俺
さて、だ。
俺は、ただの書の話を聞いて、俺にはカンナの力があることを大まか理解した。
もっぱら嘘ってわけでもなさそうだし、そもそも嘘をついたところで何の利益もただの書にはない。
それに、俺に似ている部分も何箇所かあった。
そのことを考えると、むしろないほうが疑問になってくるくらいだ。
だが、思い出してほしい。
俺とただの書の会話の中に、カンナの能力をどうやって操るかとかさ、そうゆう術をあれは語っていただろうか。
いや、語ってない。
俺の記憶上、カンアの扱い方の「あ」の文字すら言ってないような気がする。
だから、俺はどうカンナの能力を扱えばいいかわからないし、何の練習や力試しもできないままなのはどうなのだろうか。
例えると、受験に響くテストをノー勉でうけてるようなもんだ。
そんなんで、何かがあった時に何を誰を守れると言うのだろうか。
まあ、俺に守る人なんていやしないのだが。
そこはおいておく、いちを。
ただ、あながち嘘ではないのだが、何かあった時、それをどうにかできるのが、カンナの力を持つ俺だけだとしたら、俺はカンナの能力を何も使えないのだから、世界を滅ぼしてしまう。
カンナの力は、世界を救えるとただの書は言った。
だから、世界を滅ぼすこともできるのだ。
そんな偉大であり脅威の能力を本当に俺なんかが扱っていいのだろうか、といまだに疑問に思う。
けど、あの書はこうも言ってた。
『カンナの能力は、意味あるものにしか与えられない』
と。
意味とかどういうことなのだろうか?意味とは理由といことなのだろか。
そう解釈すると、何故俺にカンナの能力を持つ理由が俺なんかにあるのだろう。
あー、もう、本当何もわかんねぇよ。何が何なのか、全然わかんねーよ。
頭を掻き毟った。
そんなことしたって、意味なんてわかるわけもないのに。ただ、どうでもいいことをして少しでも気を紛らかせたった。
ゴチャゴチャした髪と頭と心は俺をイラつかせる。
「風呂にでも入るか」
柱時計は、午前7時をさしている。
学校に遅刻しそうだが、昨日のことで少しぐらいはごまかせるだろう。
ズル休みしたってばれないくらいだ。
でも、それはそれで罪悪感を感じる。だから、今日は3時間だけ遅刻していこう。
俺は一眠りした。
夢にはただの書は出てこなかった。
ただ真っ暗な世界に一人静まりかえってるだけだ。
だが、ただの書が出てこなかっただけで他のものは出てきた。
それはひとつの恐怖でもあった。
上を見上げれば空は気味の悪いほど晴れている。
空は晴天だ。
だが、何かがおかしい。
何かが狂っている。
何か変なことがおきそうな、そんな不気味な空だ。
そんなことを考えていると、どこからか声が聞こえた。
「悪い子は誰? あんたは悪い子? 君も悪い子?」
どっかの少女が歌ってる。
年齢はパット見13歳ぐらいだろう。
まあ、そんな少女が歌っている。
笑顔で。
その笑顔には少し変な違和感を感じる。
それが何なのかはわからない。
でも、素敵な歌声だ。凛とした声に透き通るような音色。
おかしいとしたら歌詞ぐらいだ。
「悪い子見っけ あんたは悪い子 つかまえた」
少女はそう歌うといきなり、今までにないくらい口を吊り上げた。
まるで、リアル口裂け女のようなくらい。
気味が悪い。あんな素敵な歌を歌う少女が.....。
そして少女は一方を見た。
少女が向いた先には、19歳くらいのヤンキーがいた。
少女は、
「あんたはわりー子」
と言うと、そのヤンキーはいきなり炎につつまれた。
「ああああああああ!助けてくれええええ!」
悲鳴が響く。
その悲鳴は残響となり鳴り響く。
だが、そんな悲鳴も瞬きをする程の一瞬の出来事である。
ヤンキーは一瞬にして灰塵とかした。
町中は静まり返る。
3秒ほど。
だが、すぐに我に返った人達は悲鳴を上げた。
「キャアアアアアアアアアア!!」
「人殺しだ!」
「けっけっ警察をよっぶんだ!!」
町中に焦げ臭い異様な匂いが漂った。
その中を俺は呆然と立ってる。
通りの奥に誰かがいることに俺は気づいた。
あちらもただたってみているだけ。
誰だ?
