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それぞれの末路  作者: 途山 晋
30/40

夜道

美鈴は暫く三人の誰かの帰りを待っていたが全く帰ってくる気配が無かった。

彼女はとうとう諦め、家に帰ることにした。

外に出るといつものように、自分の車に乗った。

そして、エンジンをかけ運転しようとしたのだが、車の様子がおかしい。

不自然に思い、車から降りて様子を見たが暗くてよくわからない。

自分の持っているスマートフォンの明かりを頼りに、自分の車を調べ始めた。

そして、彼女はタイヤに異常を発見した。

タイヤに穴が空いている。

いつの間にかパンクしたようだ。

美鈴は、今日一日移動が多かったから負担がかかったのだろうと考えた。

一抹の不安も浮かんだが、それを振り切り歩いて帰ることにした。

車と同じ帰り道を通って美鈴は帰っていた。

一本道を通っていると、気配を感じた。

宮田にあんなことを言われたからか、美鈴は周りに敏感になっていた。

感じた気配は後ろの方にいる気がする。

後ろを振り返るが、誰もいない。

最初に思い浮かんだのは山崎だ。逃げてそれからどうなったのかまだわからない。

そして、もう一つの可能性は。

彼女はそこまで考えたところで、前から誰かが歩いて来るのを確認した。

この辺りは街灯が少なく、鮮明に姿が確認出来るような明るさでは無い。

美鈴は、前のその人影を見ていたが、その人影は酔っているようにふらふらしていた。

美鈴は、大丈夫かどうかが不安になり近づいて行った。

赤い感じの服に、黒いスカートを履き手には暗い色の手袋を付けていた。

「大丈夫ですか?」と美鈴は声をかけた。

「ええ」と言った声は女の声だった。

そして、その女は少し顔を伏せた。

何かがキラリと光った。

美鈴は、そこまで確認してその後になにが起こったのかがわからなかった。

女はふらふらしないで普通の足取りで去って行った。

美鈴は、その場から動けなかった。

そのまま彼女は倒れ、苦しそうにしている。

彼女は原因を探した。

そして、それを見つけた。

腹部に刺さっているナイフを。

彼女は、それを見てなにが起こったか全て理解した。

助けを呼ぼうとしたが苦しくて声が出ない。

刺さっているままだから、血はそこまで出ていない。

彼女は、そんなことまで考えている自分に驚いたが、頭が凄く冴えた。

死が近づくと頭が働きが活発になると聞いたことがある。

不思議と考えを整理出来た。

宮田が言ったことは本当だった。私はこのまま死ぬんだろうなと感じた。

そこにあるのは少しの恐怖と少しの諦め、そして大きな後悔だった。

早く捜査を止めれば良かった。

高木の言う通りに欠点は直しとけば良かった。そんな風に感じた。

死んだ後に、誰かが犯人を見つけられるだろうか。

犯人の特徴を何とか知らせないといけない。

しかし、体は動かない。

考えている内に彼女は、足音が聞こえた気がした。

彼女は、そこで意識を失った。


美鈴は、目が覚めた。

仰向けに寝ていることを彼女は確認した。

そして、私は生きているのだろうかと考え始めた。

もしかしたら、ここは死後の世界なのかもしれない。

そんなことを考えたが、とりあえず周りを見回した。

美鈴の他に人はいないが、彼女は見た感じ病院のようだと思った。

そして、まだ生きているのかもしれないと思い始めた。

そこへ足音が聞こえてきた。

足音が近づき、白衣を着た男が部屋に入ってきた。

男は美鈴を見て驚いた。

「起きたんですね」

男はそう言って、安堵した。

「貴方は2日程寝ていたんです。幸い怪我は手術でなんとかなりましたが、暫く入院していただきます」

美鈴は、それを聞いて自分は生きていると確信した。

ただただ良かったと彼女は感じた。

「貴方の目覚めを待ってる人が3名程いましたよ。どうやら刑事さんのようで。電話しておきます」

医者と思われる男は、そう言って部屋を出て行った。

美鈴は一人になっていろいろと考えた。

というよりは思い出そうとした。

状況がまだ深く飲み込めて無い。

何故ここにいるのか。確か、怪我をしたはず。そして、その怪我はナイフで…。

そして、意識を失う前のことは思い出せた。

