、楽しそうだった。
何故、この少年はこんなに楽しそうな顔をしているんだろうか?俺には、まるっきり理解できなかった。
「それで、俺に言わなくてはならないことって何だ?」
(それは、カンナについてだよ)
ケンタは急に真顔になった。
ここでもカンナかよ。カンナ、カンナ、って皆本当しつこいし、俺はそんな単語聴きたくもない。
俺は足で地面に丸を描きそれを何度もなぞった。
空は先程と変わらず美しいほどの快晴だ。
(逃げないで)
(逃げないで。現実から目を背けないで。これは、君が歩むと選んだ道なのだから)
ケンタ言った、俺が選んだ道だと。
「俺はこんな道歩むなんて決めてネーよ」
俺はぼやいた。
(そうかもしれないね。でもそれは君が気づかなかっただけ。人は生きているうちに何度も未知なる世界への自分が生きる道を選んでいる。今君が俺と話している時点で、君は新しい道を開拓しそして選んでいるんだよ)
少年は眩しく光る空を見上げながら言った。
それを見て、全然関係ないことだけど美しいと思った。
はかなく生きていた少年、さっきの事故が思い出される。少年の殻がすけ向こう側の景色がキラキラ輝いている。
こんな奇妙で美しい風景はもう見ることはないだろう。
「俺は生きているうちに君を殺す道を選んでしまったのか?」
俺は低くかすれた声で聞いた。
(うん、そうだよ。君が僕を殺した。)
少年は俺を冷たく突き放した。
(だから君にこれ以上選ぶ権利を俺は君に与えたくない。俺の命をとったから。俺は一個だけ君に命令するよ。)
少年は一度ここで間を空けた。
(カンナを持つものよ、旅をしろ。ただそれだけさ)
そういって少年は消えた。
「旅をしろって・・・どこを旅すればいいんだよ!!!!!」
俺はケンタの墓に向かって叫んだ。
でも、俺は決意を決めた。旅をすると。そして、カンナの能力を使いこなし、世界を救いあの悪魔を倒すということを。
俺は道を選んだ。