100年前の悪魔
僕は、悪魔になんてなりたくなかった。
僕は、誰からも裏切られたくなかった。
でも、世界はそんなに優しくなかった。
これは、僕が悪魔になるまでの話である。
僕は、超能力を持つもの。
今日は、僕の誕生日だ、17歳の。
だが、何故だろうか・・・・、何故か心が躍らないし、この世界に物足りなさを感じる。
そして、この超能力につまらなさを感じる。
今まで、こんなことはなかったのに。
僕には、たくさんの友達がいて、たくさんの学ぶべきものがあるのに、知りたいことがたくさんあるのに、好きな人だって、夢だってたくさんあるのに、何故ここまで心が躍らないのだろう。
「なあ、暁」
暁と僕のことを呼ぶ声が聞こえた。
僕の名前は、小島暁。さっきも言ったとおり今日で17歳の誕生日を迎える。また、1歳年をとった。
そして、今僕の名前を呼んだのは、友達の亮。
「どうかしたのか、亮」
「いやーさー、なんか、お前最近元気ないジャン?だから、なんかあったのかなーって!もしかして、失恋しちゃった?そうだろ??きっと、そうだろ??てか、はぴばー」
亮が笑いながら言う。
「さんきゅー。てか、ンなわけないじゃん!まだ告ってすらいねーよ」
これは、事実だ。
僕の好きな人は、とってもかわいくて、優しい人だ。
そんな彼女が僕は大好きなのに、目の前に来ると何もいえなくなってしまう。
「え、そうなのォ?お前さー、顔は良いんだからよー、性格もいいんだからよー、告白する場面で赤面症になっちゃいました。とか、やめてくれよ~。友達の俺が、恥ずかしいからな!てか、そんなことになったら、まじお前男じゃないかんなー。ただのチキンだチキン!鶏だぞ!お前」
亮は爆笑した。
とっても、いいやつだ。
こいつは。
でも、僕は知ってる。
亮も、彼女が・・・夏島 鼎が、好きであることを僕は知っている。
本人は、ばれてないとか思ってるんだろうけど、僕はあいつとは何年もかかわりを持っている。だから、あいつが夏島を好きなことぐらいとっくに気づいてる。
俺も鼎のことが好きだ。けど、夏島も僕より亮のことが好きなようだ。
だって、夏島は、亮と喋ってる時はとても楽しそうだし・・・。
僕に立ち入る好きはない。
「おい、暁どうした?」
亮が声をかけた。
「いや、なんでもないよ。ただ、きっと夏島は僕のことなんて好きじゃないんだろうな~。ってさ・・・思えてきてしょうがないんだ。だから、告る気にもなれないんだよなー」
僕は素直に自分の考えを亮に言った。
「へ~、お前の気持ちってそれぐらいだったのか?まじで?お前の気持ちはそんなに薄っぺらいものだったのかよ!俺はちゃんと知ってる!お前、すげー人と話すの苦手なのに、鼎だけは必死に話しかけて、お前のこと気づいてもらおう!って努力してることちゃんと知ってるぞ」
亮が、まっすぐ僕の目を見て言う。
だけど、その目と言葉にいらだった。
何故そんなことにイラついてしまったのか、俺にはわからない。けど、きっと僕は亮のあの真っ直ぐな、揺るぎの無い澄み切ったあの目に全てを見透かされた気がして怖くなったんだろう。けど、そんなこと俺は信じたくも無い。だから、ただただ、イラつきだけがつのった。
お前なんかに・・・・
「お前なんかに・・・僕のきもちがっ・・・わかるかよっ・・・」
痛々しい声だ。
自分で言っていて、悲しくなってくる。
でもあいつは容赦しない。
「わかるわけないだろう。俺はお前じゃないんだから」
亮がどんどん言っていく。
亮は自分の考えを素直にどんどん俺に伝えてくる。
あいつは、絶対に隠し事をしない性格だ。
「お前は、お前だろ。なんで、お前の・・・お前なりの信念をもたねーんだよ。なんで、お前は自分で自分を信じられないんだ?暁、お前はそんなに小っぽけな人間だったのかよ?」
亮が目が斜め下をチラッと見る。
「しょうが・・・ないだろう。僕には自信がない。亮のいうとおりさ。僕は、夏島が亮のことを好きなのを知ってるし、亮が夏島のことをすきなのも知ってるから・・・・」
僕は、もういやになった。
自分で自分がいやになった。
なんでこんなこと言ってるんだ?
なんで自分で自分を痛めつけてんだ?
僕はなんて情けない人間になってしまったのだろう。こんな人間になってしまったのはいつからだろうか?