それからがどうしてこうなったのかがわからない。

意識を失う直前、誰かの足音が聞こえた気がした。

もしかしたらその主が通報してくれたのかもしれない。

そう考えている内に、またさっきの男が部屋に入ってきた。

「電話しておきましたよ。それと紹介が遅れました。私はこの病院の医者の一人です」

そう言って、彼は首から下げたカードをひらひらと振った。

「状況は飲み込めていますか?」

彼はそう美鈴に尋ねた。

「なんとか」

美鈴は短く答えた。

「そうですか。たまたまあの場所を通りかかった男の人が、警察と病院に通報してくれたんですよ。この傷だとあまり保たなかったでしょうから、貴方は相当運が良かった」

医者はそう言った。

「そう…なんですか」

確かにあの傷で生きていることが不思議だったが、そういうことだったのかと理解した。

しかし、運が良すぎるとも感じた。

「ええ。貴方の生命力もあったのかもしれませんが。とりあえず、良かったです」

彼は、そう言って一息ついた。

「それでは、そろそろ失礼します。何かあればナースコールを押してくださいね」

そう言って、彼はまた去って行った。

美鈴は、この事件について考えた。

おそらく犯人は宮田の言っていた殺し屋だ。

そして、あの女がそうだったのだ。

そうするとあの時感じた、後ろの気配は何だったのだろう。

美鈴は不思議に思った。

そして、自分を殺すために車もパンクさせたのだろうと考えた。

あれは、自然にではなく人為的に起きたものだったのだ。

暗かったとはいえしっかり確認しとけば良かったと後悔した。

しかし、車がそのままならいくらでも調べることは出来ると考えた。

目覚めたばかりだが、また眠気が襲って来た。

美鈴は寝ようと思い、瞼を閉じた。


美鈴が再び目を開いた時には、周りが夕焼けに染まっていた。

彼女は時間の経過を感じた。

そして、更に変わってる点は高木が横にいる点だ。

「なんの用ですか?」美鈴は尋ねた。

「お前。心配して来たのに、第一声がそれかよ。本当に愛想が無いな」

高木は苦笑しながら答えた。

「こういう性格ですから」

「まあ、いいけどな。大丈夫か?」

「大丈夫です」

何が大丈夫なのかは全くわからないが、美鈴は答え、高木は安心した。

「そうか。じゃあ、とりあえず今日までのことを説明するぞ」

そう言って、高木は美鈴が襲われてからのことを話し始めた。

美鈴が襲われた後、警察と病院に電話が来た。声は男だった。

「女の人が倒れています。来てください」

そう言って、男は住所を言った。

その後、警察と救急車がそこへ向かうと美鈴が倒れていた。

しかし、声の主の姿は無かった。

警察は、まだ美鈴が死んではいないので殺人未遂として調査。

病院では、手術が行われた。

手術は無事成功。しかし、美鈴は目覚めなかった。

警察の捜査は全く進まなかった。

ナイフに指紋は無く、目撃者もいないので当然だったが。

そして、2日が経ち美鈴は目が覚め、警察の捜査は全く進展無し。

高木の説明はこのようなものだった。

美鈴は、それを聞いてとりあえず犯人についての説明をした。

犯人は女、上は赤めの服に下は黒いスカート、そして、手には暗い色の手袋。

確かそうだったと美鈴は記憶を探り、それを伝えた。

高木は了解して立ち去ろうとしたが、美鈴はそれを止めた。

「山崎はどうなりましたか?」

高木は振り返り、ばつが悪そうな顔をして美鈴を見た。

美鈴は悟り、「そうですか」と答えた。

「ああ、だからお前を刺した犯人も山崎かと思ったんだが、違ったようだな」

「ええ、山崎ではありません」

そして、もしあれが本当に殺し屋なら捕まることは無い気がした。

捕まってくれればいいのだが。

「まあ、お前の言ったような女を探してみるよ。動機もわからないし、詳しい人相もわからないけどな」と言って高木は苦笑した。

暗い為に顔は見えなかった。

動機は私を殺す為。殺し屋なのだから。

しかし、それを教える為にはいろいろなことを説明しなければならない。

まだ、それを説明する気にはなれない。と美鈴は考えた。

「お願いします」美鈴はそう言って、病室を出る高木を見送った。


「遅かったですね」

宮田が研究所に帰ると助手がそう言ってきた。

