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それぞれの末路  作者: 途山 晋
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凶暴

ノックの音が聞こえた。

「入れ」峯田はいつも通り佐久田かと思った。

しかし、入って来たのは違う男だった。

そして、その男は美鈴達に山崎と名乗った男だった。

「佐久田かと思ったが。お前か。白井」

「ご期待に添えなくて残念です」白井と呼ばれた男は答えた。

「いや、戻れたのか。早かったな」

「ええ、彼ら、警察が油断してたお陰で予想よりも早く。情報も偽名を使い何も与えていません」

「そうか。それで、もう尾行はしなくてもいいぞ。殺し屋から殺したと連絡があった」

「わかりました。それでは通常業務に」

白井は、一礼して部屋を出て行った。

峯田からした、白井の印象は頭がよくきれるという印象だった。

信頼出来る二人の部下のうちの一人。

優秀なのは、佐久田より白井の方かもしれない。そうも感じていた。

邪魔者はこれで排除した。

これで円滑に物事も進むだろう。

峯田に不安は全く無かった。


宮田は、自分の車に辿り着いた。

彼は、追いかけられている訳は無いのに、何かに追いかけられているように感じた。

車に乗り込み、研究所まで帰っていった。

研究所に帰ると、助手に会ってしまった。

「おや、外出していたのですか?」助手は尋ねた。

「ああ」宮田は、短く答えた。

「顔色が優れませんが」助手は心配そうにしている。

「大丈夫だ。問題無い」

そう言って、部屋に戻っていった。

部屋でぼんやりしていたが、ノックが聞こえた。

「どうした?」宮田は、助手だろうと思い尋ねた。

「クローンは作りましたよ。言い忘れていたので言います」助手が答えた。

「ああ…そうだったな。報告をありがとう」

「それでは、明日から観察に入りましょう」

「わかった」

助手はそれを聞いて立ち去っていった。

宮田は、時間の関係もあるが疲れたので寝ることにした。

依頼主はなんでもやる。そう改めて認識して、眠りに入った。


宮田は、霧のかかる道を歩いていた。

前から誰かが近づいてくる。

それをよく見ると、赤い服に黒いズボン。そして、手袋。

夜に見たやつと同じ格好だ。と一瞬思ったが、ズボンの点が違うと思った。

宮田は、なぜかその場から動けなかった。

その服を着た者は近づいてくる。

顔だけがなぜか見えない。靄がかかっているのだ。

確か女だったはずだ。

その顔に靄がかかった者は尚も近づいてくる。

そして、自分の目の前に立つと真っ直ぐ自分を見た。

そして、靄が消えた。

宮田は驚いた。そこには…。

そして、彼は目覚めた。

「夢…か」彼は呟いた。

何故か、最後の靄が消えた後の顔を忘れてしまった。

今のは何かの暗示だったのだろうか。

これから、自分が殺されるという。

いや、そんなわけないと彼は考えテレビのある部屋に向かった。

いつもの様に助手はいた。

ニュースを見ているようだ。

「この近くで人が刺されたみたいですよ。重体みたいです」助手は宮田に言った。

宮田はそれを聞いてテレビに近づいた。

被害者の名前を見て、ニュースで取り上げられていたのは、宮田は昨日の夜に見た光景についてだと気づいた。

犯人に関する情報は何も無く、警察も捜索中。そして、被害者は意識不明の重体。

まだ死んではいないようで安心した。

依頼主がこのニュースを見てなければいいがと彼は思った。

もし、見ていれば再び狙われるかもしれないと考えたからだ。

そして、久々にC拓馬の様子を見に行った。

暫く助手に任せていたが、特に目立った報告は無く安心していた。

C拓馬の部屋に入ると、部屋には寝ているC拓馬がいた。

疲れは見えたが、寝息をたてて眠っている。

拓馬と全く変わらない姿だな。と当たり前のことを感じた。

彼は、拓馬は元気だろうか。と心配したが、もう干渉する気は無かった。

ただただ平和でいて欲しい。

そして彼は、部屋を出て再びニュースに見入った。

と言っても特にめぼしいニュースは無かった。

そして、助手に促され観察に入った。

助手には女性の方を担当してもらい、自分は男性の方を担当した。

これからこの関係の無い二人を何とかC拓馬の両親にしなければならない。

到底無理な気もした。

無関係な二人を夫婦関係にし、さらに無関係な子どもをその息子にする。

考えたのは依頼主か自分だった気がするが、改めてなぜ気づかなかったのだろうと思った。

