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第一話

 地平線に太陽が上り始めてから、少し立ち明るくなり始めた春夏秋冬の真夏の朝。

 体を動かさずいるだけで体の内から暑さが沸き立ち、汗が全体から流れ始め顔や体は脂っぽさが感じられるようになった。

 そんな四季を感じさせる日々でも人々と自然は無意識に適応し、千差万別に姿を変えていっていた。

 そんな朝に一人の少年が家から出て、籠と鍬を片手に森道を歩いてた。

 少し茶色がかった髪に、黒い瞳。高い身長に適度に引き締まった肉体。その上に汚れてもいいような簡素な服を着ていた。

 そんな少年の名をフィオン・ディングといった。


「今日も暑いな...」


 フィオンはぐちりながらも、動きを止めずに歩き続けている。

 蛇のように曲がりくねっている森道を歩くのは慣れたように、軽々と上がっているようであった。

 やがて、目的地に着いた。

 辺りに木々が生えている中、一箇所だけ木々がなく地面は耕され色とりどりの野菜がなっている畑があった。


「さてと、昨日終わらなかった畑の耕し分終わらせて野菜回収するかな」


 そのままフィオンは休みもせずに、耕しが終わらなかった部分を耕し始める。

 乾燥しきっていた地面はフィオンが耕すと湿った土が顔を見せ、何度もしていくうちにやわらかく種を埋めやすくなるほどになっており、次第に湿った土の香りが鼻に強く残るようになっていく。


「こんなもんでどうかな」


 鍬を抱え持ったままその場で中腰になり、先ほど耕した畑の土を触ってみる。


「うん! 空気も程よく混ざっているし、石や固い土も残っていない。これなら、後は肥料を撒いて混ぜれば野菜を埋められるのもすぐできるようになるな」


 手に取っていた土を戻し再び腰を上げ、満足したような顔つきになるフィオン。


「じゃあさっそく肥料を撒くか」


 畑から出てすぐのところに小さな穴が空いていた。

 中には森でかき集めた落ち葉が入っており、これをワームという虫によって緑色だった葉は次第に形を失うほど細かくなっていき、枯れ茶色く変色し肥料と形を変えていく。

 虫が住んでいるので、臭いがきつそうに感じるが、風に臭いがのってくるほどの臭いの強さは実際に無かった。

 フィオンは、幼い頃からこの畑を耕しているため、沢山の肥料がそこには溜まっている。

 年月が立っている分かなりの栄養素を含んでいるようだった。

 その肥料を肥料が入っている穴の隣においてある二つの木の桶に、先ほど耕した畑の分ぐらい適量に取り畑に撒いていき、軽く耕す。

 その作業も簡単に終わり次に野菜の収穫をしてしまうことにした。

 野菜が生えている方向に目を向けると、実や茎が枯れているもの、萎れて体を横にしているもの、葉や実に穴が空いているものがいくつか目についたが、きちんと実っている野菜の量に比べると微々たる量であったが、フィオンはそれを見て少し悲しそうな顔つきになる。


「今年の夏は確かに他の年に比べると暑かったから畑が乾くのが早かったからな...。でも全部駄目になるよりはマシって感じか」


 駄目だった野菜に近づきフィオンはいくつか実をとり、手で何度もどこが悪いのか撫で回しながら見ていきつぶやいた。



「駄目だった野菜はいつもどおり肥料にしておこう」


 再び肥料が溜まっている穴の前まで戻り、駄目だった野菜達を中に入れていく。

 この野菜達はやがてワームによって細かく分解され肥料として変わっていき、再び畑に新しい野菜を育てるために撒かれ、栄養素となり野菜を実らせる。

 フィオンの畑は、無駄なく循環している畑であった。

 野菜を肥料の穴に入れてから、肝心の野菜の収穫に戻っていく。

 辺りに実っているのはどれも立派に成長しており特に、太陽に向かってぐんっと背を伸ばしているマメ科のレッド・ビーンズや耕した場所が見えないほど葉が付いた茎を這入らせ、丸い大きな実を付けているカルガノが目を引いた。


