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それぞれの末路  作者: 途山 晋
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来訪

岩尾と森山の二人は、署に向かう途中で今回の事件について、話し合うことにした。

特にいい場所が見つからなかったので、ファストフード店で話すことにした。

昼とはいえ、平日のせいかそこまで混んではいなかった。

何も買わないのもやはりあれなので、ポテトを頼んだ。

森山は、Mサイズで、岩尾はLサイズだった。

「さて、森山。お前はどう思う?」岩尾は、ポテトを指で摘まみながら尋ねた。

「はい、自分は今回の事件は純粋に自殺だと最初は思っていましたが、今は違うのではと考えています」

岩尾は頷いて、先を促した。

口がポテトで詰まっているからだろう。

「まず、動機がありません。殺す理由も、自殺する理由も無いと思われます。殺す理由が無いのだから、自殺する理由が殺したことによる罪悪感などとも考えられません」

「なるほどな。しかし、実際この事件のことはどうでもいいんだ。俺にとってはな。今気になるのは、他のことだ」

森山は、理解したので返した。

「美鈴さんを、白井に尾行させたことですね」

「あ、ああそうだ。それだ。それだ。それについて尋ねたかったんだ」

そして、岩尾は咳払いをした。

「あれ?違いましたか?僕はそれだと思ったんですが」

「いや、それで正しい。合ってる。問題無い」

岩尾は、ポテトだけじゃ喉が渇くなと言おうとしてたんだがな。と心の中で呟いた。

勿論これは冗談で言うつもりだった。

しかし、森山が「なにがですか?」と尋ねるのを期待していたのに、具体的に言ってきたために機会を失った。

森山は、岩尾になおも不思議な視線を向けていたが、岩尾は早くという風に手を動かして先を促した。

「あ、はい。恐らく、美鈴さんを尾行させていたことから、捜査への圧力について知っていたと考えられます。そして、何故それがわかったかといえば、彼が圧力をかけていたからです」

