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それぞれの末路  作者: 途山 晋
28/40

尾行

久々の更新です。

これだけ空くと、読者も何人かは減ったのでは無いでしょうか?

いつか戻って来てくれたら嬉しいです。

予定では、今回から、一万文字程度で掲載する予定でしたが、編集が大変だったのと、読者にも負担を掛けると思い、半分の五千文字程度で掲載です。

物語は、そろそろ後編?なんですかね。

自分がわからないのもおかしな話ですが。

それでは、そろそろ前書きも締めます。

作者の都合で、これからも迷惑を掛けたりしますが、どうかこれからもよろしくお願いします。


宮田が目覚めると時間は昼近くだった。

朝頃に寝たのだから、仕方がないとはいえ大分寝たなと思いながら、宮田は体を起こした。

あの刑事がいつ家に来るのかはわからないので、もう自宅に戻ろうと思った。

準備を始めると助手が話しかけて来た。

「起きましたか。遅かったですね」

「ああ、すまないな。少し疲れてるのかもしれない」

「大丈夫ですよ。でも実験体の二人はさっき届きました。今は寝てます」

「そうか。…悪いが君がやっといてくれないか?複製の仕方はわかるだろう?」

「ええ、わかりますが。どうかしたんですか?」

「急用が入ったんだ。それに少し休みたい」

「わかりました。任せてください」

「ああ、期待してる。観察はするから。じゃあ後は頼んだ」

そして、宮田は研究所を出て行った。

あの赤い車を使うことにした。

もう関係無いのだから白い車を使ってもいいのだが、理由なく赤い車を使うことにした。

そして、自宅へと向かっていった。


美鈴は上司に理解してもらえたことで、安心した。

これから、そのまま宮田の家に向かうことになる。

署を出ようとしたところで、後ろから誰かに呼ばれた。

振り返って姿を確認すると、若い男だった。

「片原さん…で合ってますか?」

「はい。誰ですか?」

「僕は森山っていいます。貴方の上司に頼まれて、捜査を手伝うことになりました」

美鈴は驚き、少し不審に思い「何故ですか?」と尋ねた。

「えーと。何に対しての何故ですか?」

「何故あなたが私の捜査を手伝う人物に選ばれたんですか?という意味です」

「そういう意味でしたか。はい。僕はまだ刑事成り立ての頃に岩尾さんと、片原さんに助けられたんです」

岩尾とは美鈴の上司の名字だった。

「それを、さっき岩尾さんが昔のことを思い出してる内に思い出して、僕に昔の恩を返しとけって言ったんです」

美鈴は話を聞きながら、おかしいなと思っていた。

昔の話と言っているが、目の前にいる男性はどう見ても、自分と同じくらいに見える。

「あなたの見た目と話が噛み合わないと思うんですが」と美鈴は言った。

「え?そうですか?僕、何歳に見えます?」

「私と同じ二十代くらいに」

「そうですか。実は四十三なんですよ」と彼は笑いながら、答えた。

美鈴は「…え?」とだけ言って固まった。

「いや、嘘です。冗談です。信じるとは思いませんでした」と彼は平気でそんなことを言った。

「そうですよね。じゃあ、本当は?」

「二十五ですよ。さっきの話も全部嘘です。

本当は、岩尾さんが適当に僕に頼んだんですよ。きっと」

「きっと。ってわからないんですか?」

「はい。理由はわかりませんが、急に頼まれたんです。まあ、後で聞いといてください」

そう言って、彼は車に寄っていく。

「早く行きましょう」と言って彼は運転席に乗った。

美鈴は、この人はあまり信用出来ないなと思いながら、「向かう場所知ってるんですか?」と尋ねた。

「あ、そうでしたね。じゃあ、頼みます」

彼はそう言って、助手席に移った。

美鈴は上司がなぜこんな人を送ったのか理解出来なかったが、二人は宮田の家へと向かっていった。

二人は会話も無しに、暫く宮田の家に向かっていた。

しかし、その沈黙を森山が破った。

「尾行されてますね」

「えっ?」

美鈴は、気づいてなかったので後ろを振り向こうとしたが、森山がそれを止めた。

「振り向けば、気づいたことがわかります。それにまだ本当に尾行してるのかはわかりません」

「わかりました。よく気づきましたね」

「いえいえ。普通ですよ。とりあえず、行き先変更ですね。どこか逃げ場の少ないところへ」