「ああ、いろいろあったんだ」宮田は素っ気なく答えた。

「いろいろとは?」助手は好奇心を持って尋ねた。

「いろいろはいろいろだよ」

そして、宮田は自分の部屋に向かった。

宮田は、自宅に居ても特に何も思いつかず、一旦研究所に戻った。

美鈴が家から出て、彼は三時間も使っていた。

外はもう薄暗くなっていた。

彼は外を見て、時間の経過に気付き研究所へと戻ってきた。

そして、部屋に入った今も尚、美鈴を助ける方法を考えていた。

彼は、方法が全く浮かばなかった。

どうすればいい。殺し屋と戦えるわけは無い。命を助けるくらいならどうにか出来るだろうか。

彼は、助けるの意味を殺し屋から助けるから命を助けるという考え方に変えた。

その結果思い浮かんだのは、美鈴をなんとか殺し屋に会ってから助けるということだ。

殺し屋に会ってからでは、再び狙われる可能性はある。しかし、何度も防げれば諦めるはずだと考えた。

彼は、それを実行する為に美鈴の近くにいなければと思った。

まずは、彼女がどこにいるかだった。

彼女との会話を思い出し、彼女が署に行くと言っていたのをなんとか思い出した。

この近くにある署は一つだけだった。

宮田は、再び研究所を出てそこに向かうことにした。

研究所を出るまでに助手に会わなかったがいいだろう。会えば、逆に困ることになるかもしれない。

そう考えて、次は白い車に乗り込んだ。

なるべく美鈴にも気づかれない方がいいと考えたからだ。

そして、車は署に向かう。


宮田が署に着いて最初にしたことは車があるか確認することだった。

美鈴の車は、駐車場に停まっていた。

署の前で待ち伏せするのも怪しく見えるかもしれないと思い、入口が見える位置に車を停めた。

あとは、ここで彼女を待つだけだ。

そう考えて、暫く待ち続けていたが、なかなか美鈴は現れない。

彼は既に帰ってしまったのかと思ったが、わざわざ車を残して帰る必要は無いと考えた。

そして、再びそこで待ち続けていた。

夜も遅くなり、そろそろ諦めようかと思ったところに美鈴が署の入口から出てきた。

彼は車では無く歩きで出てきたことに驚いた。

気をつけろと忠告したのに、無防備なところに愕然とした。

そして、彼女が出てから動いた車があった。

その車は黒い色をしており、何処かへ行ってしまった。

タイミングが偶々重なっただけかと思い、彼は特に気にしなかった。

彼女は歩きなので、自分も車を降り、後をつけることにした。

彼女は街灯が少ない暗い通りに入った。

宮田もついて行ったが突然彼女は立ち止まりこちらを向いた。

宮田は焦って、電柱に隠れた。

彼女は、気づかなかったらしくそのまま進んでいった。

彼は、暗いお陰で気づかれなかったようだと安堵した。

彼女の方を見ると、前方を気にしているように見えた。

その先は暗くて宮田には見えないが、彼女にはふらふらと歩く女が見えていた。

そして、美鈴はその女に近づいていった。

宮田は、よくわからないが行動が怪しいのでその場で待機することにした。

一本道だから、追いつけると考えたのだ。

暫くして、何かが倒れるような音がした。

そして、こっちに近づいてくる何かが見えた。

それは女だった。

上には赤い感じの服。血を身に纏っているようにも見える。

下には暗い色のスカート。そして、黒い手袋。

夜の為の格好とも言えそうなその色合いの服を着た女性は、そのまま自分に気づかず去っていった。

彼は自分がいつの間にか、鳥肌が立っていることに気づいた。

彼は、自分がさっきの情報を怖がっていたことを理解した。

それが何故かはわからないが。

そして、彼はそのまま進んでいった。

どこまで行ったかわからない美鈴を追って。

そして、少し進んで見つけた。

仰向けに目を閉じている美鈴の姿を。

彼は、急いで病院と警察に電話した。

そして、そこまでは冷静にいられたが、犯人はさっきの女性だと気付き、怖くなった。

あれがきっと殺し屋だ。

彼はそう確信した。

彼は、またさっきの女性が戻ってくるのを恐れて、自分の車を目指して引き返した。

最初は急ぎ足だったが、だんだん早くなり走っていた。





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