目を凝らしてみる。
見えない。
俺は一歩踏み出す。
「だ・・・れ?」
向こうにいる誰かが何かを言う。
パット見た感じ少年のようだ。
というか、俺と同じくらいの男だ。
「だ・・・れ?だ・・・れ」
俺は小さくつぶやく。
向こうの男は、口パクで何かを言う。
「○○○○○ ○○○○○」
「何だ?何を言ってるんだ?」
俺が目を凝らしている中、少女はゆっくりとおりを歩く。
少女は俺のすぐ真横を通った。
「お前をいつか殺す」
そうつぶやいて、隣を歩いた。
「え?」
俺は後ろを振り向くと少女は何もなかったように歩いていった。
そして、向こうの通りにいた少年の姿はもう見えなくなった。
「あああああああああああああああああああああああああ!!」
俺は悲鳴を上げながら目を覚ました。
なんなんだ、この夢。
気味が悪い。
縁起が悪い。
悪いなんてもんじゃない、悪すぎる!
時計を見ると、まだ寝てから30分ほど。
これ以上寝たらまた変な夢を見る気がした。
「寝るのはやめるか・・・」
俺はベットから立ち上がった。
最近ろくなことが起きない。
いきなり、頭にガラスと野球ボールはふってくるわ、よくわかんない、謎の書とかに出会うわ、そんでお前はカンナを持つもの、異能を持つものとかきちがいじみたこと言われるわ、夢では焼死体が出てきたり、殺してやるといわれるわ。
異常だ。
俺は、ただのボッチを続ける孤独な学生のままでいてはダメなのか?
何故俺なんだ。
何故俺が、俺なんかが変なことに巻き込まれているんだ。
そういうことなら俺よりもっとふさわしい人なんてたくさんいるはずなのに。
何故よりによって、ボッチでコミュ症な俺だったんだ。
神はどういう基準で俺を選んだんだ。
俺なんか能力を扱う資格さえないというのに・・・。
俺は友に対し過ちを起こした。
それは一生償えないこと。
俺はこのことに対し、何年間も罪悪を抱いてきた。
今頃あいつはどうしているんだろうか。
久しぶりに会ってみたいけど、でも俺なんかにあったらきっとあいつは不愉快な気持ちになるだろうからな・・・。
あー、もうこの話はやめよう。
ただでさえ変な俺がもっと変になってしまう。
俺が俺で入られなくなる。
もとから、いられてないのかもしれないけど。
あんなことをしたんだから、それはそれで当然か。
あー、もうまた考えてしまった。
やめようと決めたのに。
タイムは、8時30分。
時間が過ぎるのが早い。
結局俺はやることを失った。
何をしようか。
選択肢はもう何もない。
そういえば、まだ朝食を食べてない気がする。
お腹がグゥ~となる。
「まあ、腹も減ったことだし食べるとするか。」
俺は簡易に朝食を作った。
今日の朝食のメニューはオムライスだ。卵の部分が崩れてしまい、ちょっと歪である。が、味としては問題はなさそうだから、まあいいだろう。
1人で椅子に腰をかけ誰もいない部屋を見回す。
俺の中の世界は小さい。
この部屋よりも小さいのかもしれない。
そんな俺に何故ただの書は旅しろ。とか言うのだろう。
俺なんかが旅して見つかるものは何があるというのだろうか。
俺は、世界だけではなく心の器も小さい。
そんな自分を何度も変えたいと思ったことすらある。
自分で自分をけなし、そして自分自身に自身をもてなくなり、それを自分で理解してるのにもかかわらず変えようとも何もしないで、ただただ、他人に一方的に投げつけ、相手を傷つけ、相手に嫌われ、そんな相手のことを憎しみ、そして世界すらも憎しむ。
俺は最低な人間だ。
事の大半は自分が悪いのに、自分が悪いと知っているのに他人のせいにする。
そんな自分を誰よりも自分が嫌っている。
こんな俺なんて、消えてしまえばいいのに。
そんなことを考えているような駄目人間が、カンナの能力を貰い受け、そしてそれを使うことは本当に許されることなのだろうか。
俺なんかがカンナの能力を使ったら、絶対に世界は負の方向へ流れ、地球を破滅にまで追いやってしまうだろう。
何が人を救うだ。何が世界を救うだ。
自分すらも救えないような人間に、一体何が救えるのだろうか。
俺なんかに救えるものなんてたかが知れてる。
世界は俺のせいで消える。
世界は俺が壊す。
世界は俺を殺す。
俺は、9時に家を出て学校へ向かった。
そして、その先で出来事は起こった。