「お! いい感じになっているな」


 フィオンは慣れた手つきで次々と籠に野菜を収穫していく。

 収穫しているときのフィオンの顔は幸せそうに、ほくほく顔でありあっという間に収穫していく。

 収穫が終わりひと段落するため、畑を出て木々を背に腰を下ろし一休みしているフィオン。

 朝は基本畑の仕事が終わってからご飯を食べるので、家に帰るといつもお腹が食べ物を欲するように大きく鳴り響いている。

 この後食べる朝ごはんはフィオンにとって、至福のひとときであった。


「やばい...朝ごはんのこと考えてたら、お腹がいつもより早くすいてきちゃった。急いで残りの水遣りやって家に帰らないと俺が持たない気がする」


 お腹をさすりながら立ち上がり少し森にはいった先にある小川に、さきほど肥料を入れた桶のもうひとつの桶を持って、森の中に入っていった。

 耳元に聞こえてくる水の流れる音。激しい濁流のような水の流れではなく、耳を澄まさなければ聞こえないほどの小さな音。

 音の先へとひたすら前に進むと見えてくる小川。川原は細かい石が転がっており川の水は透き通って、川の底が直視できるほどの透明さであった。魚は小魚が多く見受けられるが、中にはかなりの大きさを持つ魚もいた。

 フィオンが近づいても警戒し逃げることなく、ゆっくりと小川を泳いでいる。

 そんな魚を見ながら、水を汲もうと小川に近づき水を桶に入れていく。


「よいしょっと。こんなもんかな」


 桶の半分くらい水を入れて、ついでに朝ごはんに魚を食べようと思い、魚を手づかみで一匹捕まえ同じ桶に入れておく。

 魚は中々に太っていて、脂がのってそうだった。


 「さて帰ろう! ん? なんだあれ?」


 畑に戻る為元来た林道を戻ろうと、踵を返そうとするがよくみると小川の少し上流で水が赤く染まっているのがうっすらとだが、見て取れた。


(動物の血かな...?)


 不思議に思いフィオンは、桶をその場に置き足を赤く染まっている水に少し足早に向かっていく。

 赤い水があるところまで赴き辺りを見てみるが辺りには、特に動物の死体は見当たらない。

 逆に赤い液体はさらに上流からながれているようだった。

 さらに、フィオンは上流に向かっていく。

 しばらく赤い液体を辿って進んでいくと途中から赤い液体の色が濃くなり、透明だった小川の水を赤く濁らせている。


「近いかな...」


 さらに進みとうとう赤い液体が流れている正体が現れた。


「女の子!?」


 腹部から血を流し少女が小川の傍で倒れていた。

 白銀の髪で赤い瞳を持ち鎧を着ていた少女の寝ている角ばった石の上は血で染まり、そこから小川の方へと流れ出ていたのだがどうやら血がまだ乾いておらず出たのもそれほど多くはないようで、フィオンは倒れている少女に即座に近づき手を鼻に近づけ呼吸していることを確認して、意識を失っているが生きていることを確認する。

 しかしこのまま血を流し続ければいづれ死に至る。

 そう思いフィオンは慌ててすぐさま彼女の重厚な鎧をはずす。


「!!!!!!!!」


 だがそれがまずかった。

 鎧の下に広がるのは赤く染まった衣服と短いスパッツのようなものであったが、衣服は汗か水で全体が濡れており服の下に広がる肌がすけてみえている。整った顔立ちの下に広がる確かな育ちを感じさせる豊かな胸。モデルのように引き締まった腰のくびれにくっきりと浮き出た鎖骨。きれいな丸みを帯びたお尻。そこから下に広がる部分はかろうじて見えない。


「...可愛いい」


 改めてこの体の持ち主を慌てていた精神を落ち着かせ見ると顔を赤くし率直な意見が出てしまったが、そんなことを考えている場合ではなかった。


「って俺なにこんなときに考えているんだよ!」


 顔を左右に振って今はこの人の生死が関わっている事を再認識する。

 自分の衣服の一部を歯で切れ目を入れ破りとり、少女の出血している腹部にあてがい縛り付けるがすぐに赤くにじんできてしまったので。フィオンは上半身の衣服を全て脱ぎ、再びそれをあてがう。

 そのうちに少女の腕を肩に回し体を起こさせ、フィオンは背中におんぶの形をとる。

 背中に彼女の豊かな胸が主張するかのように当たってくるが、フォルンの背中に辺り再び顔が赤くなるが意識しないようにして、鎧と桶を取らずに急いで自分の家へと戻っていた。

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