口にするのは簡単だが、行動にするのは難しい。

しかしなんとかするしか無いと思い、とりあえず男性の観察に移った。

そして、すぐに異変に気づいた。

最初に本物の男性の方へ行くと会話は普通にいった。

状況に困惑はしていたが、比較的大人しかった。

クローンの方へ行くと、さっきの男性が若くなった男がいたが、とても凶暴的だった。

暴言を吐いて、脅しを掛けてきた。

宮田は、冷静に対処してクローンのいる部屋に鍵を掛けた。

やっぱりこうなったかと宮田は思った。

この結果は、ある程度予測出来ていた。

そうあの時から。

そして、宮田はリビングの方へと向かった。

テレビのあるその部屋に着くと、まだ助手はいなかった。

恐らく、苦戦してるのだろう。

私は既に、この結果はあの時から少し予想していたがあっちは予想してないだろう。

宮田がそう考えていると、助手が戻ってきた。

「どうだった?」宮田は尋ねた。

「大変でした」と言って、助手は息を吐いた。

「だろうな。こっちもだよ」

「やっぱりですか。まさかあんなことになるとは」

「そっちはどんな感じになったんだ?」

「はい、なんというか凶暴的になったというか。とりあえず、凶暴性が増したのか、それとも性格が反対になったのかの検証を」

そして助手は考え込んだ。

「いや、恐らく凶暴性が増したんだと思う。その度合いはわからないが」

「そうですね。確かによく考えれば、性格の逆転の可能性は低いです。度合いは、二人を見る限り、相当増してる気がしますが」

宮田は意外とすんなり認めたなと感じた。

「いや…度合いはまだ私にはわからない。そして、C拓馬に影響が無いのは、恐らく自我がまだ発達しきって無いからだ。きっと中学生くらいから、この現象は起きる」

「そこまでわかってるんですね。では、何故そんなことが」

「恐らく遺伝子操作の際だと思う。確か、細胞を若返らせることによって、副作用が生まれると調べた時に出ていた。そしてそれが、凶暴性が増すということだろう」

「なるほど。ではどうしますか?」

宮田は考え込んだ。

この現象は何と無く裁きのようにも思えた。

人間という一個体を勝手に、作り変える。

何らかの力がその行為に怒りを覚えているのかもしれない。

それは自然かもしれない。神かもしれない。または、形に出来ない何か。

宮田は、悩んだ。まだ続けるべきか。

そして続けたとして上手くいくのか。

何らかの力に逆らい、自分の研究心を優先するか。

さらに、この実験には不安があった。

それは、クローンの行く先だ。

C拓馬や、クローンとして作成された者をどうすればいいのか。

もしかしたら、処分されるのかもしれない。

それでも作っていくべきか。

宮田は、考えた。

そして、結論を出した。

「続けよう」宮田は、そう言った。

研究をすることは、自分にとって生きることに等しい。

つまり研究を、辞めることは死ぬことに等しい。

ここまでやってしまった以上、自分の罪を贖うことは出来ない。

昇ることは出来ない。ただ、堕ちて行くしか。

そして、宮田は続けるという結論を出した。

助手は、その結論を聞いて「わかりました」と言った。

心なしか、目が輝いているように宮田には見えた。

「もうやることも無いから、自由でいいよ。依頼人に報告するから」

「わかりました」

宮田はそう言って、電話に近づいた。


ノックの音がした。

昨夜は白井、次は誰だと思いながら、「入れ」と答えた。

「失礼します」そう言って入って来たのは、佐久田だった。

「どうした?」峯田はいつも通りに尋ねる。

「博士から電話です」

「そうか、繋いでくれ」

そして、峯田は宮田と話し始めた。

「次はどうした?」

「はい。今回の実験で若返らせることによって、凶暴性が増すという結果が出ました。その為、また少しご期待に添えるのが遅れるかと」

峯田は少し黙った。

「…わかった。とりあえず、結果が出ればいい。あと、警察は処理したから安心しろ」

「わかりました。ありがとうございます」

そして、電話はきれた。

「佐久田、もういいぞ」

「失礼します」

佐久田は、部屋を出て行った。

峯田は、溜息をついた。

やはり、難しい。自分の思ってた通りにはいかない。

しかし、いつかは叶う。

ここまで来てるのだから、確実に。


宮田は、安心した。

特に何も言われなかったことと、刑事を殺し損ねたことに気づいていないことに。

このまま実験は続けられるだろう。

そして、刑事ももう安心な筈だ。

