第四話
「着替え終わったかしらね。あんなに可愛らしいのだから、あの服を着た姿を男性騎士に見せたら、一発で落ちると思うし」
ルディアはレイナが部屋に入るのを見てから、数十分立った。
もうそろそろ出てくるだろうと思い、部屋のほうに顔を向けてみる。
それと同時に部屋の扉が開けられた。
(うわ...可愛すぎる...それになにあの胸。鎧の上からじゃ全然分からなかったんだけど...)
中から出てきたレイナの姿はルディアが想像していたよりも、遥かに凌駕していた。
鎧を着ていたため見えなかった豊かな胸が主張するかのように服を吊り上げている。
それだけでも、男性騎士の目を集めることが出来るほどだった。
だが、それだけではない。
引き締まったくびれに騎士を感じさせないきゃしゃな体。
頭の上につけてぴょこぴょこ動いているネコ耳は銀髪と赤い瞳、整った容姿に合わさってとてつもない破壊力を醸し出していた。
これなら、男性騎士もいちころだろう。
(私、なんか自信なくなってきた...)
ルディアは自分の薄い胸に目をやり、その場でしゃがみこみ頭を抱え込んでいる。
(なんか、ルディアさん落ち込んでるんだけど、どうしたのかな? お腹いたいのかな?)
一方のレイナは自分の姿がルディアの心に釘を打ち込んでいることを露知らず、頓珍漢なことを考えていた。
心なしか、ルディアの周りに黒いオーラのようなものが出ている気がしてならなかった。
周りの女性騎士もその光景に気づきこちらを向いたが、レイナの姿を見ると一往になにやら目が遠くなっていた。
料理員達は皆男性であった為、レイナの姿を見て顔を真っ赤なりんごのように染め調理する手も止まっておりいくらかこがしている料理も見受け取れた。
とうの本人が自覚していないほど、レイナの容姿は整いすぎていたのだ。
「あの皆さんどうされたんですか? 料理をしてしまいましょうよ」
「自覚なしってことか...嫉妬を通り過ぎて、もうどうでもよくなっちゃうよ」
ルディアが言った言葉に女性騎士は、激しく頭を上下に振り同意するかのような意思を見せる。
「?」
「まぁいいか。ほら皆料理再開しよう」
ルディアの掛け声に皆、ようやく動き始める女性騎士と料理員。
ルディアはレイナのほうに近づいていく。
「まさか、こんなに可愛くなるとは思わなかったよ」
「そうですか? ありがとうございます。似合ってなかったらと思ってどきどきしてたんです」
「はは! レイナが似合わないものなんて無いと思うわよ。もしレイナに似合わないものがあったなら、それはその服がそうとう粗悪品ってことになるわね」
「そんなことないですよ」
ルディアに否定するように手を振りながら言うレイナ。
「そう? でもまぁいいわ。それは今度の機会にじっくり話し合いましょ。今はもうすぐ夕飯だから料理を作ってしまわないと」
「そうですね! 私は何をしたらいいんでしょうか?」
「そうね。とりあえずそれぞれの鍋に追加する野菜を切ってもらって、それをいれていってもらうわ。それが終わって、私の分も終わったら一緒になにか肉を使った料理をつくりましょ」
「分かりました! 頑張ります!」
手をぐっと握り締めて言ってくる。
「よろしく頼むわね」
ルディアも微笑みを返した。
それからレイナは、厨房で手馴れた動作で野菜を千切りや乱切りいちょう切りなど様々な形に切っていき、それぞれの鍋に入れていく。
それもあまり時間をかけることなく終わってしまったので、手持ちぶたさになったレイナは、ルディアの手伝いをしようとしたがルディアは終わるまで見ててっと言ってきた。
せっかく厨房にいるのだからルディアさんが終わる前に何か簡単な料理を作りたい。
そう思いレイナは、ルディアに許可を貰ってから、厨房に残っていた野菜を使って料理を作っていた。
やがて、ルディアのほうも仕事が無くなり、レイナは約束していた肉料理を作ることになった。
「今日作ろうと思うのは、これを使った料理よ」
そういってルディアが厨房にある冷凍室から取り出したのは、大きな猪―ピックポックという魔物であった。
このピックポックは巨大なキバと丸々太った体つきに針のように尖った毛が特徴で、数も多く比較的入手しやすい。さらに、肉もおいしいという消費者にやさしい魔物である。
「大きいピックポックですね~」
「今日、巡回していた騎士が襲われたところを狩ったみたいでね。ついでだからご飯にしてくれってもってきたのよ。だからこれを香草焼きにでもしようかと思って」
「それはいい考えです! さっそく取り掛かりましょう!」
ルディアとレイナは二人で手分けして肉と毛皮はそいでいき、部位ごとに分解していく。
その分解したものと一緒に後は香草をいれて灯火という魔具で焼いていく。
「これでよしっと。これで焼きあがるまで待つだけだね。他のところももう終わって休憩しているみたいだから、こっちも休もうか」
「分かりました」
「そいえばさ、レイナって魔法はなにが得意なの?」
「魔法ですか?」
魔法。それは、人間が手に入れた不可思議の力。魔力を消費して放たれるものなのだが、魔力差やいかにその魔法を熟知しているかによって大きく威力が変わる。魔法は魔力をもつものなら誰でも扱うことが出来る。逆に今の時代魔力をもたないものはいないほどで、平民すら簡単な魔法を使えるようになっている。
ただし、魔法は無限に出すことはできない。魔力は精神力と同じで消費されていくものでありこれを無視して欠乏してしまうと最悪死に至ってしまうものであった。
「私は氷系統の魔法が得意ですね。水が凍って固まるイメージって感じですから。イメージしやすいんです」
「へぇ~、ちなみに私は火系統が得意なのよ。これでも爆炎くらいはなんともなくおこせるわよ!」
そんな魔法の話を少ししているうちに、香草の香りが二人の鼻に届いてきた。
焼ける合図なのであろう。
取り出して見てみるとそこには、こんがりと焼きあがったピックポックがあった。
「上手く焼けているわね。盛り付けして夕飯にしましょうか!」
「はい!」
ルディアとレイナは手早く盛り付けをしていく。
盛り付けをしている間厨房の先にある食事場で騎士達の声が徐々に大きく聞こえてくる。
夕飯時に近づいてたため、集まってきたのだ。
他の料理は、既に食事場のほうにもっていっており、あとはこの香草焼きのみである。
そして出来上がった香草焼きを食事場につながる扉を抜けてもっていく。
「皆さん香草焼きができましたよー」
レイナは、騎士達に香草焼きが出来上がったことを伝えるが、どの騎士もこちらを向いて返事をしようとしない。
「あ? あれ?」
静まりかえった食事場に困惑するレイナ。
「ほら! 馬鹿男性騎士共。レイナのネコ耳姿に見とれてないでさっさと食べちゃいなさい!」
すると、レイナをカバーするかのようにルディアがレイナに見とれている男性騎士達を叱咤する。
すぐに、男性騎士達は、食事を始めるがやはりさきほどあった男性騎士同様に、皆顔を赤く染めているのであった。
このときガロン騎士長はレイナの姿を見て倒れていたことは、秘密である。




