花、月
僕が触れたら君は消えてしまいそうで。
君に触れることを躊躇ってしまう。
もし僕が君を愛したら君は壊れてしまうだろうから、
君を愛さないと誓った。
美しく気高き花よ。
儚いその姿をどうして僕が想えるだろうか。
私が触れたら貴方は困ったように笑うから。
貴方に触れることを躊躇ってしまう。
でも、もし私がそんな素振りを見せたら貴方は離れていってしまうだろうから、
貴方を精一杯愛そうと誓った。
美しく気高き月よ。
遠いその姿に私の指は届くのだろうか。
知っていますか、知っていますか。
どんなに愛したいと思っているかを。
花のように儚く、美しい君。
今宵だけは僕の望みを叶えてはくれまいだろうか。
知っていますか、知っていますか。
どんなに触れたいと思っているかを。
月のように気高く、決して届かない貴方。
今夜だけは私の願いを聞き届けてはくれないでしょうか。
花よ、
どうか今日だけはその花弁に一羽の蝶が止まる事を赦して欲しい。
決してその花弁を散らさないと、この心に誓おう。
月よ、
どうか今日だけは水面に映ったその姿を掬うことを赦して下さい。
きっと水の中から貴方を掬い上げてみせる。
どうか何も言わないで。
罪深きこの手を嫌がらないでくれないだろうか。
どうか何も言わないで。
我武者羅な私を笑わないでいてくれますか。
花よ、月よ。
どうか、どうか
今日だけは、どうかこのままで・・・・・・。
すれ違いもこんな形なら美しく思えてくるから不思議です。