岩尾は、頷く。

「ああ、俺もそう思う。白井が言っていた、真実は云々もそれが可能だったことを示している」

「はい、同じくそう感じました。そうすると、何故圧力をかけたのかがわかりませんが。ただの誘拐事件の筈ですが」

「だな」

岩尾は、短く答えた。

いつの間にか、ポテトは一本も無くなっていた。

それに気づき、ケースを畳む。

森山は、その早さに驚いた。

そして、自分のポテトをおずおずと渡した。

「ありがとな」と言って、岩尾はそれを受け取った。

この年で、ポテトをこれだけ食べるとは。油っこいのに。そんなことを感じながらも、事件のことを考えた。

しかし、少し進展した感じはするが全体的にはやはり進んでない感じがした。

恐らく、いや確実に自分が一番情報を握っている。

その情報が、今回の事件に関わっているのかはまだわからない。しかし、関わっているような気がする。

それは、彼にとって推測であり確信だった。

しかし、これはまだ話す段階では無い。かと言って個人でやるには少し荷が重い。

彼は、そう考えた。

「とりあえず、他の進展が欲しいですね」とりあえず、そう言った。

「そうだな」岩尾は頷いた。

そこで、着信音がなった。

それが自分の物だと森山は気づいた。

慌ててスマホを、取り出した。

そして、通話ボタンを押すと「目覚めました」と声が聞こえた。

聞き覚えがあったのと、その言葉で医者だと気づいた。

「誰がですか?」森山は慌てて尋ねる。

「片原さんです」

森山は安堵の息を吐いた。何とかなったのか。

「わかりました。ありがとうございます」

そう答えると電話はきれた。

「どうしたんだ?」岩尾が尋ねた。

「実は、美鈴さんが目覚めたようです」

「おお、やっと起きたのか。遅かったな。職務怠慢だ」

「いや、それは意味が違います。どうしますか?病院に行きます?」

「ん、ああ、そうだな。大事な部下は気になるからな」

普通のように岩尾は言ったが、森山は本当に心配していることを感じた。

「じゃ、行くか」森山は、ポテトもう無くなったのかと思いながらもついてった。

「油取り過ぎると、健康に悪いですよ」

森山は、忠告した。

「気にするな。どうせもう歳だ」

代金は岩尾が払い、店を出た。


病院に二人は着いた。

急いでというわけでもなく、焦燥感は無かった。

そして、二人は美鈴の病室に入ったが、美鈴は目を閉じていた。

医師も、部屋の中にいたので、話を聞いた。

美鈴は起きていたのだが、いつの間にか寝てしまっていたと説明した。

二人は半ば後悔した。

もう少し急げば良かったと。

そして、岩尾は部屋に残り森山は用があるのでといい部屋を出た。

医師も同じく続いていった。

岩尾は、部屋に残された。

「お前、そんなに俺に会いたく無かったのか?」と苦笑しながら、言った。

「まあ、いいんだがな」そう言って口を閉じた。

それから、少しして森山が戻ってきた。

「どうしますか?」と戻ってくるなり、そう岩尾に尋ねた。

「ああ、用は済んだのか?それなら署に向かうが」

「ええ、大丈夫みたいです。行きましょう」

岩尾は、他人事のように言ってるのに不審感を抱いたが、特に訊くことはしなかった。

二人は、署に向かっていった。


署に着いた二人は、報告書を仕上げていた。

その後は、他に小さい事件が起こった為に駆り出され、疲れていた。

その報告書も仕上げると時間は、もう八時を回っていた。

岩尾と森山は、そろそろ帰宅準備をしようかと思った。

すると、岩尾のスマホに電話がかかってきた。

無線では無いから、警察関係では無い。

表示を見てみると、それは白井からのものだった。

それを森山に報せ、二人は誰もいない会議室に入った。

「すまないが来てくれないか?」通話が繋がるなり、そう言った。

「どうした?」

「あの二人組が来た。監視カメラに映っていた」

岩尾は、思い出し了解を伝えて森山に言った。

「まだ帰れないみたいだ。行くぞ」

森山は、少ししか話が聞き取れなかったので、あまりわからなかったが、ついて行った。


「よし、着いたな」

峯田のクローンは、呟いた。

佐久田のクローンは反応はしなかった。

二人は、そのまま自動ドアを通り抜けた。

自動ドアが開くということは、まだ職員がいるということだ。

いや、明かりを見れば、いることは一目瞭然だった。

受付には、誰もいなかったため、二人は外から見た明かりのある部屋へ向かった。

職員なら、別に誰でもいいのだが。

そして、二人は階段を登った。

五階建てのビルのような形式になっている会社には、勿論エレベーターもあるのだが、明かりのついていたのは二階の為、二人は階段を使うことにした。

静寂の階段は、二つの靴の音を鳴らしながら二人を上へと誘って行く。

階段を登りきり二人は二階に着いた。

三階は、社員が働く場。つまり仕事場があり(昼に森山と岩尾が訪れた監視室もある)、四階は、客人を待たせたり、会議室が多くある。そして、五階に社長室、秘書室、そして佐久田と峯田の指紋でしか開かない部屋がある。