一度くらい見舞いに、行った方がいいかもしれない。

彼女は遠回りに自分の所為でこんな目に遭ったのだから。

病院に電話したのは自分だから、病院の場所もわかっている。

殺し屋も恐らくもう関係してないと思われる。

昨日の今日でいくのもどうかと思い、重体だともテレビで出てたので明日行くことにした。

彼はすることも無く、一日を無為に過ごした。


翌朝、宮田は起きてから助手に挨拶し、支度をし、テレビを観て昼頃に病院に行くことにした。

何とも毎日を無駄に過ごしてる気がする。

彼はそう感じた。

そして病院へと向かって行った。


病院に着くと、受付に何処に刑事がいるか尋ねた。

相手は答え、宮田はその部屋に向かった。

ドアにノックすると「はい」と言う男の声がした。

宮田は、それを聞いて入るのを辞めて立ち去ろうとしたが、先にドアが開き中から男が出てきた。

若めの男で、刑事の彼氏かと思った。

相手は、「誰ですか?」と怪しがっている。

宮田は、どうしようか困った。

まさか先客がいるとは思わなかった。

宮田が、去ろうとすると男は肩を掴んだ。

そして、「誰ですか?」と改めて尋ねた。

これ以上すると、怪しまれると思ったので、素直に「通報した者です」と答えた。

既に怪しまれてるかもしれないが。

「本当ですか?では、話を伺いたいのですが、何か証拠は?」

「無いですね。そして、貴方は誰なんですか」と宮田は尋ねた。

「僕は森山っていいます。刑事です」と彼は答えた。

「刑事さんですか。でも、証明する証拠も無いですし、私は帰ります」

宮田は、そう言って再び逃げようとしたが、また止められた。

「そうはいきません。第一発見者は、大事な存在です。それに、もし貴方が第一発見者でなければ、貴方が犯人です」と森山は言った。

宮田は、災難だと感じながら「わかりました。少し話しましょう」と答えた。

そして、病院を出て二人は近くの喫茶店に入った。

「では、話を聞かせていただきます」

そう言って、森山は質問を幾つかした。

犯人は見たのか、現場の状況はどうだったか、何故そこにいたのかなどを尋ねた。

宮田は嘘をつき、犯人は見てない。たまたまそこにいた。と答えた。

現場の状況は細かに説明した。

そして、他の質問もわからない。知らないなどで答えた。

一通り終わると、「わかりました」と彼は言った。

そして、「電話番号教えてもらえますか?」と森山は続けて言った。

「電話番号ですか?」

「はい、こちらのも教えますので」

宮田は、断るのも不自然だろうと思い、携帯を取り出した。

「ガラケーなんですね」と森山は驚いて言った。

「ガラケー?」宮田は、その単語を知らなかった。

「ガラパゴス携帯の略で、そういう形の携帯をそう呼ぶんですよ」と言って、森山はスマホを取り出す。

「そうなんですか」宮田は、初めて知った。

「それも、知らないんですか?」と森山は更に驚いた。

「私は、時代に取り残された人間なんですよ。というより、私が離れてただけですが」

「面白いこといいますね。興味深いです」

森山は笑ってそう言った。

電話番号を交換したので、宮田は「では、そろそろ」と言って立ち上がった。

森山は、病院の時と同じようにまた止めた。

「このシール、携帯につけてもらえませんか?」

そう言って、森山は宮田に丸い鳥の絵が描かれているシールを渡した。

「何ですか?これ」

「まあ、友好の証みたいなものです」と森山は言った。

「まだ、そんなに仲良くなってないと思いますがね」と宮田が返した。

「嫌だなぁ、電話番号を交換した仲じゃ無いですか」森山は笑いながら言った。

「じゃあ、有難くつけますよ」

宮田は、そう言って携帯にシールを貼った。

「では、本当にここら辺で」

「お時間取らせてすみませんでした。また会いましょう」

宮田が、出て行くのを森山は見送った。

森山は視線を感じ、後ろを見ると店員の迷惑そうな目が見つめていた。

何も頼まずにいたから当然かと思い、「すみません。コーヒー一杯お願いします」と申し訳なさそうに言うと、店員の顔は笑顔に変わった。

森山は現金だなぁと思いながら、コーヒーが来るのを待った。

宮田は、喫茶店を出たあと、さっきの刑事のことを考えた。

印象は、嫌いでは無いタイプだった。

このシールは、少し気になるなと苦笑した。

また会いましょうという台詞が気になったが、恐らく酷いことにはならないだろうと彼は感じていた。


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