涙がこぼれそうになった。
「・・・・、お前知ってたのか・・・・」
亮が低くつぶやく。
「うん」
「そうだったのか・・・・、隠してて悪かったな・・・」
「いいよ、どうせ、僕のことを考えてなんだろう?」
「ああ」
「うん、いいよ。知ってることを、隠されようが隠されなかろうがどうでもいいよ。だから、僕よりも、亮が夏島に告白したほうがいいと思う」
「ゴメン」
亮は静かに言った。
僕は、帰った後自分のベッド泣いた。
悲しかったこと、いやになったこと全てを流そうと、心が脳に語りかけ、脳が目によびかける。
『泣け』
と。
そのせいか、涙がどうしても止まらなかった。
もちろん、涙を止まらせる気もありはしなかったのだが・・・。
ただ、泣いた後心が楽になる。って現象はおきなかった。
むしろ、重くなったし、僕の頭の中に心に声が響いた。
『人を憎め。』
と。
知らない人の声がずっと、涙後心と頭の中に響き、僕は気持ちが悪くなった。
そして、僕が悪魔となってしまった原因となる出来事は下校中に起きていた。
それは、誰も気づかない間に。
そのことに僕も気づかなかった。
そして、次の日僕が起きると僕は人間であるが人間ではなくなった。
心に潜むものが人間のものではなかった。
人を殺めたい、殺めたい・・・と、心も体も脳に語りかけてくる。
憎らしい、汚らしい悪魔の心となっていた。
そんなことしたくないのに、体がそれを欲している。
嫌だ・・・こんな自分なんて嫌だ・・・・。
こんな状態で学校へ行ったら、誰を殺めるかわかりゃしい・・・。
僕はその日一日は家で引きこもっていた。
誰にも会いたいと思えない。
次の日も休んだ。
そして、その次の日には学校に行った。
さすがに、3日連続休みは怪しまれるからだ。
けど、人を殺めることに欲する心は治ってなかった。
教室はしまっていた。
教室のドアをあけようと、手を伸ばした瞬間に僕は聞いてしまった。
「暁君がこないと、クラスが落ち着いて良いよね~。てかさ、亮も早く私に言いたいことがあるでしょ?なら、早く言ってよ~」
この声は夏島の声だ。
なにがどうなってるんだ・・・?
もしかして、そこに亮もいるのか・・・?
「あー、暁はさー、いいやつだとは思うけど、一緒にいたいとは思えねーよ(笑。まじ、あいつが夏島・・・鼎のことが好きとか考えただけでも吐き気~嘔吐するわー」
亮の声だ。
何を言っているんだ・・・。
そんなの・・・、嘘だよな?
亮・・・お前はそんな嫌なやつじゃないよなっ?
僕はまた心が痛んだ。
もう嫌だ・・・。
聞きたくないっ!!
今まであんなに優しく接しててくれた亮と夏島は僕のことをこんな風におもっていたなんて、考えたくない!
そんなの嘘だ!
そんなことあるわけない・・・。
そうだ、そうにきまってる。
でも、心は正直なもんだ。
すぅー、と涙が一滴右目から垂れた。
僕は、スクールバックを落とした。
そして、その瞬間に僕は走った。
屋上へとつながる階段に向かって一直線に走った。これまで、そんなに早く走ったことがあるのか?と思われるほどのスピードで・・・。
廊下を階段を一気に走っていった。
屋上のドアをガッとあけると、そこには青空とフェンスが広がっていた。
風がピューと俺の横を通り過ぎる。
夏空だ。
こんなに、綺麗な快晴を見たことがあるかというくらい、上全体が青空のカーテンで敷かれていた。
「なあ・・・亮。お前は、そんなに僕のことが嫌いだったんだな・・・?僕は、信じてたのに・・・ずっと信じてたのに。夏島だって・・・ずっと信じて、凄く大切な人だったのに・・・。」
こうなった人の心とは怖いものだ。
人という人を信じられない。
親も友達もメル友だって、信用できない。
この世界にいる、全てのありとあらゆる生き物が全て自分に向かって牙をつきつけ、威嚇し、睨みつけてくるように感じる。
「僕なんて・・・もう世の中に存在しいないほうがいいんだよな・・・・?」
また涙がこぼれた。
消えたい。
このまま静かに、高さ何メートルもある屋上から飛び降りたい。
僕はフェンスに手をかけた。
「カチャン・・・」
静まり返った屋上で、小さく音を鳴らす。
僕はフェンスを登っていった。
そして、一番上に差し掛かったとき、言葉が響いた。
『悪いのは本当にお前か?いらないのは本当にお前なのか?』
と。
近頃僕を悩ませるなぞの声だ。
いつもより、低い・・・・けど、どこか何かを隠している気がする。
「君は一体誰?」
僕は小さくつぶやいた。
『我はそなた。そして、そなたは我。我とそなた・・・二人で1つの体を持っているのだ。そして、昔・・そなたが幼き時に一度会っている。』
声は、僕と同じだとあっていると答えた。
確かに、こんな声を覚えているような気がしなくもない。
でも、
「でも、何故今なんだ・・?何故、今頃になって現れるんだ?」
『それは、そなたが覚醒する時が来たからだ。そなたは、悪魔だ。人を殺めることに欲する殺人鬼だ』
殺人鬼・・・悪魔?!