ここ二階は、社員の休憩室や、食堂、寝泊まりが可能な部屋がある。

二人は、暗い廊下を明かりを頼りに歩く。

次は、静寂の廊下が二人の靴音を立てていた。


白井は、森山と岩尾が帰った後、監視室にいた。自分も調べられる範囲で調べようと思ったからだ。

監視カメラの映像を見ていて、目に入ったのはやはり、二人の男だった。

片方の男は、見覚えがあった。細めの男。しかし、思い出せない。

どうにかして二人を調べられないかと考えたが、無理だった。

映像からは、何の情報も得ることは不可能だった。

それから、次に峯田のことを調べることにした。あまり、本人のことについて知らないので、何か裏でしていたのではないかと考えたのだ。

そして、その結果誰かに殺されたのでは無いかと。疚しいことをしていたのなら、誰かに恨まれることもありえる。

白井は、監視室から出て二階にある自分の部屋に向かった。

この騒ぎで、仕事も恐らく停滞するだろう。

部屋にある、従業員用のパソコンは社員のIDで開く。

白井は、IDを打ち込みパソコンを起動させる。

従業員用のパソコンは通常のパソコンと同じように使えるが、ここの会社の情報と繋がっている。

メインのパソコンは、社長と佐久田の指紋でしか開かない部屋にあるということを白井は知っていた。

白井は、パソコンを使いそのメインにハッキングした。

同じ社内で、持ち主のいないパソコン。それに誰も入ることは不可能となった部屋にあるのだから、これくらいは認められるだろう。

まずは、峯田の経歴について探ることにした。

二十歳で入社。営業部に配属され、サービスや売り方の工夫をし、業績を上げたと出ている。

白井は、薬の売り方でサービスや工夫など出来るのだろうかと思ったが、思い出した。

現在の営業部は、宅配のように電話が着たら届けに行くらしい。

普通なら、病院にしか売らない筈だが、他の所と違い一般の家庭にも届けに行くサービスを行っている。それのことかと納得した。

それから、続けて読んでいくがめぼしい物は無かった。

最後に顔写真があったが、それを見て驚いた。それは監視カメラに映っていたのと酷似していた。

白井は困惑した。

似ている顔が二人。まさか影武者ということは無い。今の顔が若い時と同じなのだから。

調べなければ。

日は暮れて、辺りは闇に染まってきた。

とりあえず、落ち着かせるのも兼ねて明かりを点けることにした。

集中してて気づかなかったが、この時間ならもう殆どの従業員は帰っているだろう。

そして、再びパソコンに向かった。

次は、子どもについて調べた。

結果。子どもはいない。どころか、妻がいなかった。親縁関係も調べたが、殆ど死去していた。

生きていても、家族はいない。

隠し子の可能性しか残されていないが、あそこまで似るだろうか。

結局、あの男の素姓を探ることは不可能だ。

そして、出来る限り峯田のことも調べられたと思う。

あとは、佐久田について調べるくらいか。

そこで、白井は足音を聞いた。

時計を見れば、九時は回っている。

あの騒ぎの後で、まだ人が残っているとは思えない。

いや、監視室の女性は残っているかもしれないが。

足音は二つ。

それは、部屋の前で止まった。

扉が開き、そこにいたのは監視カメラに映っていた二人だった。

そこで、思い出した。しかし、信じられない。それは声には出なかった。

細めの男は、かつて同期で働いていた筈の男、つまり佐久田だと。


「こんばんは」

峯田のクローンは、部屋に入るなりそう言った。相手は、驚いた顔をしている。

突然の来訪に驚いているのだろうと思ったが、隣の佐久田のクローンの表情も何処かおかしい。

「白井」と呟くのが聞こえた。

もしかしたら、知人なのかもしれないと峯田のクローンは気づいた。

「出ていけ」

峯田のクローンは、そう佐久田のクローンに言った。

それに従い廊下へと出て行った。

「では、話がある」

白井は呆然としていたが、話を聞く態勢に入った。

「俺は、昼頃にここに来て社長からこれを預かった」

峯田のクローンは、懐から手紙のような物を出す。

「これは、もしものことがあったら読んでくれと言われた手紙だ。読んでみたら遺書だった」

白井は、再び驚いた。

遺書があったのか。そして、それを託されてる者がいた。

「少し待ってくれ。用事があって一旦電話をしなければならない」

白井は、スマホを取り出し電話をかけた。

勿論相手は、岩尾だ。

「よし、それでどうしたんだ?」

ズボンのポケットにしまいながら、質問をする。

「お前もこれを読むといい。全てがわかる」

白井は、それを受け取った。

一目見て、それが確かに峯田の字だと確信した。


達雄へ


息子であるお前にこの手紙を託す。これは遺書だ。お前が読んでいるということは、私が死んでいる筈だ。

私はこの後、佐久田を殺し自殺する。

佐久田は、私に酷い裏切りをした。

よって、死に追いやることにした。

しかし、私の心も大きな傷を負った。その為に自殺という手段を取る。

この世に疲れた。もう生きる気力が無い。

これから、私の資産は全てお前に託す。社長の座もお前が受け継ぐんだ。

後は頼んだ。


父親より


白井は、これを読んでいろいろ尋ねることにした。

「貴方は、社長の息子だということですか?」

「そうだ」

「誰との子ですか?私は社長に妻がいることを聞いていませんでしたが」

「危険を感じ、父は俺と母の存在を隠していた」

「なるほど。確かに筋は通っています。それでは、ここに社長の座も譲ると出ていますが、受け継ぐんですか?」

「ああ、その通りだ。亡き父に代わって俺がこの会社を経営する」

「なるほど。わかりました。それでは、これからの経営は貴方に任せるとしましょう」

「勿論だ」

胸を張って、峯田のクローンは答えた。

「それでは、貴方について来たのは誰ですか?」

「まだ質問があるのか。あいつは私の友人だ。経営を手伝ってもらう」

やれやれと言った調子で答えた。

「そうでしたか」

白井は答えながら、あれは佐久田だと確信していた。

何故かはわからないが、昔の佐久田と瓜二つだ。

社長が隠すのはまだわかるが、秘書が隠すのはどうしても納得することは出来ない。

友人と言ったのだから、佐久田との関連性は全く出していないが。

「彼の名は?」

「それは関係無いだろ。遺書についての質問じゃないのか?」

「ええ、そうですね」

教えてはくれないようだと白井は感じた。

あとは、あの二人が来るまで時間稼ぎだ。

「わかりました。しかし、まだ少し理解できていないところもあります。頭の整理も兼ねて、お茶でも如何ですか?」

断るかと思ったが、意外にも了承した。

「あちらの方は?」

「あいつはいい。飲み物はあまり飲まない性分のやつなんだ」

「そうですか」

白井は、ゆっくりとお茶の準備を進めた。

あの二人はまだか。



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