認可
部屋の戸を叩く音がした。
「入れ」
「失礼します」
入って来たのは、佐久田だ。
ここは社長室。前の部屋とは違って誰でも入れる。峯田がいない時には鍵が掛かっている。
「どうした?佐久田」
「はい、また手紙を受け取りました」
と言って、峯田に手紙を渡した。
「わかった。それだけか?」
「えぇ、しかし手紙の内容に不安を覚えたので意見を聞いてから去ります」
「不安だと?わかった。読んでみよう」
まさか本当に殺すことにはならないだろうな。そう思いながら読んだ。
前と同じく差出人は宮田 悠斗で、宛名は峯田 和徳と書かれていた。
今回の、依頼についてどう達成するかを考えました。
結果、貴方自身を不老にする方法はありません。
「なんだと‼」峯田は怒りながら先を読んだ。
そして、私が辿り着いた方法は貴方が目をつけてくれた論文から得ました。
それは、遺伝子組換えで貴方のクローンを作りそれを不老にする方法です。
論文には、遺伝子組換えで出来るクローンを不死にする方法があることが書かれていました。
そこで、クローンを不老にします。
クローンは貴方の分身なので、全く同じ行動や、思考を取ります。
なので、貴方が不老になり生き続けているのと変わりません。
それが嫌でしたら、知り合いに頼んでクローンの意識を乗っ取る方法を見つけます。
これでも、嫌なら私には貴方の求める方法を出来ません。
また、実験体として子供を使いたいと思います。適当に捕まえるので誘拐事件として扱われるかもしれないので、その際はなんとかしていただきたいです。
それでは、ご検討の程よろしくお願いします。
峯田の怒りは収まっていた。
なるほど、佐久田の不安の意味がわかった。
私自身が、不老になるわけではないというところか、誘拐のところだろう。
そして、少し考えた。
確かに、不老になる方法はなかなか見つからないだろうと思っていた。
しかし、これはなかなかいいと思った。
意識は別にいらない。自分がやるより自分と同じ人物がやった方が楽な気はした。
誘拐の方もなんとかなるだろう。政府には金を貸している人間もいる。
そこそこ満足のいく、報告だった。
やはり、正解だったようだ。
「佐久田、安心しろ。これなら大丈夫だ。好きにやらせていい」
「わかりました。その旨を伝えます」
そして、佐久田は去って行った。
峯田は、これからの未来に年甲斐も無く興奮していた。