なにを言っているんだ。
「意味がわからない」
『わからなくていい。そして、お前はここで悪魔とし目覚める。そして、悪魔となったお前が本来のお前だ。そのことをわすれてはならない』
嫌だ・・・心ではそう思っているのに体がそれを拒む。
嫌だ!嫌だ!嫌だ!僕は、悪魔にもさつじんきにもなりたくない!そんなの絶対
嫌だ!
僕は僕でありたい!
けど、そんな僕の小さな願いさえ、もう一人の僕は聞きいてれさえしない。
どんどん僕の心を体を脳を神経を蝕んでいく。
もうたえきれない・・・そう本能的に察したと同時に僕は悪魔となった。
殺せ・・・殺せ。
本能がそれを望んでいる。
なら、その望みをかなえてあげよう。
まず、誰を最初にターゲットにするか・・・亮・・永山亮・・・そいつが最初の
ターゲット。
僕は、何事もない顔をして亮にちかよる。
亮の場所は臭いで探す。
汗臭い臭いだ。
鼻に悪い。
亮は教室にいた。
そっとドアをあけ、何事もないような顔して亮に近づく。
亮が「ヨォ!」と手を振り上げてくる。
まず僕はその手を超能力で曲げた。
亮の顔がゆがむ。
「バキ!」
亮の腕の骨がおれた。
「うわああああああっ!!あぁあっぁぁぁ!」
悲鳴をあげる、亮。
それを見る僕はゾワゾワして、どんどん楽しくなってくる。
もっと、この光景を見たい。
僕は「亮?!どうしたんだ!」と駆け寄る振りしながら、超能力を使い心臓を圧迫していく。
「うわぁぁぁあぁっぁぁぁぁぁっぁ!!!!!!ぁぁぁぁぁぁっぁああああ゛」
この世のものとは思えない悲鳴だ。
超能力で亮の心臓を思いっきり握るつぶすと亮は死んだ。
いや、死んではいない。
握るつぶすのは、表の僕が無理やり引きとめた。
だから、亮は露骨の骨折でどうにかなった。
だが、表の僕が亮の命を救うのに不満を持った。
僕は思いっきり、クラスメイトの心臓を握りつぶし殺した。
「なあ、亮。きこえてたよ、さっきの話・・・。全部。ぜーんぶ、聞いてたよ。お前は死ななきゃならないよなぁ~」
僕はニヤニヤして言う。
だけど、何故か涙がこぼれる。
表の僕だ。
何故、ここまで悪が染まらない。
面倒のかかる人間だ。
僕はこんなに意地を張る人間だったか?
そんなことはないはずだ。
「なんでっ・・・ないてっ・・・いるんだっ?ハァハァハァ。」
亮が息を荒げながら声をかけた。
痛々しい。
だが、それが逆に僕を喜ばせる源にもなっている。
「うるさい!泣いてなんかない」
僕は声を荒げた。
「泣いてるじゃっ・・ないか。ハァハァ。なぜ、暁は僕を早く殺さないんだっ・・・うぅぇっ」
亮はとても苦しそうだ。
早く助けてあげたい。
と、表の僕は願う。
悪口を言われたって、大切な友達だから。
長い付き合いである、一番信用できた大切な友達だから。
でも、僕はそれを許さない。
僕は容赦なく、超能力を殺し亮を殺した。
僕は完全な悪魔となった。
だが、超がつくほどの腕の持ち主が自分の命と引き換えに僕を封印した。
それは、僕が悪魔となってから1年後の話である。
そして僕は、今、海の底にある、呪われた地に沈められ、封印されたままの状態
である。
表の僕は既に消えた。
表の僕は、裏の僕に殺された。
だけど、記憶と心だけは何故か残っている。
今すぐ忌々しい自分をけしさりたい。
そして、亮に謝りたい。