美鈴は、「皮肉ですか?」と少し怒り口調で尋ねた。

「え?いや、皮肉なんて言いましたか?」

彼は、普通に返して来た。

「普通ですよ。なんて、気づかない私は普通では無いという意味では?」

「そんな事ないですよ。なんで、僕の言葉を悪い方へ」と彼は笑いながら返した。

美鈴は、多分次は嘘では無いと考えた。

そして、「どこに行けばいいと思いますか?」と森山に尋ねた。

「そうですね。この近くで逃げ場の無さそうな所。そうだ、海でどうです?きっと、デートしてるように見えるはずです」

「冗談ですよね?」

「真面目です」

美鈴は考え込んだが、そこで思い当たった。

「ここ。内陸ですよね」

「あ、そういえば」

彼は落ち込んだ。美鈴はなんとなく勝ち誇った。

しかし、森山は直ぐに立ち直り、また考え始めた。

この間も車は宮田の家に近づいている。

「とりあえず、違う道に行きましょう。おそらく捜査をやめるかどうか監視するための誰かの使いでしょう」

「捜査辞めさせるの知ってたんですか?」

「岩尾さんに教えて貰いましたから」

そして、彼は唸っている。

「じゃあ、コンビニとかでいいのでは?」

「コンビニですか…。まあ、いいです。本当ならデートに見せたかったんですがね」

「…冗談ですよね?」

「真面目です」

彼は即答した。

「捜査してるように見せない為に他の事をしてる様に見せる方がいいです。それで、デートとかなら一番誤魔化しやすい。それに僕を弱点に見せる事も出来ます」

そこまで考えてたのか。と美鈴は感心した。

「本当は、美鈴さんの事が好きだからなんですがね」

「冗談ですよね?」

「冗談です」

美鈴は、やっと否定が来たとなんとなく安堵した。

「やっぱり、コンビニは無いですね」

「え?」

いきなり自分の肯定されたと思っていた考えも否定され少しショックを受けた。

「相手が車から出ないと、話すことは出来ないですから。逮捕状も無いので、いきなり逮捕ともいきませんし」

「確かにそうですね。それは海でも同じだった気がしますが」

「海はデートのカモフラージュ用ですから」

彼はしれっとそう答えた。

「仕方ない。岩尾さんに協力してもらうか」と言って森山は懐からスマホを取り出す。

彼は、少しの間電話していた。

終わると美鈴に声を掛けた。

「岩尾さんと車を挟むことになりました」

「挟むんですか」美鈴は考えた。

「はい。挟む場所を決めないといけませんが」

「それなら、人のあまりいない方がいいですよね。思い当たるので向かいます」

「岩尾さんにも教えるので、場所を教えてください」

美鈴は伝わるだろうと思って、住所を教えた。

「なるほど、確かにそこなら大丈夫そうですね。ではそこに」

森山は電話を掛け始めた。

岩尾と少し話し電話をきると、彼は溜息をついた。

「すみません。迷惑かけて」美鈴は申し訳無さそうに言った。

「いえいえ。楽しいですよ。こういう場面はなかなか体験出来ませんから」森山はニコニコ笑っている。

美鈴は、前向きに捉えられて羨ましいと思った。

そして、挟み撃ちにする場所へ向かう間、また沈黙が続いた。

また少し時間が経ってから、森山が沈黙を破った。

「尾行してる人は素人みたいですね」

「なんでですか?」

「普通ここまで、うろうろしてる僕達を怪しまないのはおかしいですから」と森山は言った。

美鈴もそれを聞いて納得した。

そして、目的地まで残り一キロメートル辺りで、尾行してる車の後ろをついてくる車が現れた。

美鈴は車のサイドミラーでその車を確認した。黒い大型車だった。

美鈴は前に岩尾の車を見たことがあったが、それと変わらない。

森山も気づき、「そろそろですね」とだけ彼は言った。

二人の乗った車は目的の道に入った。

道は狭く、住宅もあまり無い道を通る。

そして、「車を止めてください」と森山が言った。

美鈴はそれに従い、車を止めた。

急ブレーキまではいかずにゆっくりとスピードを落とした。後ろの車をサイドミラーで確認するが、スピードを落として行く。

バックしようとしたようだが、後ろの車に気づき、バックをやめた。

朝に宮田の家を目指していたのに、腕時計を見ればもう昼頃になっている。

狭い道で車のドアを開けて、美鈴と森山は車を降りた。

運転席から岩尾も降りてきた。助手席のドアも開き出てきたのは、高木だった。

「高木さんもきたんですね」と言ったのは森山だった。

