準備
さてと、子供を誘拐するとしてどうするか。
宮田は、そこを考えていた。
最近の子供は、防犯意識が高い。おそらくそれは、親の過保護のせいだろう。
公園で一人遊んでいるような子供でも探すか。
そして、宮田は家を出た。家の中では白衣だが、勿論着替えた。
白衣を脱ぐのも、外にでるのも久しぶりな気がした。
外は暑かった。家にいた時には全然暑く感じなかったのに、嘘だと思うぐらいの暑さだ。
まずは、これを調べるか。と、宮田は暑い原因調べを始めた。しかし答えはすぐに出た。
家の中が涼しかっただけか。薬品などもあるから、気温を下げていたのを忘れていた。
あっさり解けて、彼は拍子抜けした。
そして、本来の目的を思い出す。
まずは、公園への道を車で行った。
そして、10分も経たずに公園に着いた。
車の窓から見ると、公園には丁度園児ぐらいの男の子がいた。
宮田は、好都合と思い男の子に話し掛けた。
「坊や、一人かい?」
「おじさん誰?」
男の子は、宮田に質問した。
宮田は、この質問はくると思ってたので自分で考えて来た答えを言った。
「私は正義の味方で、君を強くしてあげたいんだ」
宮田は自分で言って馬鹿らしいと思った。
「おじさん凄いね‼ヒーローなんだ‼」
男の子は目を輝かせて言っている。
この目を見て宮田は、思った。
前の自分ならしなかったよな。この依頼を受ける前には。こんな子供を実験体になんて。
寧ろ、お菓子を買ってあげたいぐらいには思ってたかもしれない。それだと不審者にしか見えないが。
なのに、今ではこんな子供を実験体にしようとしてる。確かに、本人には害は無いが。
依頼を受けたことによって、自分の何かが変化したような気がした。
もしかしたら、あの論文を見たせいで負の心が宿ったのかもしれない。
自分は、どこから変わったのだろうか。
しかし、この依頼を辞めるわけにはいかない。これも多分、前ならここで辞めただろう。
そして、彼は言った。
「そう、ヒーローなんだよ‼だから、ついて来てくれないかい?」
「ついてくよ‼いろんな話を聞かせてよ‼」
「いいだろう。例えば、あいつは強かったな」
適当に作った話をしながら、男の子を自分の研究所に連れて行った。
流石に家に連れてくのはまずいと思った。
だから、彼は少し離れたところにある研究所に連れて行った。
彼が山奥にひっそり隠れるように作った、研究所だ。
中には、部屋がいくつかあったが、そのうちの一つの部屋に待機させた。
宮田は、男の子が退屈しないように、ゲームとお菓子を用意した。お金は研究費と言って使えばいい。
そして、彼は研究用の部屋に入り準備を始めた。
彼は事前に論文にある処置としか書いていなかった物を、後でもう一度調べ直した。
幸いに、この研究所は設備が充実しているので、道具さえあれば出来た。
ここを使うのも、久しぶりだな。最近は、家で小さな実験ばかりしていた。そんなことを考えながら、準備を黙々と進めて行く。
遺伝子組み換えを、自分がやるということに少し嬉しくなった。そして、不老の人間を作るのだ。
彼は、興奮していた。
歩みを早めて、男の子を呼びに行った。