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それぞれの末路  作者: 途山 晋
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逃走

美鈴と森山の二人は、車に乗り込み宮田の家へと向かっている。

美鈴は、もっと早く着く予定だったので、宮田が家にいるかが心配だった。

また、さっきのように無言が続くのかと美鈴は思っていた。

美鈴は、森山に対しての印象が反対の位置のようになっていた。

嘘をよくつくから信用出来ない。大抵は冗談の時もあるが。

しかし、岩尾が言ってた話や、尾行者に気づいた辺りは優秀だと感じさせ、やはり信頼出来る。

その二つの気持ちが同居していた。

美鈴は、そのまま深く考え込んでいたが森山が声を発した。

「あの犯人は本当にストーカーなんですかね?」

美鈴は、沈黙を破るのは彼というパターンのような物が出来ているなと感じつつ、その質問について考えた。

「どういうことですか?」

「いえ。ただ、そう思っただけです。時期的にもそういう人物の線が濃厚かなと思って」

美鈴も確かに思った。

今まで、あんな男を見掛けたことが無かったし、ストーカーされるようなことも身に覚えがない。

「そう思うなら、なんでさっき岩尾さん達がいる時に言わなかったんですか?」

「言おうとしましたよ。でも、大人しく捕まったから安心したんです」

そういえば、何かを言おうとして躊躇う様子があったなと美鈴は思い出した。

そして、美鈴もストーカーということに疑いを持ちながらも二人には言わなかった。

それは、やはり森山と同じ理由だったのでこれ以上、森山に問い詰めることはしなかった。

「とりあえず、あの二人の人に任せればなんとかなるでしょう。それに美鈴さんは綺麗な方ですからね」

美鈴がそれに対して聞こうとしたが、それを止めるように森山は続けて言った。

「あっ、冗談でも無ければお世辞でも無いですから」と彼はニコニコしながら言った。

これを聞いても、それが本当かどうかは美鈴には判断出来なかった。

しかし、美鈴は聞くのもそろそろ面倒になってきたので、礼だけ言った。

車は宮田の家に対して残り半分くらいの距離の辺りで、電話の着信音が聞こえた。

鳴っていたのは、美鈴のでは無く森山のだった。

森山は電話に出ると、真面目な顔をしながら話している。

そして、電話がきれると突然、美鈴に「すみません。ここで降ろしてください」と言った。

「何かあったんですか?」と美鈴は尋ねた。

「さっきの犯人が逃走したようです。どうやらあの二人も安心して手錠を付けなかったようで」

「なにやってるんですか。あの二人は。とりあえずわかりました」

美鈴は車を歩道に付けた。

「自分も手伝ってくるので。今日は、一人でお願いします」

そう言って森山は車を急いで降りてった。

その後は、タクシーを呼び彼は何処かへ向かっていった。

美鈴は、それを確認した後、不安を抱きながらも宮田の家へと向かっていった。


宮田は、大分急いで自宅へ向かっていた。

もし、朝にあの刑事が訪ねて来ているのなら、もうどんなに急いでも意味はない。

朝に寝なければ良かったかもしれない。

彼は、そう考えながらも、赤い車を安全運転とは言い難いスピードで走らせる。

捜査をしてなければ、彼女が依頼主に殺されることも無いのだが、彼はあまりそれを期待してはいなかった。

恐らく、圧力を掛けられただけでは危機感を認識出来はしないだろう。

まさか、圧力に反しただけで殺されるとは夢にも思って無いはずだ。

それを報せる為に、彼は急ぐ。

間に合うかはわからない。彼女が捜査してるかもわからない。

少ない確率に彼は躍起になっている。

彼の心の中では、罪悪感が膨れていっていた。

この実験をするに際して被害になった人達のことを考えている内に、それは相当になっていた。

拓馬や、拓馬の両親には申し訳無いことをしたと思っていた。

拓馬は、いい子供だった。小さい内は親の存在が大事なのに耐えてくれた。

両親も、あの父親の怒声が頭から離れない。

今は、もう落ち着いて家族でいい生活を送れていることを祈るばかりだ。