「おう、お前が噂の森山か。可愛い後輩が心配だからな」と高木は笑いながら返した。

「別に来なくても」美鈴はそう呟いた。

「ほら、とりあえずそこまでにしろ。尾行者を確認しないとな」


岩尾はそう言って、尾行者にドアを開けさせようとした。具体的には怒鳴った。

美鈴が車の中の姿を確認すると男だった。

尾行者の男は、素直にドアを開けて車から降りた。冷静そのものだった。

四人は素直なことと冷静なことに少し驚いた。

「何か?」尾行者はそれだけ言った。

「何かじゃない。お前、前の車を尾行してただろう」と岩尾が尋ねた。

周りから見れば、尋ねたでは収まらないような迫力を出していた。

「なんのことですか?私はただ行くところがあっただけですが」

やはり、冷静に男は答える。

「そんな言い訳が通じると思ってるのか?さっさと認めろ!」

岩尾は声を荒げた。

美鈴は、そういえば一時期、上司は鬼の岩尾と呼ばれていた時代があったという噂を思い出した。

確かに、この迫力なら普通は認めてしまうだろう。

「わかりました。認めます」

男は素直に認めた。しかし、迫力に負けてという感じには見えない。

そのせいで、岩尾は少し気が抜けた。

「そ、そうか。何故こんなことをした?」

「片原さんのことが好きなんです。それでついて行きました。もう辞めます。なので、今回は見逃してくれませんか?」

男は、どこで息継ぎしたのかと思うように一気に話した。

四人も驚いたが、最初に声を発したのは美鈴だった。

「つまり、私のストーカーをしてたんですか?」と尋ねた。

「そうなります」

それに対して、美鈴は怒りは無く、気味悪く思った。

「ほう、片原をストーカーするとはな」と、何故か感心したように岩尾が言った。

「俺の可愛い後輩に、なにしてるんだ」と、高木は怒り気味に言った。

森山は何かを言いたげそうにしたが、何も言わなかった。

「許してはいけません。逮捕しましょう。あと、岩尾さんの反応が気になりますが」と美鈴は冷ややかに言った。

気味悪い気持ちはもう消えていた。

「いや、片原のことをストーカーするやつなんているん…」

岩尾は、片原の冷たい視線で口を閉じた。

岩尾は咳払いをし、「とりあえず、逮捕状も無いし連行するか」と言った。

「わかりました。電話させて貰ってもよろしいでしょうか?必要なので」

男は連行するとまで言われたのに、表情を変えずにそう言った。

「まあ、いいだろう。会社や家族には話さないといけないからな」

岩尾がそう言うと、「ありがとうございます」と言って車に入りドアを閉めた。

ドアウインドウを開けて、「すみません。あまり、聞かれたく無いので車に戻ってくれませんか?逃げないので」

四人はそれを聞いて、少し迷ったが、結局車に一旦戻った。

男は暫く電話をしていたが、車から出て四人を呼んだ。

四人も車から降りた。

そして、岩尾が再び質問をした。

「ところで、お前の名前はなんだ?」

「やまざき こう。といいます」

「漢字は?」

やまざきと名乗る男は山崎 稿と教えた。

「わかった。じゃあ、署まで来てもらうぞ」

そう言って、山崎を岩尾が連れて行こうとした。

それを美鈴が止めた。

岩尾は、怪訝に思いながらも高木に車へ連れていかせ、止まった。

「どうした?」岩尾が尋ねた。

「はい。何故、彼に私への協力を頼んだんですか?」

「ああ、そのことか。簡単だ。優秀だから」

美鈴は、「優秀…なんですか?」とおずおずと尋ねた。

「ああ、最近入ったばかりだが、結構な成績を残している。署の殆どの人間が、名前ぐらいは知っているな」

美鈴は、最初に高木が、お前が噂の森山か。と言っていたのを思い出した。

噂とはそういうことだったのか、と美鈴は納得した。

「それだけか?」

「はい。それだけです」

「そうか。じゃあ、デート楽しんで来いよ」と茶化しながら、車に戻っていった。

「デートじゃありません!」

そう叫んだが、岩尾は楽しそうに手を振って車に乗り込んだ。

岩尾が運転席で、高木が助手席だった。山崎は、後ろに乗っている。

その車はバックして、署の方向に向かっていった。

取り残された二人も、車に戻りまた宮田の家へと向かっていった。

最終的に取り残されたのは、山崎が乗っていた車だけだった。


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