そして、今回の実験でまた二人が被害に遭う。それがどういう人間かはわからないが、恐らく一般人だろう。

一人の望みに振り回されて、被害に遭う人々。台風のように来て、去っていったもので負った傷はいつか癒えるだろうか。

そう考えていると、これ以上の犠牲はなるべ

く避けたいと考えた。

ましてや、これから救おうとしてるのは、実験に使われるわけでもない被害に遭わなくても、許される人間だ。

絶対に殺させはしない。

そう決意して、目的地へと向かう。

それを妨げるように携帯電話の着信音がした。

宮田は、世間から少し離れているような状況だったので、いわゆるガラケーと呼ばれる携帯電話を使っていた。

彼は車を停めて、まず誰かを考えた。

実験関係で考えたが、助手は携帯電話を持っていない。

携帯電話を見れば、相手は登録されてない番号だ。

とりあえず、電話に出ると「宮田博士で合ってるか?」と尋ねてきた。

宮田は、その声を聞いて相手が依頼主だということに気づいた。

「そうです。どうしました?」と宮田は尋ねた。

まさか、自分のしようとしていることに気づいたのだろうか。

「ああ、一応報告しとこうと思ってな。あの刑事は消すことにした。信頼出来る部下に尾行を頼んだんだが、怪しい動きをしているようだ」と峯田は言った。

「怪しい動き。捜査を続けているんですか?」と宮田は尋ねた。

「いや、そうと決まった訳では無い。ただ、こちらの都合にも悪くなることも起こったから念には念をという訳だ」

都合の悪くなることとはなんだろうかと思いながらも、それは聞かなかった。

刑事を消すという峯田の決断の方が、宮田の頭の中に残っていた。

「わかりました。いつ殺すんですか?」

「今日だな。実は殺し屋というものを雇ったんだ。まさか実在するとはな」

宮田はそれを聞き、そこまでするのかと驚いた。

尾行をさせる上に殺し屋まで。依頼主は本気で願いを叶えようと。

宮田は、自分の身もいつか危うくなるかもしれないと感じた。

「どこで殺すんですか?」

宮田は、こんな物騒な会話をする時が来るとはと思いながら尋ねた。

「それはわからない。殺し屋しか知らないからな」

宮田は、愕然とした。

そして、どうやったら助けられるだろうかと思案し始めた。

「では切るぞ」

そう言って、電話はプツッという音を立てて電子音を流した。

宮田は、無情な音を鳴らす携帯電話を閉じ、再び自宅へと向かい始めた。

赤い車は、さっきまでの勢いを無くしていた。

それでも、車は自宅に宮田の予想よりは早く着いた。

どうにかして止めないといけない。

宮田は、それだけを考えていた。

車から降り、自宅に入る。

昨日来た時より、空気が重い。

恐らく自分のせいだ。

そう思いながら、彼は椅子に座り深い思考に入った。


美鈴の乗った車は、宮田の家に着いた。

美鈴は、やっと着いたと感じたが、実際時間はあまり経っていない。

美鈴は、まずは無駄足か調べる為に周りを歩き回ってみた。

そして、赤い車を見つけた。

美鈴は、それを見てひとまず安心した。

歩いて出掛けたので無ければ家にいるはずだ。

彼女はそう確信し、家のインターフォンを鳴らした。


宮田が思案を始めて、しばらくしてインターフォンの鳴る音がした。

宮田は、最初は余程集中してたのか気づかなかったが、二回目の音でやっと気づいた。

宮田は、急いで玄関に向かった。

宮田が、玄関の戸を開けるとそこには美鈴が立っていた。

「すみません。またお話を伺いに来ました」

美鈴はそう言った。

「会えて良かったです。寧ろ、こちらの話を聞いてもらいたい」

宮田の発言に美鈴は戸惑ったが、宮田は家の中へと促し、二人は家の中に入った。

「さっきのはどういう事ですか?」

リビングに入るなり、美鈴は宮田に尋ねた。

「まずは、すまない。謝る。巻き込んでしまって申し訳ない」宮田は、頭を下げて謝った。

美鈴は、突然のことに驚いたが、質問を重ねた。

「だから、一体どういうことなんですか?」

宮田は、困ったようにしていたが話し始めた。

「深いことは特には言わない。ただ一つ言えることは、今日、君は殺される。なんとかそれを防いでくれ」

美鈴は、混乱した。

急に何を言うのかと思えば、殺されるとは。

「誰が?どこで?何故?」

美鈴は、短く複数の質問を一気にした。

「殺し屋が、場所はわからない。理由は、君がこの事件に深く関わったからだ」

宮田は、苦しそうに言った。

美鈴は、何故苦しそうに言うのか理解出来なかったが、「何故防いで欲しいんですか?」

と尋ねた。

「わかってると思うが、拓馬や、拓馬の家族は今回のことで、被害を被った。私は、被害をあまり広げたくはない。しかし、私は今行っていることを止めるわけにはいかない」

「一体、貴方は何をしているんですか?拓馬君の髪を何本か抜いたことは知りましたが」

「それを言うわけにはいかない。それを知ることで、君の被害は大きくなるかもしれないからな」

美鈴は納得出来なかった。

やはり、今までの言葉から宮田と国からの圧力は関係していると思う。しかし、何をしているのかは教えてはくれない。

そして、被害の拡大を止めようとしながら、その何かを止めることはしない。

美鈴には、宮田が何をしているのか全く推測出来なかった。

何より、答えて貰えない物が多すぎる。

「もう少しくらい、何か教えてくれてもいいのでは?」

美鈴は、少し苛立っていた。

「知り過ぎるのは良く無い。とりあえず、私が言えるのは、これから周りに気をつけろということだけだ」

宮田は、なるべく落ち着いて答えた。

その方が、相手も少し落ち着いてくれると考えたからだ。

しかし、あまり効果は無かった。

「気をつけろって言ったってどう気をつければいいんですか?相手がどんな姿かもわからないのに!」

美鈴は、寧ろ宮田が落ち着いていることに苛立った。

「その点は本当にすまない。相手が教えてくれなかったからな」

「相手とは?」

「それも言えない。私は、他にはなにも言わない。とりあえず、君に生きて欲しい」

美鈴は、考え込んだ。

宮田が嘘を言っている可能性もある。

しかし、嘘をついてるような様子には見えない。

内容は怪しすぎるが、これ以上は何も聞けなそうだ。

今日は、これで辞めとこう。とりあえず、宮田は犯人だということは認めたから、それで十分だ。

結果美鈴は、そう思った。

「わかりました。気をつけます。それでは私は署に戻ります」

美鈴は、部屋を出て玄関に向かっていった。

宮田は、自分の言ったことを受け入れてもらえたと思い安堵した。

そして宮田は、「ありがとう」と言って玄関の戸が締まる音を聞いた。


美鈴は、これからどうしようか迷った。

宮田の言ったことを信じるなら、一日何処かに身を隠した方がいいのかもしれない。

しかし、あまり知らない場所へ行くのも憚られた。

よく考えると、宮田が自分の存在を知ったのが、昨日の夕方頃。

それなのに、これ程早く自分を殺す準備が出来るだろうか。

いつ自分が殺されると決まったのかも聞けば良かったと若干後悔した。

それによって、これが嘘か判断出来たかもしれないのに。

そう考えながらも、署に向かっていった。

逃走した、山崎 稿と名乗った男は捕まえられたのか。

その報告を聞こうと思い、美鈴は署に向かうことにしたのだ。

署に着くと、パトカーが少ない。

パトロールだけなら、ここまでは減らない。

不自然に思いながらも、中に入ると忙しそうにしていた。

まばらにいる人達に話を聞くと、また大きめの事件が起こったらしく、たくさんの刑事科の人間が使われているらしい。

そして、その中には美鈴は入っていない。

連絡が誰からも来ないということは、余程忙しいのだろう。

美鈴は、残念に思ったが、今日中に解決することを期待してそのまま署で、三人の内の誰かが戻るのを待つことにした。

美鈴は、もしかしたら三人を待っているのは、報告を聞くためでは無く、さっきの宮田の話を心の奥では信じているからなのかもしれないと感じた。

聞き終わった後に感じた、突拍子もない話だという感想と、嘘を言っているような様子には見えないという感じ。

その感想はまだ引きずられ、今も尚信じるか信じないかは半分半分といったところだ。

表では信じず、心の底で信じている。

おそらくそんな感じなのだろう。

美鈴は、一人納得して三人の誰かが戻るのをそのまま待ち続けていた。

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